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なんでも化するアマゾン、英国で「出前」を開始

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
アマゾンが英国でレストラン料理の「出前」開始(写真:アフロ)

米アマゾン・ドットコムはこのほど、米国で提供しているレストラン料理のデリバリーサービスを英国ロンドンでも開始したと発表した

アマゾンのドライバーが1時間以内で配達

このサービスは「Amazon Restaurants」と言い、9月7日にロンドンの21の郵便番号がカバーするエリアで始めた。すでに150店ほどの飲食店が参加しており、その中には日本料理店もいくつかある。

急速に対象飲食店を拡大する「Amazon Restaurants」
急速に対象飲食店を拡大する「Amazon Restaurants」

Amazon Restaurantsは、有料プログラム「Prime(プライム)」の会員向けに提供している、最短1時間で商品を配達する「Prime Now」の追加サービスという位置付けだ。

アマゾンが無料で配布しているスマートフォン用のPrime Nowアプリに郵便番号を入力すると、その地域がサービス対象になっている場合、アプリのトップページにAmazon Restaurantsが表示される。

その画面で店や料理を選んで注文すると、アマゾンの配送ドライバーが店に行って料理を受け取り、顧客の家まで配達する。注文してから料理が届くまでの時間は1時間以内。1回の注文金額は15ポンド(約2000円)からとなっている。

配達料は無料

Prime Nowの1時間以内配達は、1回当たり6.99ポンド(約950円)の配達料がかかるが、このAmazon Restaurantsでは配達料はかからない。だからといって料理にはサービス料を加えた特別価格などは設定してないという。

「もし、アマゾンで注文した料理の価格が、レストランのオンラインメニューに表示されている通常価格より高いと気付いた場合は、注文から24時間以内であれば返金する」とアマゾンは説明している。

同社がAmazon Restaurantsを始めたのは昨年9月。

当初はアマゾンの本社がある米ワシントン州シアトルだけで提供していたが、今年2月までに、ロサンゼルス、シカゴ、オースティン(テキサス州)、ボルティモア(メリーランド州)、ポートランド(オレゴン州)、サンディエゴ(カリフォルニア州)に拡大。今ではサンフランシスコ、マンハッタン、ダラス、アトランタ、マイアミでも提供している。

Primeの会員拡大が狙い

アマゾンのこうしたサービス事業戦略は、前述の有料プログラム「Prime」の会員拡大が目的と見られている。

例えば先頃同社は、同じく米国のPrime会員に提供している、ボタンを1回押すだけでアマゾンへの商品注文が完了する「Dash Button」を英国でも提供開始したと発表した。

なお英国におけるPrimeの年会費は79ポンド(約1万700円)で、米国の年会費99ドル(約1万円)とほぼ同じ。

その特典も米国とほぼ同じで、即日・翌日配送サービス、前述の最短1時間以内の配達サービス「Prime Now」、映画やテレビ番組、音楽を追加料金なしで楽しめる「Prime Video」「Prime Music」、写真を無制限にアマゾンのクラウドサービスに保存できる「Prime Photos」などがある。

またアマゾンの電子書籍端末「Kindle」シリーズや「Fire」シリーズのタブレットとスマートフォンの所有者には、電子書籍を1カ月に1冊無料で借りられる「Kindle Owners' Lending Library」も用意している。

このほか同社サイトや傘下サイトの会員先行セール、米国ではPrimeの上位版サービスとなる生鮮食料品の即日配達サービス「AmazonFresh」も提供している。

JBpress:2016年9月9日号に掲載/原題「アマゾン、レストラン料理の配達事業を英国に拡大 ロンドンで150店の飲食店が参加しサービス開始」)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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