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海洋堂・宮脇センムが吉本興業に所属した理由。そして、見据える“次”

中西正男芸能記者
宮脇センムの名前で吉本興業に所属している海洋堂の宮脇修一専務

 精巧なフィギュアなど優れた造形技術で世界に名をとどろかせる「海洋堂」取締役専務の宮脇修一さん(64)。昨年から文化人として吉本興業に所属し、宮脇センム名義でYouTubeチャンネルも展開するなど、これまでとは異なるフィールドで発信を始めています。新たな分野を生み出してきた開拓者の目から見た吉本興業に所属する意義。そして、見据える“次”とは。

白い目で見られるジャンル

 去年の1月から宮脇センムという名前で吉本興業に所属しています。活動でいうとYouTubeチャンネルでいろいろな芸人さんやタレントさんと一緒に企画をしたり、イベントに出演したりということが軸になっています。

 もともと吉本さんとはいろいろと接点があったんです。池乃めだかさんの等身大フィギュアを作ったり、吉本さんが開催している京都国際映画祭のアート部門でコラボをしたり。

 その中で、宮脇という存在をキャラクター的に使って、もっと海洋堂を広く発信していく。そんなことをするのもいいんじゃないかと周りの方々から助言をいただき、そんなこんなで今日に至るという流れなんです(笑)。

 そもそも海洋堂は1964年に私の父が始めまして、大阪にある小さな模型屋だったんです。そこから、2000年ごろに動物のフィギュアがついた「チョコエッグ」で皆さんに広く知ってもらえるようになり、それまで売れても何百個という規模だったのが何億個と売れるようになりました。

 ただ、知ってくださっている方は本当によく知ってもらっているんですけど、知らない人は全く知らない。いわばオタク文化の会社でもありますから、一般的に多くの皆さんに知ってもらうにはまだまだ足りない。

 そこを吉本興業という日本全国、特に関西の人間からしたらこの上なく親しみを持って名前を知っている会社にお手伝いいただくことで補ってもらえたらなと思ったのも私が所属をさせてもらった意義でもあったんです。

 カルチャーのジャンルの中でも、私たちがやっているフィギュアというものは一番新参者ですからね。

 それこそ、20年ほど前からフィギュアというものがちょっとずつ認知されていって空気も少しは変わったかもしれませんけど、それまでは「いいオトナが怪獣だとか、ゴジラだとか、そんなものにうつつを抜かして…」とか「趣味がプラモデル、模型だなんて…」という感じで常に白い目で見られるジャンルでもあったんです。

 ただ、吉本も僕らが小さい頃は今みたいに多くの若者があこがれて入るようなところじゃなかったわけです、正直な話。

 「そんなアホみたいなことばっかりしてたら、吉本に入れるで!」と親が子どもに言うような空気が多分にありました。

 そこから数十年かけて今の吉本があるわけですからね。そういう意味でも学ぶところが多いですし、きれいなお手本やとも思っています。

今でも何が売れるか分からない

 オタク文化というのは日本が世界に誇るべきものだとも言われてますけど、実は日本と言うのはフィギュア的なものを“嫌う国”でもあったんです。

 例えば、海外だとダヴィンチ的なもの、いわゆる立体の造形物がたくさんあるんですけど、日本は絵画が中心で芸術の分野の中心に立体物があまりないんです。

 なので、今もその流れで漫画は世界的に有名なものがたくさんあるが、立体物を飾ったりする文化はフィギュアがグッと来るまではあまり一般的ではなかった。

 だからこそ、立体物であるフィギュアを知ってもらえるようになったのはありがたい話ですし、そこの良さをもっと広めていきたいとも思うんです。

 そんな考えもあって、私も今年でもう65歳になりますけど(笑)、吉本に入ってこんなこともさせてもらっている次第なんです。

 ただね、これだけやってきても、いまだに何が売れるのか。そこだけはホンマに分からんのです。法則が見いだせないというか。

 それこそ「鬼滅の刃」とか「呪術廻戦」、「ドラゴンボール」とかの関連商品が売れるのは分かります。作品自体に人気がありますから。

 ただ、思いもよらない動物のフィギュアが売れたり、仏像が売れたりする一方で、これは売れるだろうと自信を持って作った映画関連の商品がさっぱり売れなかったり(笑)。ホンマにね、難しいもんです。これだけでやってきても分からない。

 だからこそ、また「もっといいものを作ろう」と思えますし、その思いをもって、もっと、もっと先を目指していきたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■宮脇センム(みやわき・せんむ)

1957年7月1日生まれ。大阪府出身。本名・宮脇修一。父・宮脇修が模型店として64年に創業した海洋堂の経営に幼少の頃から参加。株式会社海洋堂取締役専務。80年代以降は磨き上げられた“模型審美眼”で造形作家を束ね、小売り業種からメーカーへ転身した海洋堂の立ち上げと牽引に従事する。アニメや特撮ヒーローのキャラクターをはじめ、動物や恐竜などの精巧な造形力で国内外から高い評価を受ける。2000年頃には日本の動物コレクション(チョコエッグ)などで食玩ブームを生みだし、フィギュアという言葉を一般層にまで広げた立役者となった。21年から宮脇センムとして吉本興業に所属。YouTubeチャンネル「宮脇センムチャンネル」も展開。4月29日から5月1日まで大阪・万博記念公園で開催されるイベント「Warai Mirai Fes 2022 ~Road to EXPO 2025~」にも出演する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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