せっかくのプロポーズ大作戦が怪しいおじさんの登場で思わぬことに!ユニークな物語のアイデアの源は?
意中の沼口さんをデートに誘うことに成功したダイゴは、後輩カップルのカズミとシロウに付き合ってもらってドライブへ。
最大の目的は沼口さんへのプロポーズ。成功するのか、しないのか?
後輩の協力もとりつけて準備は万全。そのタイミングを狙うが、そこに思わぬ邪魔が入ってしまい……。
こんな、よくある男女のほのぼの告白エピソードを基軸にしながら、途中、ある人物の出現すると物語が一転する映画「よく晴れた日のこと」。
40分の短編ながら、恋物語、ロードムービー、ミステリー、そして純愛ドラマと表情をコロコロとかえていくような面白さがある本作について、伊藤智之監督に訊く。(全三回)
出会ったすばらしい役者たちと集大成的な映画を作りたかったが……
2019年に池袋シネマ・ロサで短編特集「悪魔の舞を手に入れし者-四畳半三部作-」好評を集めた伊藤監督。今回の「よく晴れた日のこと」は、実はこの短編と深くつながっている作品だと明かす。
「2019年に短編三部作として劇場公開をした『優しいシャツ ~カナタソウタロウの旅~』『悪魔の舞を手に入れし者』『エモーショナルレモン~旅立ちはいつもレモンの味がする、あなたはどんな味がする?~』を経て、ここでご一緒した俳優と、もう一度一緒に作品を繰りたい気持ちがまず第一にあったんです。
今回の『よく晴れた日のこと』で主演を務めてくれた師岡(広明)さんはその時に予告編だけ出演して頂いていました。
師岡さんとは同い年で。元々すごくおもしろい役者さんだと思っていてんですけど、たまたま僕が昔ちょっとだけ働いていた制作会社の仕事も師岡さんは受けたことがあったみたいで、気づけば意気投合して、二人で週末に集まって動画を撮る、みたいなことを一時期していたこともありました。
こういう関係性を築けていたので、短編を経て集大成としてこのメンバーで長編映画を撮れないかと、当初は考えていました。
実際に動いてもいて昨年の9月ごろに撮影をというところまで話も進んでいた。
ただ、コロナ禍の感染状況などもあり、僕の力不足もあって、その長編自体は実現できないことになってしまいました。残念でメンバーにも迷惑をかけてしまうことになったんですけど、いったん流れてしまった。
でも、僕の心の中にはどうしても諦められない気持ちがあって。どうにかして成立させられないか、考えに考えて脚本を少し短くして、キャストもスタッフも最小限に絞ればできるのではないかなと。
それでどうにかメドがついて制作に進むことができました」
いつか撮りたい長編を撮るために新たに短編、中編に直したという感覚がある
長編から短編となりどのように変化したのだろうか?
「ドライブに出る人たちの物語というのは変わっていません。
ただ、そのフォーマットは変わっていないんですけど、内容自体は長編から短編になってガラッと実は変わっています。
主要人物として登場人物は5人ですが、ダイゴが思いを寄せる沼口さんは、短編にするにあたって新たに生まれた人物になります。
そのほかの4人はほぼ一緒になのですが、沼口さんの登場でかなり大幅に内容が変わることになりました。
だから、長編をそのまま短くしたというわけではない。
いつか撮りたい長編を撮るために新たに短編、中編に直したという感覚が僕の中にはあります」
若者の中にひとりおじさんが混じってしまったときの違和感がアイデアに
その物語は、実際に自分が体験したことがベースにあるという。
「一番最初に考えたのは、ある若者のダブルデートの中に、なぜか一人だけおじさんが交じって一緒に過ごさなくてはいけないといったアイデアでした。
なんで、こんなことを思いついたのかというと、実体験で。
あるとき、若い男女4人と、僕との5人で映画に行くことになったんです。
行く前は、まあ全員が知った顔で友人関係でもあるので、あまり意識していなかった。
ただ、実際に行ってみると、若い子たちの中に、僕のことですけど1人ちょっと年上の男が混じっている。
なんか場違いというか、周囲から『あのおじさんこなくていいのに、若い連中についてきちゃってるよ』みたいにみられていないかと。
ちょっと気にしすぎだと思うんですけど(苦笑)、なんかすごくそういう違和感を抱いたんです。
なんかこの微妙な立場をうまく使ったらおもしろい話ができるのではないかと思ったのがはじまりでした。今回の話と似ても似つかないんですけど(笑)」
(※第二回に続く)
「よく晴れた日のこと」
監督・脚本:伊藤 智之
出演:師岡広明、菅原雪、田中爽一郎、大田路、今井慶
池袋シネマ・ロサにて9月30日(金)まで公開、
大阪・シアターセブンにて10月8日(土)~10日(月祝)、
愛知・刈谷日劇(愛知)にて10月28日(金)〜11月3日(木・祝) 公開
公式サイト https://one-sunny-day.themedia.jp/
写真はすべて(C) 2021 TOMMY PRODUCTION