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エディー・ジョーンズヘッドコーチが振り返るジャパン今季国内初戦【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター

4年に1度のワールドカップ(W杯・イングランド)を9月に控えるラグビー日本代表は、5月2日、東京・秩父宮ラグビー場でアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)の香港代表戦に挑んだ。

今季の国内初戦。チームは大きなパス展開やスペースへのキックなど、エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)曰く「バリエーション」を意識した試合運びを展開した。9月18日にある南アフリカ代表とのW杯初戦を想定してのことだ。

以下、公式会見でのジョーンズHCの一問一答の一部。

「雑だったところが、より磨かれたと思います(4月18日、仁川での韓国代表とのARC初戦。56-30と勝利も反省を残していた)。個人のエラーは目立ちましたが、選手たちの意図には関心しています。今日は精神的に試されていた。イングランドから宮崎の合宿地に戻ってきて(19~23日にW杯会場の現地視察)、今週、いままでで一番ハードなトレーニングを行っていました。きょう成し遂げたかったこと全てを成し遂げることはできませんでしたが、いいステップは積み重ねています。(以下、日本語で)アリガト」

――南アフリカ代表を想定したゲーム。目的の達成度合い。

「求めるところからはまだまだ遠い。ただ、試合でさまざまなことにチャレンジしています。前進したことは間違いない。時差ボケで、木曜日まで満足に寝られない選手もいたみたいです。フィッシュ&チップスの夢を見ていたと思います。イングランドにはおいしいフィッシュ&チップスがあります。(日本語で、それ)ダケ(場内、笑)」

――「雑なところを改善」とは。

「ボールを持っていないところの動きに重点を置いて、ハードワークを重ねてきました。相手にプレッシャーをかけることも意識しました。(キックを追う)ハードなチェイスをかけ、相手にタッチラインの外へ(球を)蹴らせることもできた。バリエーションのついたゲームを求めています。そこへの選手の対応力には感心します。ただ、テンポを上げた時にミス(落球)が出たのは残念。イングランドで手の病気をうつされたのでしょうか」

――守備は。

「ターンオーバーからのリアクションはよかった」

――(当方質問)試合前日、こう言っていました。「この試合、やりたいことがあります。アタックのバリエーションをつけること。セットプレーを避けること」。達成度合いは。

「セットプレーを避ける戦いは、今回のレフリング(の質)もあって難しかった。スクラムも綺麗な状態ではなく。相手に組む意志がなければ難しい。そんななかでもコントロールしようという(ジャパンの)意志があったのは、感心です。アタックでは、ダイレクトなプレーとワイドなプレーを工夫して使っていました。藤田(慶和・ウイング、前半39分から出場)はいいプレーをしてくれた。毎週、リザーブから出した方がいいのではと思いました(場内、笑)。山田(章仁・ウイング)もよかった。2人とも後ろからボールを呼び込んで、スペースを見極めた。ポジティブなプレーだったと思います」

――W杯に向け、埋めるべき理想と現実のギャップは。

「韓国戦では(完成度は)20パーセントでした。香港戦では21パーセントに上がった。これはポジティブです。毎日、1パーセントずつ上がれば本番までには100…計算があっているかどうかは確認しておいてください」

――メンバーチェンジは前半に4人。早かった。

「リザーブにも時間を与えたかった。香港をリスペクト指定ないわけではないけど、選手のバリエーションを増やしたい考えがあった。ベンチの選手もいいプレーをしてくれた」

――9日、福岡で韓国代表とのARC第3戦があります。

「もう1パーセント、上げます。向こうには速いバックスがいる。フルバック(チャン・ソンミン・身長186センチ、体重95キロ)は焼肉屋さんの品物を全て食べ尽くしたようにでかい。そこで求めるのは、攻守切り替えの質の向上。スクラムにも取り組む。モールにも時間を使いたい」

――(途中、プロップ畠山健介ゲーム主将が外国人レフリーとのコミュニケーションについて言及)

「いまの日本の大学生のラグビー選手は、4時間も練習するのを止めてそのうち2時間を英語の勉強に充てたほうがいい。30分たったら全員、寝てしまうかも知れませんが(場内、笑い)」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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