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益虫テントウは可愛い殺し屋②=巨大?なカメノコテントウ

天野和利時事通信社・昆虫記者
カメノコテントウ幼虫(左)とナミテントウに交尾を迫るカメノコテントウ成虫。

 カメノコテントウは日本最大級のテントウの1つ。ナミテントウやナナホシテントウしか見たことがない人がカメノコテントウを見つけると、その大きさにびっくり仰天。異常気象や放射能のせいではないかと、あわてふためいたりする。

 大きいと言っても、しょせんはテントウなので、体長はせいぜい12~13ミリ程度。それでも体積にしたら、ナミテントウの何倍もありそうだ。ナミテントウの越冬集団の中にカメノコテントウが混じっていると、その大きさの違いが際立つ。

 何を血迷ったのか、小さなナミテントウのメスに襲いかかり、交尾を迫る大きなカメノコテントウのオスを見たこともある。そんなシーンは、まさに乱暴狼藉(ろうぜき)行為だ。

ナミテントウの集団の中では、カメノコテントウの大きさが際立つ。
ナミテントウの集団の中では、カメノコテントウの大きさが際立つ。

ムツボシハムシの幼虫を襲うカメノコテントウ幼虫。
ムツボシハムシの幼虫を襲うカメノコテントウ幼虫。

 このカメノコテントウは、全然珍しい虫ではない。しかし、ナミテントウやナナホシテントウのようにアブラムシを主食とせず、ハムシの幼虫を好んで食べるので、好みの味のハムシがいる木を知らないと、なかなか見つからない。

 カメノコテントウは体が大きい分、アブラムシよりずっと大きなハムシの幼虫に食欲をそそられるのかもしれない。カメノコテントウのお気に入りの餌は、クルミハムシ、ヤナギルリハムシ、エノキハムシ、ヤツボシハムシなどの幼虫だ。特に5月半ばから、6月にクルミの木に大量発生するクルミハムシの幼虫が大好物なので、この時期に野山のクルミの木を見て回れば、カメノコテントウがたくさん見つかるはずだ。

エノキハムシの幼虫を食べるカメノコテントウ成虫。
エノキハムシの幼虫を食べるカメノコテントウ成虫。

孵化したばかりのクルミハムシの幼虫を集団で襲撃するカメノコテントウ幼虫。
孵化したばかりのクルミハムシの幼虫を集団で襲撃するカメノコテントウ幼虫。

集団越冬するカメノコテントウの成虫。
集団越冬するカメノコテントウの成虫。

 カメノコテントウは、幼虫もナミテントウよりはるかに大きいので、大量のハムシの幼虫をあっという間に皆殺しにしてしまう。カメノコテントウの幼虫は、かなりグロテスク(虫好きはこれを格好いいと思う)で、暗殺者と呼ぶにふさわしい風貌だ。

 都心の公園だと、クルミよりヤナギの方が多いので、カメノコハムシをヤナギで見つけた人の方が多いかもしれない。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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