サラー、ムバッペ、イブラ、レヴァンドフスキ。「試合を決める」選手の重要性とゴールゲッターの香り。
近年、欧州のフットボールシーンにおいては、分業化が進んできた。
バルセロナとスペインが一時代を築いた後、少しずつ、世界はプレッシングを強化するスタイルに移行していった。2018-19シーズンのリヴァプール、2019-20シーズンのバイエルン・ミュンヘンと、チャンピオンズリーグを制したのは前線からの連動したプレスを特徴とするチームだった。
だが、変わらないものがある。ゴールだ。ポゼッションのスタイルでも、プレッシング・スタイルでも、得点を奪わなければ勝てない。
■攻撃フットボールとスタイルの変化
「我々は後れを取っている。あのイタリアでさえ、コンセプトが変わってきている。セリエAの試合を見れば、多くの決定機とゴールが生まれているのが分かるだろう。ラ・リーガはそれとは逆行している」とはセルタのスポーツディレクターを務めるフェリペ・ミニャンブレスの言葉だ。
昨季、リーガの得点王を争ったのはリオネル・メッシとカリム・ベンゼマだった。だが今季はメッシ(3得点)、ベンゼマ(4得点)といずれも得点数が少ない。いま、リーガで得点ランクの首位に立っているのはミケル・オジャルサバル(レアル・ソシエダ/6得点)だ。
ミニャンブレスの指摘は正しい。現在、最もゴールが生まれているのはセリエAだ。2020年11月9日時点でセリエA(1試合平均3.4得点/1試合平均シュート数25.4本)、ブンデスリーガ(3.2得点/25.2本)、プレミアリーグ(3.1得点/24本)、リーグ・アン(2.8得点/23.2本)リーガ(2.4得点/21.1本)という数字になっている。
「イタリアでゴールが増えた理由は、いくつかある。まず、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の導入で、PKが増えた。そして、イタリアのフットボールは、スペインやイングランドの影響を受けてオープンな展開が多くなってきている。それは、選手のメンタリティーが変わったからだろう」と語るのはミランとイタリア代表で活躍したディミトリオ・アルベルティーニである。
「近年、多くの外国人選手がイタリアに移籍してきた。彼らは攻撃的なフットボールを好んだ。そしてまた、イタリア人選手のメンタリティーも変化した。私が現役だった頃とは代表のプレースタイルも変わってきている。(マルコ・)ヴェッラッティや(ニコロ・)バレッラのような小柄な選手が中盤にいて、試合をコントロールしながらトランジションでチャンスを狙っている」
■ストライカーの価値
リーガがゴールを失い始めたのは、3シーズン前からだろう。
きっかけは、ネイマールのパリ・サンジェルマン移籍だ。ネイマールは2017年夏に契約解除金2億2200万ユーロ(約264億円)でバルセロナを退団してパリSGに加入した。その翌年には、クリスティアーノ・ロナウドがスペインを去る。移籍金1億ユーロ(約120億円)でユヴェントス移籍が決定した。
この夏には、ガレス・ベイル(前所属マドリー/現トッテナム)、ハメス・ロドリゲス(マドリー/エヴァートン)、アルバロ・モラタ(アトレティコ/ユヴェントス)、ロドリゴ・モレノ(バレンシア/リーズ)、フェラン・トーレス(バレンシア/マンチェスター・シティ)が移籍を決めている。
ベイルとハメスは最後までジネディーヌ・ジダン監督の構想に入らなかった。モラタはディエゴ・シメオネ監督の【4-4-2】と守備重視のフットボールに適応しきれなかった。ロドリゴとフェランは選手売却の必要性に駆られていたバレンシアで、換金の材料として扱われるようにプレミアリーグのクラブに放出された。
昨季、ヨーロッパ・ゴールデンシューを争ったのはチーロ・インモービレ(ラツィオ/36得点)、ロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン/34得点)、クリスティアーノ・ロナウド(ユヴェントス/31得点)、ティモ・ヴェルナー(当時ライプツィヒ/28得点)だった。
今季、その候補者はレヴァンドフスキ(バイエルン/11得点)、ジェイミー・ヴァーディ(レスター/8得点)、モハメド・サラー(リヴァプール/8得点)、ズラタン・イブラヒモビッチ(ミラン/8得点)、キリアン・ムバッペ(パリSG/7得点)、C・ロナウド(ユヴェントス/6得点)だろう。
ゴールゲッターの重要性は増している。彼らを生かす戦術を採れるかどうかが、2020-21シーズンの鍵を握るかもしれない。