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信頼度低下の理由は「特定勢力に偏った報道」がトップ…新聞への信頼感の上下とその理由(2023年度版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
新聞への信頼感は下落しているとの話もあるが(写真:イメージマート)

新聞通信調査会が2023年10月に発表した「メディアに関する世論調査」(※)によれば、NHKテレビや新聞、民放テレビなど主要メディアの信頼度はおおよそ下落傾向にある。次に示すのは問い合わせ時に過去1年間において、各メディアに対して信頼感は変化したのか否かを尋ね、「高くなった」から「低くなった」の値を引いたDI値を算出した結果。プラスならば上昇と考えた人が多く、マイナスならば下落と考えた人が多い。それぞれの方向の絶対値が大きいほど、その思いが強いことになる。

↑ 各メディアへの信頼感DI(高くなった-低くなった)
↑ 各メディアへの信頼感DI(高くなった-低くなった)

信頼感の上下度合いは回答者それぞれで一概には言えないが、おおよそ「高くなった」が「低くなった」より多ければ信頼度は増加し(DI値はプラス)、逆なら減少(DI値はマイナス)と見ることができる。その観点で結果をチェックすると、全メディアで信頼度は減少していることになる。何しろDI値のグラフでゼロを超える値が存在しないのだから。

新聞のDI値におけるマイナス幅は小幅だがマイナス状態は継続中。グラフには反映されていないものの2014年度では大きなマイナス幅が示されたが(マイナス6.3%)、これは言うまでもなく朝日新聞における誤報・捏造・虚報が取り沙汰されたことである。直接事案による不信感は時の流れとともに薄れつつあるが、一向に改善しない体質に、信頼感のDI値をプラスに押し上げるまでの環境は期待できそうにもない。もっともこれは他のメディアも同様なのだが。

直近では新聞の信頼感が増した人は4.3%、下落した人は8.9%との結果が出ている。それぞれの回答者に、なぜそのような選択をした・思ったのかを聞いた結果が次のグラフ。

↑ 新聞の信頼感が高くなった理由(該当回答者、択一)
↑ 新聞の信頼感が高くなった理由(該当回答者、択一)

↑ 新聞の信頼感が低くなった理由(該当回答者、択一)
↑ 新聞の信頼感が低くなった理由(該当回答者、択一)

新聞の信頼度が高くなった、つまり新聞をより信頼するようになった人の理由だが、情報の正確さや根拠に基づく情報を報道したこと、公正・中立さへの評価が主なものとなっている。ドラマや映画で新聞社に勤める主人公が語りそうな「政府・財界に迎合しない」との意見は直近年度では2.4%。

前年度との比較では、具体的項目では「根拠に基づく情報を報道」「公正・中立な立場で報道」「報道側のモラルが高い」「政府・財界に迎合しない」が減り、それ以外は増えている。

他方信頼が損なわれたと感じる人のトップの意見は「特定勢力に偏った報道」で49.4%。増加を続け2019年度ではついに過半数となったが、2020年度では大きく減り5割を割り込み、その状態が今年度でも続いている。それでも他の項目と比べると断トツで多いことに違いはない。なおこの項目について設問の説明ではどの方面、対象の「特定勢力」とは書かれていない。色々な解釈ができそうだが、いわゆるダブルスタンダード的な報道が日常茶飯事化しているとの指摘も多々ある現状では、無視できない動きには違いない。ただし別選択肢に「政府・財界の主張通りに報道するだけ」がある以上、それと同じ方面に優遇する意味での偏った報道との解釈は難しそうだ。

「誤報があった」は直近では0.8%で順位としては5番目に過ぎない。グラフの領域からは外れているが2015年度の大きな値(29.9%)は言うまでもなく朝日新聞の複数事案が大きく影響したもの。2016年度以降は優先順位は下げられている、あるいはほとぼりがさめつつあると認識できる。とはいえ、話題性はともかく問題の重要性の観点では肩を並べるほどの誤報はそれこそ日々のごとく量産され、その状況に対する新聞社側の姿勢も改善を期待できるようなものではないのも事実ではある。または読み手側が慣れてしまい、わざわざ信頼感の下落の理由に挙げるまでもなくなってしまったのかもしれない。

択一問題であるため重要度としては気にならない程度と認識されているのか、回答値は5.1%とさほど高くはないが、「憶測による情報も流している」との意見があるのも注意すべき動き。ある意味、誤報よりもたちの悪いものに他ならないからだ。

新聞は直近年度では主要メディアの中でNHKテレビの次に高い信頼感を得ているが、それはこれまでの先人諸氏の努力によって構築された「信頼」と名付けられた資産を食いつぶして、ようやく維持していると表現できる。その現状を認識し、行動を律することができなければ、「信頼感は下落した」との回答値は、来年度以降も高い値を維持したままとなる。果たして新聞にたずさわる人のどれだけが、その事実を理解しているだろうか。

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※メディアに関する世論調査

直近分となる第16回は2023年7月21日から8月20日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法によって行われたもので、有効回答数は2871人。有効回答者の属性は男性1377人・女性1494人、18~19歳53人・20代225人・30代324人・40代454人・50代515人・60代506人・70代以上794人。過去の調査もほぼ同じ条件で行われている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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