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50歳になって噛みしめる加齢の「面白さ」。「2丁拳銃」のこれまでとこれから

中西正男芸能記者
「2丁拳銃」の小堀裕之さん(左)と川谷修士さん

今年ともに50歳となったお笑いコンビ「2丁拳銃」の川谷修士さん、小堀裕之さん。修士さんは妻で放送作家の野々村友紀子さんとの独特な関係が話題になり、小堀さんは現代に生きているとは思えない、愛人の存在を公言する“ヘドロパパ”キャラを歩んでいます。新たな年代に突入し、こみ上げる思い。そして、加齢から「面白さ」を抽出する方法とは。

「スイッチが入った」

小堀:二人とも50歳になりました。100分間の漫才をお見せする「百式」というイベントをずっとやっているんですけど、二人の年齢を足したら100…。ま、直接関係はないんですけど(笑)、いろいろなところで年齢を意識するというか、普通に一つ歳を取ったのとは違う感覚がありますね。

49から50に変わる。10の位も、1の位もガチャッと変わるわけです。30になった時も、40になった時もそうだったんですけど、この“ガチャッ”の音が大きいというか。

歳を重ねた分、あらゆるやり方も出てくるというか、例えば20代の時に僕らがやっていたネタを今の僕らがやる。そんな味も出てくる歳だと思いますし、しっかりと意識して50歳の漫才をお見せできたらなというのが今の思いですね。

修士:あとね、オジサン扱いをされてもムカつかなくなりました(笑)。おっさんとかジジイと言われた時に、もちろん「誰がジジイやねん!」とつっこんで笑いに変えていくんですけど、40代まではどこか「おっさん」「ジジイ」と言われた時に本気の抵抗感があったんです。でも、それが本当になくなりました。もう絶対的におっさんですから(笑)。そういう部分では肩の力が抜けたというか、今の自分をきちんと認められているのかもしれませんね。

20代の頃はライブでネタとネタの間にカッコいい映像を作って流したりもしてたんですけど、あえて今の年齢でそれをやってみようかとも話しています(笑)。今を認めることによって、そんなことも出てくるんだろうなとも思います。

それと同時に「スイッチが入った」感覚もあります。仮に人生80年と考えた時に、折り返して10年が経った。なかなか言葉にしづらい領域なのかもしれませんけど、もう四の五の言わずやるべきことをやるしかない。変に夢を見ることもない。かといって、やるべきことはまだまだある。そこの見極めがついたのかもしれませんね。

加齢の面白み

小堀:若い時に想像していた50歳よりは楽しくその時を迎えられているとは思います。想像以上に、お金は持ってないですけど(笑)。ただ、お金以外は心地いいですし、後輩にいじられるのも幸せですし。

なんなんでしょうね、あきらめと覚悟。そんなところなんですかね。幸い、前向きに50歳を迎えられています。

20代に比べて、笑いの瞬発力とか発想の突飛さはマイルドになっているのかもしれませんけど、今は合気道的な強さがあるのかなと思っています。ウケの強さというか。殴られてもそれをうまくいなす。相手の弱いところをポンと突く。そういうことがあるから、20代の自分たちには負けない。それも今の気持ちに結び付いているのかもしれませんね。

修士:ネタの引き算ができるようになったのかもしれませんね。若い頃は面白いと思うことをどんどん足していく。怖いから、皿に盛れるだけ盛っていく。でも、今は皿の余白も含めて味のうちというか。そういう盛り付け方ができるようになった気はしています。

小堀:歳を重ねるって、あまり良いイメージがないことかもしれませんけど、これはこれで面白いことなんだろうなと思っています。ここから10年経ったら、次は還暦。そこでも年下の58歳くらいのおっちゃんやおばちゃんに「あんた、ちゃんとしぃや!」と言われたら、それはそれで面白いだろうなと(笑)。年下の人でももう58とかになっている空間にも味があるなと感じます。

修士:体力的にはどんどん落ちていくんでしょうし、なんとか60歳までに「百式」ならぬ「千式」をやってみたいですね。1000分間の超ロング漫才。これは一つ歳を取るごとに難しくなるでしょうから、なるべく早くやらないと。

1000分ということは16~17時間。朝6時に始めたとして、なんとか電車のあるうちにお客さんに帰ってもらえるかどうかか…。そら、ま、大変ですよね(笑)。

ただ、この歳になってあきらめることもあれば、まだやろうと思うこともある。そこが幸せだとも思いますし、できること、やるべきことはしっかりやる。その積み重ねを続けていければと思っています。

(撮影・中西正男)

■2丁拳銃(にちょうけんじゅう)

1974年1月9日生まれで奈良県出身の小堀裕之と、74年5月17日生まれで兵庫県出身の川谷修士が93年にコンビ結成。若手の頃からアイドル的な人気を誇り音楽活動も展開。2000年に東京に進出する。03年には「M-1グランプリ」で決勝進出(4位)。日本テレビ系「人生が変わる1分間の深イイ話」で小堀が家族を顧みない“ヘドロパパ”として紹介され、修士の嫁・野々村友紀子に説教される流れが話題となる。ABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞、NHK新人演芸大賞(演芸部門)、上方漫才大賞新人奨励賞など受賞多数。ライフワーク的に開催している100分間ノンストップで漫才をするイベント「百式」を今年も開催。東京公演(11月16日、ルミネtheよしもと)、福岡公演(11月24日、よしもと福岡 大和証券劇場)、大阪公演(11月28日、なんばグランド花月)を行う。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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