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休眠して越冬する「G」対策 大掃除の時にやっておきたいポイントとは

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:アフロ)

「冬に虫なんて居ない」と思うのはちょっと待ってください。見かけることはほとんどなくなりますが、冬でもゴキブリ(以下G)は生きています。家の中でよく見かける黒っぽいGは、冬の間は休眠という形をとって越冬しています。休眠中は夏のように活動はせず、食べることもなく成長もしません。寒さに弱いと思われるGですが、死滅するわけではないのです。今回は、年末の大掃除を利用してG対策を徹底するためのポイントをご紹介します。

ダンボールは早めに捨てましょう

一般家庭に出てくる「クロG」は幼虫や卵で越冬することが多く、卵は通常、冬を越し春に孵化(ふか)するのですが、暖房や加湿が効いた室内では、冬でも孵化してしまうことがあります。卵を産み付けやすいのは「暗くて狭くて暖かい」場所。キッチンのシンク下や家電の裏側などがありますが、意外と盲点なのはダンボール箱です。今年の1月、友人から「家の中に小さなGが居るんだけど、なぜ冬にも居るの? どうしたらいい?」と相談を受けたことがあります。聞けば、宅配荷物の外箱をそのまま保管していたとのこと。Gは保温性・保湿性が高く隠れ場の多いダンボールを好みます。Gに快適な棲みかを提供する前に、ダンボールは早めに処分しましょう。

もし、卵を見つけたら?

家の中に出るGの卵は、大きさ約1cm×5mmで黒褐色。一瞬、小豆に見えることもあります。卵は硬い殻で覆われ、卵鞘(らんしょう)と呼ばれています。その鞘の中には平均24個の卵がつまっています。卵は鞘で保護されているので、殺虫剤の効果が期待できません。見つけた時は、ゴム手袋などをして、ビニール袋に入れて潰すのがいいのですが、潰すことに抵抗がある場合は、ビニール袋を2重にして焼却ゴミとして出しましょう。卵があった場所は、アルコールスプレーなどで除菌しましょう。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:アフロ

ローチサインを見つけた時は?

ローチサインとは、Gの排泄物が付着した茶色いシミです。ローチサインとともに、黒や茶色の直径1~3mm程度のコロコロしたものが落ちている場合もあるかもしれません。これはGのフンです。これらは、Gの潜み場所や通り道である、キッチンの引き出しやシンクの下や食器棚、冷蔵庫周辺で見つかることが多いです。フンには「集合フェロモン」と呼ばれる物質が含まれていて、放置していると、Gが集まって来てしまうので、もし見つけたら掃除をして取り除きアルコール消毒をしておくことが重要です。

屋外のベランダも要注意

Gは外で越冬することが多いです。ベランダや庭などの植木鉢の下や何かの隙間に潜んでいたりします。また、エアコンのドレンパイプの中に侵入してくるものもいます。こちらも実際にあったことですが、エアコンをオンにした時、送風口からGが飛び出してきてパニックになったという話を知り合いから聞きました。こんな悲惨な目に遭わないためにも、ドレンパイプ付近は、念入りに確認した方がいいでしょう。もし、Gがいても、外は寒いので、動きは鈍いです。スプレー剤で簡単に仕留めることができると思います。また、予防策として、ドレンパイプにネットをしておくことや、待ち伏せ効果のあるスプレーをかけておくことも有効です。

春になり、休眠から目覚めると餌を求めて家屋内に侵入してくるので、その前に家の周囲で越冬しないよう確認しておきましょう。確認できなかった場合は、春になる直前に市販の毒餌剤などを置くことで侵入を防げて有効です。

休眠しないGもいます

上記では、休眠して越冬するGについて紹介しました。ただ、休眠しないGもいるので紹介しておきます。「ワモンG」という温暖な場所に生息している種類と、飲食店やビルに生息する「チャバネG」です。

ワモンの成虫は、大きさ3~4.5cmと大型、赤みがかった褐色で、背中部分に環(わ)の紋様があることから「ワモン」という名前が付いています。日本では沖縄など暖かい地域に本来は生息しているのですが、近年、東京や大阪の都市部で増加している傾向があり、冬でも暖かい環境であれば活動します。

チャバネの成虫は、大きさ1~1.5cmと小さく、黄薄茶色で、背中の上部(胸部背面)には2本の黒い縦線があります。本来は、冷暖房が完備されたビルや飲食店厨房に生息していますが、冬期でも暖かいマンションなど常に20度以上あるところでは定着する可能性はあります。実際、飲食店が入っているマンションで、住居の中にチャバネが入ってきて棲みついて困っているというケースがありました。このようなGが、一般家庭に棲みついてしまう日が来るかもしれません。

最後に…

Gは自分のお腹と背中がくっつくところが大好きです。成虫だと7mm~1cmくらいの隙間を好んで潜んでいます。家の中は、家具や電化製品でそんな隙間がたくさんあります。年末には大きな家具や家電を動かして掃除することもあるでしょう。その時は、餌となるゴミやほこり、食べかすなどをきちんと除去して、来年暖かくなった時にGが外から入ってきても棲みつくことがないように整えておきたいですね。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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