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楽天・三木谷オーナーの「外国人選手枠の撤廃」は「仰天構想」の「劇薬」か?

豊浦彰太郎Baseball Writer
三木谷オーナーの提案は、本来ごく全うなものだ(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

楽天の三木谷オーナーが「外国人選手枠の撤廃」を提唱したようだ。これ自体は、考え方としてはごく全うで逆に目新しさもないのだが、その報道のされ方が興味深かった。

スポニチによると、これは「仰天構想」であり、「コペルニクス的転回」だそうだ。「劇薬」とも評している。

楽天の三木谷浩史球団オーナー(51)が14日、都内で開かれた12球団オーナー会議で仰天構想をぶち上げた。今後のプロ野球の事業、競技振興について意見を求められ、1軍出場に制限が設けられている外国人枠の将来的な撤廃を提案した。プロは最高のプレーを提供すべきと持論を展開。海外のサッカーリーグや大相撲などを例に挙げ、世界レベルのプロリーグを目指すため、新たな改革を求めている。

経済界の革命児が、球界に巨大な一石を投じた。コミッショナーの選任も終わり、プロ野球の事業発展や競技人口拡大のための意見を求められたときだ。三木谷オーナーの仰天発言が飛び出した。

「外国人枠の拡大、最終的な撤廃を提案しました」

オーナー会議は日本野球機構(NPB)の最高の合議・議決機関である。今後の球界の方向性はここで決まる。日本球界の発展を話し合う中で、外国人枠を撤廃するというコペルニクス的転回に出席者は言葉を失った。

出典:楽天・三木谷オーナーが仰天構想 将来的な外国人枠撤廃を提唱 スポニチアネックス 11月15日

僕自身は、以前も触れたように、いまだにNPBがこれに固執しているのは非植民地的発想によるものであり、人種差別的であり、外国人力士に支えられている大相撲の盛況などを考慮すると「商機の逸失」ですらあると考えている。

しかし、ここに挙げたスポニチの論調はおそらく多くの日本のスポーツメディアやファンの意向から大きく乖離したものではないのだろう。基本的には単一民族構成で、国際化とは海外に出ていくことで受け入れることには後ろ向きな日本人の傾向を象徴しており、ある意味興味深い。

三木谷オーナーは自らの提案に対し「ほとんど反応はなかった」と苦笑していたようだが、枠撤廃に消極的なNPB関係者の多くは、突き詰めればその反対理由を明快に説明できないのではないか。

彼らは聞かれれば、外国人枠の撤廃が球団間の資金力の差による戦力格差の拡大に繋がるとか、日本人選手の活躍の場が狭まってしまうなどの理由を挙げるだろう。しかし、ホントの根っこの理由は、変化を嫌うNPBの保守性と外部に自らを解放することに対しての生物学的な不安感だろう。

特に後者は、ある意味では種の保存をという人間の本能にも関わることで、これは人種・国籍にかかわらず共通だと思う。しかし、それを抑制するのが理性と知性だ。NPBの外国人選手枠のようにルールとして存在させるのは、ちょっと先進国の国民的娯楽としてはいただけない。MLBでも、フィールド上のスターの多くがラテン系を代表とする外国人に占められていることに複雑な思いを抱くアメリカ人ファンには決して少なくない。しかし、それをメッセージとして発しないのがモラルだ。その意味では、このスポニチの記事の論調自体が残念だし、それがまかり通っている日本のスポーツジャーナリズムやNPBにも失望を禁じ得ない。

ぼくは、三木谷オーナー の提案に賛成だ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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