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4月16日に告示される衆院補選が岸田首相、小池知事の命運を左右する!

安積明子政治ジャーナリスト
公務に励む小池知事(写真:松尾/アフロスポーツ)

支持率アップで解散に打ってでる?

 4月13日と14日に行われたテレビ朝日の世論調査によると、内閣支持率は26.3%で5.4ポイント上昇した。不支持率は51.7%と9.4ポイント減少している。同時期に行われた選挙ドットコムとJX通信の共同調査でも、内閣支持率は25.7%で6.8ポイント上昇し、不支持率は50.4%で8.4ポイント減少した。

 アメリカで受けた国賓待遇にすっかりご満悦だった岸田文雄首相は、帰国早々に出たこれらの数字にさぞかし喜んでいることだろう。岸田首相が訪米した1週間の間、国会はすっかり凪状態。だが「6月解散説」は根強く囁かれ、「支持率が3ポイント上がれば、岸田首相は解散するらしい」との声もある。

米国議会で演説する岸田首相
米国議会で演説する岸田首相写真:ロイター/アフロ

 果たして岸田首相は、衆院解散に打って出るのか。しかしその目前にあるのが、4月16日告示・28日投開票の衆院補選だ。

長崎3区と東京15区で候補者出せず

 島根1区補選は昨年11月に細田博之前衆院議長が死去したためだが、長崎3区と東京15区の補選はいずれも自民党現職の不祥事が原因だ。長崎3区では谷川弥一前衆院議員が派閥のパーティー券をめぐる多額の裏金問題で辞職し、東京15区では柿沢未途前衆院議員が昨年の区長選での公職選挙法違反事件で逮捕された。

 そのため、自民党は長崎3区と東京15区では独自候補を擁立できなかった。10増10減により次の衆院本選挙でなくなる長崎3区では希望者はいたものの、「独自候補を立てても仕方ない」との意見が多数を占めたのだろう。なお東京15区では小池百合子東京都知事に近い「ファーストの会」の乙武洋匡副代表を推薦しようとしたが、乙武氏が自民党に推薦願を出さなかったことと、地元からの強い反対があったために諦めたとされる。

 だが実際にはそれだけではなかったようだ。小池知事に近い国民民主党は「政治とカネ」問題にまみれる自民党の相乗りを嫌い、「自民党が推薦する候補は応援しない」と早々に言明。公明党も乙武氏の過去のスキャンダルを嫌った。

 昨年12月の江東区長選や今年1月の八王子市長選に続き、小池知事との距離を縮めようとするのは自民党東京都連の萩生田光一会長だが、萩生田氏自身は派閥のパーティー券をめぐる問題で2728万円ものキックバックを受けたことが発覚し、1年間の党役職停止処分を受けている。

 そうした事情を嫌う一方で、自民党の票だけはほしいのだろう。小池知事は4月12日の会見で、「広い方々に支えていただくのが良い」と述べた。

経歴詐称疑惑が知事を襲う

 しかしその小池知事自身が現在、スキャンダルにまみれている。もっとも小池知事にはかねてから「カイロ大学(首席)卒業」が事実ではないとの噂が根強くあったが、それをいっそう大きくしたのが2020年5月に文藝春秋から発売された石井妙子氏のノンフィクション「女帝 小池百合子」だった。

 そして今年4月10日発売の文藝春秋5月号では、小池知事の元側近で都民ファーストの会東京都議団政務調査会事務総長だった小島敏郎氏と小池知事がエジプト留学時代に同居していた北原百代氏がそれぞれ手記を発表。小島氏は2020年の都知事選前に突如、エジプト大使館のFBに小池知事が卒業したとするカイロ大学の「声明文」が作られた経緯を語り、「女帝 小池百合子」で石井氏に資料を提供した北原氏は、小池知事がカイロ大学を落第していたと告発した。

2020年の都知事選の時に小池知事が提出した「卒業証明書」
2020年の都知事選の時に小池知事が提出した「卒業証明書」写真:つのだよしお/アフロ

 これについて小池知事には今のところ訴訟などの動きはなく、記者会見では「卒業は大学が認めている」などと述べるにとどまっているが、ひたすら頭を低くして“嵐”が過ぎるのを待つ戦法なのか。実際に7月7日の東京都知事選を前に、国政転出を狙っていたと言われる小池知事だが、なぜか3月の後半に入ってその意欲が見えなくなった。奇妙なことにその期間は、小島氏と北原氏の原稿の編集期間とほぼ一致する。

 岸田首相と小池知事は、「首相の座」という目的が共通する。さらに4月の衆院補選がこれからの運命を左右すること、6月が大きな決断をすべき時であることも同じだ。

 昨年以来、永田町には「浄化の波」が押し寄せている。派閥のパーティー券をめぐる「政治とカネ」問題は派閥政治の終焉をもたらし、国民の政治に対する監視の目を強くした。国政と都政のトップにいる2人もその波を避けることはできないが、本日始まる衆院補選は新しい政治を開く鍵となるかもしれない。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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