オスプレイは劣化ウラン錘を使用していない。量産開始の25年前に製造会社はタングステン錘に切り替え済み
2023年11月29日に鹿児島県の屋久島の直ぐ沖合でアメリカ空軍のCV-22オスプレイが墜落しました。2016年12月13日に沖縄県の名護市安部でアメリカ海兵隊のMV-22オスプレイが起こした空中給油訓練中の接触からの不時着事故では乗員5名全員が生還しましたが、今回の屋久島でのCV-22オスプレイ墜落事故は乗員8名(事故当日1名の遺体を発見)は絶望的と見られています。
今回の事故原因は調査中でまだ不明ですが、オスプレイに使われている放射性物質について一部で危険であるかのような誤解が広まっています。しかしオスプレイについては基本的に機体回収の際に「放射線リスク」はありません。
人体や環境への影響について問題のないレベル
木原稔防衛相が説明している通り、オスプレイに使われている放射性物質の希ガスのクリプトンは特性的にも使用量的にも人体や環境への影響は無視できるレベルです。では2016年名護市安部のオスプレイ事故で機体回収の際に「防護服」を着ていたのは何故かというと、そもそも放射性物質への対策ではありませんでした。
防護服は機体を切断する際の粉塵対策
2016年名護市安部のオスプレイ事故では機体を回収する際にエンジンカッターで切断したのですが、この際にカーボンやグラスなどの繊維を樹脂で固めた複合材(繊維強化プラスチック)を切断すると粉塵が生じます。この粉塵に繊維が混じっており、微細な繊維が皮膚に付着して刺さると赤く腫れます。このため皮膚の露出を防ぐために防護服を着込んでいたという、粉塵対策だったのです。このことは当時の映像を見れば分かります。
2016年12月13日に起きた事故の機体回収の様子を写真で見れば粉塵対策であることが裏付けられます。機体の切断時はフードを被って完全防護状態でしたが、切断した機体を運ぶ際はフードを外しているからです。このことから放射性物質への対策ではないことは明らかです。
- 防護服を着てない兵士が事故機を調査(2016年12月14日)※産経新聞
- 切断する時だけ防護服とフードを着用(2016年12月16日)
- 部品を持ち帰る際にはフードを外した(2016年12月16日)
もしも放射線リスクを警戒しているならば常に防護服とフードを着用している筈ですが、実際にはそうではありませんでした。複合材の切断時に粉塵対策で防護服とフードを着用するのは当然のことなので、不審な点は見当たりません。
オスプレイは劣化ウラン錘を使用していない
過去にオスプレイに劣化ウランが錘(カウンターウェイト用)として使われているという報道がありましたが、これは何らかの誤解であり事実ではないと見られます。
米国防研究所(IDA)でオスプレイの主任分析官を務めたレックス・リボロ氏はこのように証言していますが、しかしアメリカ海兵隊はオスプレイについて劣化ウラン錘の使用を認めていません。
そもそもオスプレイの製造元のボーイング社は1980年前後から劣化ウラン錘の使用を止めてタングステン錘に置き換える方針を取っています。ボーイング社のヘリコプターへの劣化ウラン錘の搭載は1979年が最後です。2005年から量産開始されたベル・ボーイング製V-22オスプレイに劣化ウランが使われていることは製造時期的にとうてい考えられません。25年以上も年代がズレているのです。参考:NNSA