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JALとANAで異なる搭乗方法。どちらが使いやすいのか検証してみると

鳥塚亮大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長

夏休みに入り家族旅行の季節になりました。ちびっ子たちを連れたお父さんお母さん、あるいはおじいちゃんおばあちゃんがたくさん飛行機に乗る時期です。

そんな時、気になるのが飛行機に乗る時の「搭乗の順番」。

ふだん飛行機に乗り慣れているビジネスマンの皆様方は気にしたこともないと思いますが、不慣れな家族連れやおじいちゃんおばあちゃんたちはゲート前でちょっと困惑しているような姿をよく見かけます。

筆者はいつもはファーストチョイスは日本航空ですが、ときどき全日空に乗るとゲートでの搭乗の案内に大きな違いがあるのに気付きます。

二つの会社を乗り比べてわかったことは・・・

JALの搭乗案内

日本航空のゲートでは優先搭乗案内という表示が出ています。

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これがその案内です。

そろそろ搭乗時刻が近づいてくると、「あらかじめご搭乗の順番についてご案内いたします。」というアナウンスが入ります。

そのアナウンスによると、まずはじめに

・事前改札としてご搭乗に際してお手伝いが必要な方。2歳以下の小さなお子様をお連れの方。ご妊娠中の方

・次に、ファーストクラスをご利用の方。エメラルド、サファイア、グローバルクラブメンバーの方。

・次に、後方座席○○番以降のお客様

・すべてのお客様

という順番です。

事前改札としてお手伝いが必要な方や小さなお子様連れの方、というのはわかりやすいですね。

ただ、ゲートが混乱する要因としては、そういう事前改札対象のお客様をあらかじめゲート前に集めておくかどうか。

ゲートの係員は事前に対象旅客をゲートに集合させることをするか、それともしないかによって、搭乗がスムーズかどうかが決まります。

そして問題なのはその次の会員の方の搭乗する段取りです。

ファーストクラスはわかるとして、エメラルド、サファイア、グローバルクラブっていうのが難しい。

もちろん会員である本人たちは自分がどのカードを持っているかということは百も承知しているでしょうが、一般の人たちが理解できない。

マイルを貯めるだけのカードを持っているとか、第一ステージの「クリスタル会員」の人たちは、基本的には優先搭乗にはならないのですが、アナウンスとは別にゲートの職員が「ただいま会員の皆様方の優先搭乗です。」などと言うものだから、よくわからない人たちがゲートに集まって来てさらに混乱します。

で、混乱するとどうなるかというと、人間というのは自分に都合よく解釈しますから「私も会員だから」と本来優先搭乗対象じゃない人たちがぞろぞろとゲートに並び始めます。

そこへ、事前改札に間に合わなかった小さな子供を連れた家族連れなどが入ってくる。

もともと優先搭乗対象の会員というのは乗り慣れている人たちですから、カードタッチでさっさと乗っていきます。

本当に優先搭乗対象の会員の人たちだけの優先搭乗であれば、ゲートで止まる人もいませんから、搭乗がスムーズです。

ところが乗り慣れていない人や、良くわかっていない人、あるいは家族連れなどはバーコードで引っかかったり、搭乗口に来てから搭乗券を探したりで、スムーズな搭乗ができません。結果として全体の搭乗時間が伸びる傾向にあります。

日本航空の国際線ゲート前の搭乗案内の表示
日本航空の国際線ゲート前の搭乗案内の表示

これが国際線ともなると、搭乗の案内が5段階になりますから、ただでさえ不慣れな国際線では搭乗ゲート前はいつも混乱しています。

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日本航空のゲート前はこうして遠巻きに自分の搭乗順番が来るのを待つ人たちで常にごった返している印象があります。

ANAの搭乗案内

これに対して全日空の搭乗案内は「グループ搭乗制」です。

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ゲートの前にグループ1~4といった立札があり、お客様は自分がどこのグループに属しているかを手元の搭乗半券で確認することで、自分のグループ番号の列に並びます。

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これがその搭乗半券(保安検査証)です。

赤で囲った部分に属するグループが書いてありますから、不慣れなお客様でも迷うことはありません。

実にスマートな方式ですね。

世界的にはどうなのか

日本国内は全日空がグループ搭乗制を取り入れてスムーズな搭乗を行なっていますが、世界的にはどうなのでしょうか。

筆者は今年になってからヨーロッパへ2回、台湾へ2回行っただけで、アメリカにも東南アジアへも出かけてませんから判断材料としては乏しいのですが、ヨーロッパではこうなっています。

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LOTポーランド航空のワルシャワ空港の搭乗ゲート前です。

こちらではグループではなくゾーンと書かれていますが、やはりゲートの前に立札があり、お客様は自分が属するゾーンの前に並ぶことで混乱を避けています。

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こちらはBAのロンドン-マドリッドの搭乗券です。

赤で囲ったところに「GROUP1」と書かれています。

どうやら、ヨーロッパでも優先搭乗の順番を数字で表示するようになって来ているようです。

ワンワールドとかスターアライアンスなど、航空会社が属するアライアンスというよりも、会社ごとのようですから、JALさんもそろそろグループ搭乗制を取り入れてみてはいかがでしょうか。

筆者の航空会社勤務の経験上一つ言えることは、ファーストクラスやビジネスクラスのお客様は自分がどこのクラスに乗るのかわからない人はいません。チェックインカウンターで、「私はどの列に並べばよいでしょうか?」と言う人はほぼ全員がエコノミークラスです。

同様に、自分が優先搭乗対象かそうではないのかがわからない人というのは、優先搭乗の対象ではない人ということです。

飛行機に乗る順番がよくわからないという方は、早めに搭乗ゲートの前で待機するのはもちろんですが、焦らず、ゆっくりとお乗りください。

そろそろお盆の帰省も始まります。

飛行機だけでなく新幹線でもマイカーでも、皆様のご旅行が楽しい思い出の旅になりますようにお祈りいたしております。

※本文中に使用した写真はすべて筆者が撮影したものです。

大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長

1960年生まれ東京都出身。元ブリティッシュエアウエイズ旅客運航部長。2009年に公募で千葉県のいすみ鉄道代表取締役社長に就任。ムーミン列車、昭和の国鉄形ディーゼルカー、訓練費用自己負担による自社養成乗務員運転士の募集、レストラン列車などをプロデュースし、いすみ鉄道を一躍全国区にし、地方創生に貢献。2019年9月、新潟県の第3セクターえちごトキめき鉄道社長、2024年6月、大井川鐵道社長。NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」顧問。地元の鉄道を上手に使って観光客を呼び込むなど、地域の皆様方とともに地域全体が浮上する取り組みを進めています。

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