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北東側にしか活発な雨雲がない台風19号が発生も、日本列島は本格的な秋へ

饒村曜気象予報士
秋雨前線と熱帯低気圧(のちの台風19号)の衛星画像(10月9日9時)

台風19号の発生

 令和6年(2024年)10月9日15時に南鳥島近海で台風19号が発生しました。

 日本周辺の海面水温は、北日本の太平洋側を中心に平年より高い状態が続いており、南鳥島近海でも平年より0.5度から1度高くなっています。

 このため、10月になりましたが、台風が発達する目安の海面水温27度より高い、28度くらいあり、北上していた熱帯低気圧が台風19号になりました(図1)。

図1 海面水温の平年との偏差
図1 海面水温の平年との偏差

 10月7日に小笠原諸島近海で発生した熱帯低気圧は、24時間以内に台風に発達するとみられていましたが、2日以上遅れての台風発生でした(タイトル画像)。

 北東側にしか活発な雨雲がない台風19号は、このまま北上を続け、12日にはカムチャツカの南海上で温帯低気圧に変わる見込みです(図2)。

図2 台風19号の進路予報と海面水温(10月10日0時)
図2 台風19号の進路予報と海面水温(10月10日0時)

 今月初めに、台湾付近をゆっくり移動し、台湾の地形の影響を受けていた台風18号とは、まったく違った動きです。

 令和6年(2024年)は、台風の発生が遅く、第1号がフィリピン近海で発生したのは、5月26日でした。

 台風の統計がある昭和26年(1951年)以降、台風1号が一番遅く発生したのは、平成10年(1998年)の7月9日で、令和6年(2024年)は、史上7番目の遅さということになります。

 6月に台風の発生はなく、7月も台風発生数が2個と平年に比べて少なかったのですが、8月は平年並みに6個、9月は平年より多い8個も発生しており、ほぼ平年並みの発生数となっています(表)。

表 令和6年(2024年)9月までと平年の台風の発生数・接近数・上陸数(接近数は一つの台風が月をまたぐことがあるので月の値の合計は年間の値とは一致しない)
表 令和6年(2024年)9月までと平年の台風の発生数・接近数・上陸数(接近数は一つの台風が月をまたぐことがあるので月の値の合計は年間の値とは一致しない)

夏は高緯度で台風が発生

 台風は、温かくて湿った空気を集め、そこに含まれている水蒸気が水滴に変わるときに出る熱(潜熱)を取り出して、これをエネルギー源として発達したり、勢力を維持したりしています。このため、温かくて湿った空気が多い熱帯の海上でしか台風は発生しません。

 熱帯低気圧と呼ばれる所以でもあります。

 ただ、赤道付近では台風は発生しません。赤道に近くなればなるほど地球の自転の影響を受けにくくなることから渦を巻きにくくなり、効率的に水蒸気を集めて熱を取り出しにくくなるからです。

 これに対し、緯度が高いと渦を巻きやすくなりますので、夏になり、海面水温が高くなった亜熱帯の海上でも台風が発生するようになります(図3)

図3 台風の月別・緯度別発生数(1951~1977年)
図3 台風の月別・緯度別発生数(1951~1977年)

 今年の台風19号は、北緯27.6度で発生しましたが、10月に25度近くで発生する台風は、数が少ないものの、めずらしくはありません。

北海道の4地点で冬日

 記録的な暑さが続いていた令和6年(2024年)ですが、9月22日に北海道・沼川で最低気温が0度未満の冬日を観測したのに続き、10月9日は、朱鞠内・喜茂別・沼川・歌登の北海道4地点で冬日を観測しました。

 また、10月9日に、全国で一番気温が高かったのは、沖縄県・南大東の30.8度で、最高気温が35度以上の猛暑日はなく、30度以上の真夏日は南大東など6地点(気温を観測している全国914地点の約1パーセント)でした。

 最高気温が25度以上の夏日は224地点(約25パーセント)でした。

 記録的な猛暑が、やっと終わった感じがします。

 日本の南岸に停滞し、雨やくもりの天気をもたらしていた秋雨前線は、今後、弱まって消滅し、大陸からの高気圧に覆われてくる見込みです。

 そして、今後、スポーツの日(10月14日)までくらいは、全国的に晴れて過ごしやすい気温の日が続くところが多くなりそうです(図4)。

図4 各地の週間天気予報(数字は最高気温)
図4 各地の週間天気予報(数字は最高気温)

 夏の名残の台風19号が日本の東海上を北上したあと、日本列島は行楽の秋本番になりそうです。

タイトル画像、図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:饒村曜(昭和61年(1986年))、台風物語、日本気象協会。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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