田畑議員辞職 激化する静岡5区の細野VS吉川の争い
ライバル・吉川氏が繰り上げへ
準強制性交等罪で刑事告訴され、2月21日に自民党を離党した田畑毅衆議院議員が27日夕、衆議院に辞職届を提出した。翌日には週刊誌が女子高生(当時)との淫行疑惑を報じ、いよいよ逃げられなくなったと思ったのか。刑事告発した女性とはFBで知り合い、女子高生と出会うきっかけはミクシーだったと報道されている田畑氏は、政治家としてあまりにも脇が甘すぎた。
さて田畑氏の議員辞職で、同じ東海ブロックの吉川赳氏が繰り上がる。吉川氏は2012年、2014年、2017年の衆議院選で細野豪志元環境大臣と戦い、いずれも敗退した。2012年には比例復活できたが、2014年と2017年はそれも叶わなかった。
5区は自民党にとって諦めの選挙区だった
にもかかわらず、吉川氏はすでに自民党の静岡5区総支部長だ。2度連続して落選すれば支部長になれない自民党の通例からすれば、特別扱いは明らかだ。
「相手が細野氏で誰も手を挙げなかった。あそこで立つのは吉川氏しかいなかったからだろう」
反対にいえば自民党の中でもそのような声が出るほど、静岡5区で細野氏は強かった。
ところが2017年の希望の党騒動をきっかけに一転する。三島市で後援会長を務めていた馬場妙子氏が辞任した。細野氏は国民民主党にも入らず、無所属になり、話題になることも少なかった。
一方で吉川氏は選挙のたびに細野氏との差を縮めており、繰り上げ当選すれば自民党の現職になる。1月に二階派入りしたばかりの細野氏にとって、自民党入党が困難になることは間違いない。
嫌がらせのような国替え説が浮上
そのような細野氏に噂されているのは、愛知2区への転出だ。田畑氏が議員辞職したばかりの愛知2区は自民党にとって空白区で、しかも相手の古川元久国民民主党代表代行は民主党時代の同志。まるで嫌がらせのようなお国替え案といえる。
果たしてこの案を細野氏が飲むのだろうか。
「淡々とやるしかない」
吉川氏の比例復活の可能性が囁かれていた時、細野氏は筆者にこう語ったことがある。
「私は政策の実現が何よりも大事だと思っている。どの政党に所属するのかは、それを実現するための手段にすぎない」
自民党入党を意識しながらも、自民党にこだわらないといった口ぶりだった。
そもそも細野氏にとって静岡5区は、2000年の衆議院選に出馬して以来、自らが歩いて築いた「王国」だ。容易に手放すはずがない。
細野氏が静岡5区を離れられない理由
さらに静岡から離れるのは重要な後援者との決別になりかねない。それはスズキの鈴木修会長だ。細野氏は2017年6月の静岡県知事選で、知事への転出も考えた。それを阻止したのが川勝平太知事の支援者でもある鈴木氏だったという。関係者はこう話す。
「鈴木会長は細野氏に『お前は国政で活躍する人間だ。知事選に出るな』と言って出馬を諦めさせたそうです」
実際に細野氏が立ち上げた自誓会の平成27年の収支報告書には、鈴木氏が個人として150万円分、スズキとして100万円分のパーティー券を購入した記録がある。自民党の二階俊博幹事長との縁をつないだのも鈴木氏だと話す人もいる。そのような支援者がいて、18万票以上を獲得したこともある静岡から、わざわざ苦戦が予想される選挙区に移るだろうか。
2月25日夜には岸田文雄政調会長が静岡5区で講演し、「この選挙区を吉川氏に委ねてもらいたい」と訴えた。翌27日夜には二階氏が麻生太郎副総理兼財務相と懇談し、今夏の衆参ダブル選の可能性について話しあったとされる。早期解散総選挙になれば、二階氏が幹事長の間に決行となり、細野氏にとって悪い条件ではない。
「判断は有権者に委ねるしかない」
淡々とそう述べる細野氏の言葉には、これまでも苦境を乗り越えながらバージョンアップしてきた自信もうかがえる。今年1月の山梨県知事選でひとまず休戦となった二階派と岸田派の争いは、再び火ぶたを切るだろう。