YouTuberをメインイベンターとしたSHOWTIMEのPPV
8月最後の日曜日にオハイオ州クリーブランドで催されたボクシング興行を、SHOWTIMEがPPVで放送した。メインイベントはYouTuber対元UFCの世界王者。両者には200万ドルのファイトマネーが保証された。
前座では好カードと呼んで良いファイトが展開されたが、メインイベントの8回戦は、見るべきものの無い一戦だった。
ただ、それは純粋にボクシングとして見詰めた場合の見解であり、YouTube文化としては違うようだ。
このYouTuber、ジェイク・ポールは元NBA選手や元MMA選手とボクシングルールで戦うことが好きである。それでファンを獲得しSHOWTIMEの賛同も得、ビジネスとして成立させている現実がある。
SHOWTIMEスポーツ部門のボスであるステファン・エスピノザもボクシングの歴史に対して詫びるつもりはなく、「スポーツの進化に興味を持ち、中継することが仕事だ」と述べている。
この日、勝者となったポールは「メディアもファンも俺を嫌う人々も、好奇の目を注いでいるじゃないか。自分が繰り返す過激な発言が、俺の存在をより大きくしているんだ」とコメントした。
そして試合後、NBA唯一無二のスーパースターである"KING"レブロン・ジェームズが「クリーブランドが盛り上がったな! 帰省しておけばよかったよ」とSNSに書き込んだことが、同興行の価値を上げた。
9月11日には別会社である「Triller」がイベンダー・ホリフィールドvs.ヴィトー・ベウフォート戦をPPVで放送。初回1分48秒で44歳の元UFCファイターが、58歳の元統一ヘビー級王者を沈めた。
試合直後から「Triller」社は、ベウフォートに「ファイトマネー2500万ドルで、ジェイク・ポールと戦わないか?」と両者の対戦を煽っている。
ベウフォートは、直ぐにでもやりたいと応じ、この種のイベントが好きなファンも少なからず盛り上がりを見せる。
しかし、である。
マイク・タイソンvs.イベンダー・ホリフィールド第1戦、第2戦、ジョニー・タピアvs.ポーリー・アヤラ第1戦、第2戦、フロイド・メイウェザー・ジュニアvs.サウル・カネロ・アルバレス、マニー・パッキャオvs.シェーン・モズリーといった後世に残るボクシング中継をしてきたSHOWTIMEは、やはりボクシングの美しさや芸術性を伝えてほしい、と私は思うのだ。