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来季バルサのMSNをバックアップする選手は誰?有力候補はパラグアイ代表FW?

小宮良之スポーツライター・小説家
パラグアイ代表でコパ・アメリカに出場する20才FW、サナブリア。(写真:ロイター/アフロ)

「MSNのバックアップ」

FCバルセロナの強化部は難度の高い要求に苦労してきた。メッシ、スアレス、ネイマールの代役を見つけるのはそもそも簡単ではない。候補選手が出ては消えてきた。

「若く才気に長け、リーガでの経験があるゴールゲッター。バルサのプレースタイルを理解し、ベンチに座る試合が続いても文句を言わない。移籍金は2000万ユーロ以下」

どこか矛盾点を孕む条件に、強化部は1年以上も向き合ってきた。

そこでようやく浮上したのが、パラグアイ代表FWのトニー・サナブリア(スポルティング・ヒホン)である。強化責任者であるロベルト・フェルナンデスTDがすでに選手本人と接触したという。

「サナブリア作戦」

スポーツ紙「SPORT」は一面にそんな文句を躍らせ、バルサの来シーズンに向けた強化策をすっぱ抜いている。

サナブリアはもってこいの人材と言えるかもしれない。20才と若く将来性豊かで、今シーズンは1年目のスポルティングで11得点を記録。13才の時にバルサの下部組織に入団して4シーズンを過ごし、バルサBまで昇格している。そして移籍金も現時点で1300万ユーロと想定内だろう。

さらに、バルサのルイス・エンリケ監督はもともとスポルティングの下部組織出身で、移籍に対して前向き。バルサ時代の戦友でスポルティングでの盟友でもあるアベラルド監督とも積極的にコンタクトし、「性格は謙虚で、家族を大事にし、プレーに専念している」と手応えも手にしている。スポルティングにはアレン・ハリロビッチなどバルサの選手も貸し出しており、関係性も悪くない。

これまでルイス・エンリケ監督はセルタのノリートをクラブに要求してきた。スペイン代表としてEURO2016に参加するノリートはMSNのバックアッパーとして最適と言える。バルサ育ちで、リーガで揉まれ、代表の主力となり、セルタ時代にはルイス・エンリケの指導も受けた。左の“隠れ9番”のような選手で、かつてのダビド・ビジャのようなプレーが期待できた。

しかし、29才で2500万ユーロという年齢と金額がネックになっていた。おそらく、来シーズンだけを考えたら、ノリートは今もファーストオプションと言えるだろう。キャリアの絶頂期にあり、バルサの覇権に必要な気運を持ち込める。左サイドから割って入る迫力は単なるバックアッパー以上の攻撃のバリエーションをもたらすはずだ。個人的には2500万ユーロに相当する効果をもたらすと思うのだが。

「サナブリアのバルサ入りは時間の問題だろう」

そう漏らす現地記者もいる。しかし、夏のマーケットは蛇に喩えられ、交渉話は出ては消えて本当にいたのかどうかわからない。サナブリア本人も「今はコパ・アメリカが終わるまではプレーに集中する」と声明を出している。パス(移籍交渉権)を持つセリエAのASローマも活躍次第では、移籍交渉で条件を上げるかもしれない。契約は2017年6月までに売り時は逃さないと言われるが、移籍交渉は水ものである。

バルサはリヨンのアレクサンドル・ラカゼット、マルセイユのミヒー・バチュアイとも交渉を続けていると言われるが、現場は求めている様子はない。どちらも実力者だが、まずはリーガの水に慣れ、バルサのプレーにフィットするだけで1年はかかる。現場としては3年後の将来性よりも来季の即戦力であることを求めるのは当然だろう。

どんな蛇が出てくるのか?

移籍マーケットシーズンは始まったばかりだ。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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