説明しない政治家を斬り捨て、自民党は解党的出直しを!
不完全な「報告書」
疑惑はかえって深まったのかもしれない。派閥のパーティー券をめぐる〝裏金〟問題をめぐり、自民党は2月15日、「聴き取り調査に関する報告書」を公表した。
自民党は森山裕総務会長を座長とする調査チームを立ち上げ、2月13日に党所属の全国会議員374名と10名の選挙区支部長を対象に実施したアンケートの結果を国会に提出。だがその内容は、「政治資金パーティーに関して、収入の記載漏れがあったかどうか」「過去5年分の記載漏れ金額」の2点を記入するのみで、「不十分」との批判が強かった。
そしてその調査を補強すべく、記載漏れがあった国会議員や支部長、および派閥・グループの代表者または事務総長のひとりひとりにヒアリングして公表されたのが今回の報告書だ。調査チームの6名の国会議員が聴き取りを行い、それを補佐した外部の弁護士たちがまとめている。
〝組織的行為〟が明らかに
調査の結果、〝裏金〟が生み出された仕組みとして「ノルマ超過分を派閥から払い戻された還付型」と「ノルマ超過部分を議員側が手元に置いた留保型」、そしてその両方の3パターンがあることが判明した。そして過去5年間で還付された金額は5億7949万円にも上っていた。しかもその多くが、「派閥の事務局から記載の必要なしとされた」もので、組織的な行為だったことが窺えた。
最大の問題は、この〝慣行〟はいつから始まったのかという点に尽きる。報告書によると、清和政策研究会(旧安倍派)では「30年くらい前」「20数年前」「10年ほど前」とまちまちだ。実際に筆者が知るところでは、この問題が発覚するまで「還付金の仕組み」を知らなかった議員もいた。その一方で、新人議員の頃に先輩議員から「良い集金方法がある」と教えられたことがきっかけで、多額の還付金を得るべくパーティー券の販売に勤しんだ議員についても耳にした。
こうした〝カネの問題〟が、派閥が持つ人事権と絡まって、組織の中に徐々に浸透していったに違いない。そこにあるのは「慣れ」と「驕り」、そして限りない「無責任さ」だ。
1月下旬から始まった通常国会は、通常なら冒頭に施政方針演説が行われるところ、その前に「政治とカネ問題」を審議する予算員会が開かれるという異常な事態となった。野党各党の追及に岸田文雄首相は「説明責任」と繰り返すばかりで、その意味はますます軽くなっている。
肝心の問題は不明のまま
まず、どこに本当の問題があるのかが明らかになっていない。根本的な解決のためには、この仕組みをいつ誰が始めたのかを確認しなくてはいけない。そのためには総理大臣経験者も含む、関係者全員へのヒアリングが必要ではないか。彼らはいまでも大きな発言力を有しており、「いまは現職の議員ではない」というのみで免責される理由にはならないはずだ。
次に「還付型」と「留保型」の違いを明らかにしなければいけない。派閥から還付金を受けた時の「収支報告書に記載するな」との指示は事実上の強制力が伴ったのだろうが、議員が派閥に渡さずに留保した資金はその影響は少ないはずだ。場合によっては「悪質な隠し金」と認定すること(当然、全額が脱税の対象となるだろう)も、不可能ではないだろう。
忘れてはならないのは、このように還付金疑惑があるとはいえ、議員はそれぞれ責任が異なるという点だ。
だが今回出された報告書はそれについての区別はなく、「一律責任」を前提としており、個々の詳細については記載がない。これは全体の問題とすることで、責任を薄めようとするものではないか。
2月10日から12日までNHKが行った世論調査では、内閣支持率は前月比1ポイント減の25%、不支持率は2ポイント増の58%。不支持率が支持率の2倍を上回り、政党支持率を見ても、派閥のパーティー券問題が発覚した昨年12月以来、自民党は大きく落ち込んでいる。
「幹部が責任をとって議員辞職すべき」
「政治とカネ」問題について国民が抱く猜疑心はいま、頂点を極めている。「論語」の顔淵第一二に「民無信不立」とある通り、政治に対する信頼がなくなれば、為政者はその任から去るべきであるというのが本筋だ。
野党は政倫審を開催し、旧安倍派の幹部らの出席を求めているが、重要なことは国民の納得が得られる説明ができるかという点であり、国民に非公開の密室でのやりとりに終わることは許されない。自民党内には「解党的出直し」を求める声が一部にあり、旧安倍派の中にも「幹部が責任をとって議員辞職すべき」との声もある。誰も責任を取らないのなら、その組織はもう存続する意味はない。