映画市場が激変、映画参加者人口が900万人減少
映画参加者人口は減少が続き、2020年1月と比べて33%減
例年書き入れ時の夏の映画興行が終わりました。7月、8月の興行収入は、昨年を上回るものの、コロナ禍前の例年と比較すると6割程度、1月からの累積興行収入もコロナ前の6割程度のペースとみられます。
こうしたなか、映画市場の基礎となる1年間に映画を1本以上観る「映画参加者人口」は、弊社GEM Partnersが実施した調査を基にした下記の推移データのとおり、この夏も増加には転じず、コロナ禍での減少に歯止めがかかっていない状態です。男女15才から69才における映画参加者人口は、2020年1月に約2700万人だったのが、2021年8月に33%減の約1800万人となり、約900万人減少しています。
性年代別ではシニアの減少率が大きい。ただし、夏に下げ止まりか
前述のとおり、全体での減少率は33%でした。この割合は性年代別ではどのような傾向があるのでしょうか。
下記のとおり、セグメント別に減少率を比較すると、年代が上がると減少率が大きくなることが分かります。男女ともに、15~19歳、20代、30代では20~30%の減少率です。一方、60代のシニア層では、男性は55%減、女性は57%減と半分以下となっています。
推移をみると、男女10代、20代は昨年秋時点で減少ペースが落ち着き、横ばいとなっています。男女30代は、少し遅れて今年の年初あたりから減少ペースが鈍り、横ばい傾向となっていました。40代以降の多くのセグメントでは、この夏にようやく減少ペースが鈍っています。落ち幅が大きかった60代も「底をついた」のか、ワクチン浸透によって減少が止まったものとみられます。ただし、女性40代はまだ減少傾向にあります。
減少数の内訳をみると、40代の減少が大きい
上記は、性年代別の減少率ですが、全体で減少した人数の内訳はまた違った見え方になります。
下記は、2020年1月から2021年8月までに減少した約900万人の性年代別の内訳です。年代別で減少人数が最も大きかった世代は60代ではなく、40代です。これは、そもそも映画参加者人口全体に占める40代の割合が大きく、60代より減少率が低くても減少の人数としては大きくなるためです。減少人数は40代が最も多いですが、40代~60代の各年代の減少人数は近い値となっていて、20代よりも大きな値となっています。
今の来場者を維持し、そしてシニアだけでなく全体の「帰還」が必要
このように、映画参加者人口全体の減少が続いているなか、下げ止まったセグメントでも増加には転じていません。今の映画参加者人口の「維持(再来場)」とともに、「離脱」した人を呼び戻す必要がありますが、そのためには、訴求力の高い作品、映画鑑賞行動自体のPRとともに、コロナ禍において変化した映画参加者の嗜好を踏まえた対応が必要です。そして、その対象としては、落ち込みが厳しいシニアだけでなく、ある程度下げ止まっているボリューム層である若い年代もまだまだ重要といえます。