観測史上最強スーパーサイクロン「キャー」出現 アラビア海
名前に劣らず、恐ろしいサイクロンが発生しました。キャー(Kyarr)は中心気圧915hPaと、アラビア海における観測史上最強のサイクロンとなって、アラビア半島に向かって進んでいます。
サイクロンの現況
アラビア海はインドとアラビア半島に囲まれた海域で、ここではサイクロンは現れることはあっても、強い勢力にまで発達するのは稀です。それはこの海域は、砂漠からの乾いた風やモンスーンと呼ばれる季節風などの影響で、サイクロンの発達が邪魔されるためです。
しかし現在のアラビア海は、こうした阻害要因がないばかりか、例年よりも海水温が高くなっています。このため「キャー(Kyarr)」は異例な発達を遂げました。
タイトルの雲画像は、そのサイクロンをとらえたものです。明瞭な目と、左右対称の雲が特徴的です。半日で最大風速が20m/s増え、28日(月)には64m/sまで発達しています。サイクロンの階級では最も強い「スーパーサイクロン」のランクで、台風でいうと「猛烈な」勢力に相当します。
観測史上最強のサイクロン
キャーの中心気圧は一時915hPaまで下がりました。これはアラビア海のサイクロンの中では、観測史上最も低い気圧です。これまでの記録は、2007年に発生したサイクロン・ゴヌで、その気圧は920hPaでした。ゴヌはオマーンに上陸後、大洪水を引き起こし、オマーン史上最悪のサイクロンとして記録されています。
予想進路
幸いなことに、キャーはゴヌとは異なり、アラビア半島に上陸する可能性は低くなっています。現在はオマーンの方向に進んでいるものの、南西方向に進路を変える見込みです。さらに今後、勢力が弱まる予想です。
増える強力サイクロン
キャーに限らず、今年はアラビア海で記録的なサイクロンが発生しています。
3月には「イダイ」がモザンビークに上陸し、アフリカ南部に死者行方不明者3,000人を超す、南半球史上最悪の自然災害を引き起こしました。さらに翌月には同じくモザンビークに「ケネス」が、同国の観測史上最強の勢力で上陸しています。
専門家によると、アラビア海の海水温は近年上昇傾向にあって、今後ますます強いサイクロンが発生する可能性があるといいます。また、キャーのように急速に発達するサイクロンも増えており、予報がさらに難しくなっているそうです。
アラビア半島は、年間降水量が数十ミリという、非常に乾燥した地域が広がっています。ひとたび強大なサイクロンが上陸すれば、その被害は甚大なものとなりかねません。