大問題の日米貿易協定交渉署名 約7800億円農産物追加輸入で日本農業大打撃 米国側の情報から中身検証
安倍首相は25日昼(日本時間26日未明)にトランプ大統領と会談し、日米貿易協定交渉の「最終合意」を確認した文書に署名した。会談後に共同声明を発表する見通しということだが、日本側(外務省)のHPではまだ共同声明が出ていない。一方、米国側のHPにはいち早く交渉のファクトシートが公開され(※)、政府が「最終合意」まで情報開示を拒んできた中身の一部が公開されている。記事ではその情報から野党や農業関係者が問題視してきた約72億ドル(約7800億円)の米国農産物への市場開放についてみてみる。交渉に関するニュースでは、コメとその調製品が除外され自動車の追加関税が回避されたことから交渉の「引き分け」が盛んに演出されたが、この市場開放の中身をみればそれら演出が歪曲といってもよい状況ともいえる。
隠されてきた交渉の中身
はじめに日米貿易協定は、農業や食卓に甚大な影響を与えるにもかかわらず交渉に関する情報が開示されずに署名されたことは強調しておきたい。これまでの大型貿易交渉では、国会で審議後に署名されてきた。今回の署名前の交渉では最低限の情報開示もなかった。これに対し、野党側は繰り返し、政府側に対し合同ヒアリングを開き、情報開示と国会審議を求めてきたが政府側は「最終合意」前ということで拒否してきた。そのヒアリングの中で問題になってきたのが、日本の農業生産額の約8%にあたる約70億ドルの米国農産物の市場開放であった。ヒアリングでは国内農産物ですら厳しい状況にあるのに、なぜ新たに米国農産物に市場開放をするのか、という大きな批判がなされていた。
米国農産物に対する市場開放の中身
交渉結果では、約70億ドルとされていた米国農産物への市場開放はさらに72億ドル(約7800億円)まで増えている。次にその中身を見ていこう。米国のUSTR(通商代表部)は、9月25日の日付で二つのファクトシートを公開し、市場開放の中身について触れ、米国農家への利益を宣伝している。そこでは、対象農産物を関税削減、関税撤廃、その他について分類して紹介している。ここではその分類毎に整理してみる。
日米貿易協定交渉・最終合意における米国への農産物市場開放の中身
約3100億円の関税削減:生鮮・冷凍牛肉、生鮮・冷凍豚肉の関税を削減する。
約1390億円の関税撤廃:アーモンド、ブルーベリー、クランベリー、ウオールナッツ、スイートコーン、グレインソルガム(穀物用モロコシ)、栄養補助食品(food supplements)」(いわゆるサプリメント)、ブロッコリー、プルーン等の削減を即時撤廃。
約3210億円の他の産品の関税の段階的関税撤廃:ワイン、チーズとホエー、エタノール、冷凍鶏肉、豚加工品、生鮮チェリー、冷凍ポテト、オレンジ、卵製品、トマトペースト
安倍首相は、共同声明への署名後、「両国にとってウィンウィンの合意になった」と述べ、トランプ大統領は「公正で互恵的な協定。農家にとって大きな勝利だ」と強調したとされるが、交渉の中身をみると日本が交渉に敗北し、米国に大幅な譲歩した側面が強い。心配なのは日本農業への影響だ。今後、日米貿易協定交渉は法的な審査などが間に合わず正式な署名は10月上旬にも行う。日本政府は10月召集の臨時国会に協定承認案を提出し、早期承認を目指す予定だ。政府側は、早ければ国内農業への影響対策を行い、年内にも発効するというが、影響が甚大ならば関連産業への試算も行い、交渉の撤回含めて検討すべきといえるだろう。
(※)FACT SHEET:Agriculture-Related Provisions of the U.S.-Japan Trade Agreement
USTR、9月25日発表
https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/fact-sheets/2019/september/fact-sheet-agriculture%E2%80%90related