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WBCスーパーライト級暫定王座決定戦で勝利したサウスポー

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 17戦全勝オールノックアウトのゲイリー・アントゥアン・ラッセルと、22戦22勝10KOのアルベルト・プエジョとの間で争われた、WBCスーパーライト級暫定王座決定戦は、共に譲らない打ち合いを見せた。

 試合の前日に28歳になったラッセルも、29歳のドミニカ人、プエジョも、全勝街道を進むサウスポー。2022年8月20日、WBAスーパーライト級タイトルを得たプエジョだが、禁止薬物の使用が明るみに出て、半年間の出場停止処分が下った。ドミニカ人である彼は、ここで負けてしまうと、世界戦線から大きく後退することを十二分に理解していた筈だ。今回の決定戦も、米国籍のラッセルを勝たせたいというムードを感じざるを得なかった。

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 しかし、ラッセルのクイックさとアグレッシブさを、プエジョのカウンターが上回った感がある。特に右フックが光った。ドミニカンは9ラウンドにホールディングで減点され、翌10ラウンドではローブローを受けていた。

 最終回、ラッセルもローブローを見舞われ一時的な休息を必要とした。結局、プエジョは、115-112、114-113、109-118とスプリットディシジョンで勝者となった。

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 歓喜しながらプエジョは言った。

 「私は跪いてまず神に感謝し、それから『やり遂げた!』と言いました。体重の壁も、家族と離れる時間も、すべてに価値があったのです。チャンピオンとなるのは素晴らしい気分ですね。なぜなら、これは私の人生の新たな章の始まりだから。

 キャリア最高のファイトです。苦労がようやく報われました。誰とでも戦いますよ。どんな挑戦者でも、迎え撃つ準備はできていますから」

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 初黒星を喫したラッセルも振り返った。

 「プエジョがどんなパフォーマンスをしたかではなく、俺が何をしなかったかが問題だ。もっとセコンドの声に耳を傾け、それを実行すべきだった。ゲームプラン通りに戦えば、当然のことながら勝利しただろう。が、今夜は及ばなかった」

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 勝者のセコンドには、日本でもお馴染みのイスマエル・サラスがついていた。ドミニカン王者は、キューバ人トレーナーに知恵を授かったのだ。

 とはいえ、9ポイント差で負けと採点したジャッジ、ホールディングでの減点、ローブローでラッセルに回復時間が与えられた件など、完全なるアウェイだったことも事実である。プエジョは今後、異国の地でどんな戦いを見せるのか。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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