Yahoo!ニュース

アルゼンチン人コーチが語る「ロシアワールドカップを振り返って」

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
決勝でボールを奪い合うモドリッチとカンテ(写真:ロイター/アフロ)

 アルゼンチン出身。兄は1979年ワールドユース東京大会でマラドーナと共に世界一となったピチ・エスクデロ。息子は現京都サンガの背番号10、エスクデロ競飛王。

 自身はアルゼンチン、スペインでプロとしてキャリアを積み、アルゼンチンユース代表、ビーチサッカーアルゼンチン代表に選出された。引退後は、柏レイソル青梅、レッズ・ユース、埼玉栄高校、エルサルバドルのプロチームでの指導者を経て、現在は、埼玉県に発足したクラブチームFC Futureで指揮を執るセルヒオ・エスクデロ。

 彼にロシアW杯を振り返ってもらった。

写真:本人提供
写真:本人提供

 今回のワールドカップは、スコアレスドローとなった試合が、6月26日のデンマークvsフランスの1試合のみでした。他のゲームでは必ずゴールが生まれました。各国が攻撃力を見せた、とてもいい大会だったと僕は思います。ロシアもホスト国として、ワールドカップを成功させましたね。とても楽しませてもらいました。

 決勝戦は、クロアチアの疲労が明暗を分けたと感じました。決勝トーナメントに入ってから、3試合連続で延長戦をモノにしたクロアチアは、素晴らしい闘志を見せてくれましたが、ファイナルにおいては集中が切れた部分がありました。1点目はオウンゴールで失点、2点目もフランスにPKを与えてしまった。本来のクロアチアなら、あり得ないミスだった気がします。

 とはいえ、モドリッチを筆頭に、選手は皆、頑張りましたね。胸が熱くなるシーンが何度もありました。素晴らしかったです。モドリッチはあの小さな体で走り抜き、準決勝では最後に足を攣ってベンチに下がりました。本当に、頭が下がる思いです。MVPも当然です。

 2度目の優勝を飾ったフランスですが、後半の頭にボランチのエンゴロ・カンテを下げましたね。イエローカードを貰ったからでしょうが、ディディエ・デシャン監督の大胆な采配でした。攻撃面を重視したのかな…。

 カンテは、アルゼンチン戦でメッシを抑え、決勝の舞台でもピッチを去るまでモドリッチを封じていました。勝ったから文句は出ませんが、もし負けていたら、「何故、キーマンであるカンテを下げたんだ!」と相当叩かれたでしょう。

 カンテは、まだ先がある選手ですし、今回の優勝に多大な貢献をしましたから、更に大きな選手になってほしいです。

 我がアルゼンチンは、サンパオリ監督の解任が決まりました。契約を途中で解約するということで、アルゼンチンサッカー協会からサンパオリにジャパニーズ円で2億ほど支払われるとのことです。アルゼンチンサッカー協会の会長が、フリオ・グロンドーナの死去(2014年7月30日)によってクラウディオ・タピアに代わり、ガタガタが続いたままロシア大会に出場したんです。タピアは「アルゼンチンのため」「サッカー界のために」ということを考える人ではない。同じ過ちを繰り返さないでほしいです。

 今、後任の代表監督には、シメオネやガレカの名が挙がっていますが、一刻も早い協会の改革が必要です。

 現時点の明るい話題を述べるとしたら、期待の若手、パウロ・ディバラが在籍するユベントスにクリスティアーノ・ロナウドが入ることかな。24歳で伸び盛りのディバラは、ロナウドから学ぶことが沢山あるでしょう。大きく成長して、アルゼンチンを引っ張る存在になってほしいです。

 日本代表の植田直通もベルギーのセルクル・ブルージュに移籍が決まりましたね。若く、将来性のある日本人選手は、どんどん海外に行って勝負して、自分を高めてほしいです。それが更なる日本代表の強化に繋がりますから。

 僕も日本でアルゼンチンスタイルのサッカーを伝えられるように、頑張っていきますよ!

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事