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ドローに終わったIBF暫定ウエルター級王座決定戦

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 3位のセルゲイ・リピネッツ(31)と、5位のカスティオ・クレイトン(33)との間で争われたIBF暫定ウエルター級王座決定戦は、一人のジャッジが 115-113でクレイトンの勝利を唱えたものの、残る二人は共に114-114と採点し、ドローに終わった。

 一昨日記したように、試合4日前に対戦相手の変更を告げられたリピネッツは、精彩を欠いた。https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20201025-00204252/

 本来、リピネッツと戦う筈だったクドラティーリョ・アブドカクロフ(27)は、17戦全勝9KO。リピネッツは、ずっとアブドカクロフを想定して準備して来た。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
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 急遽、拳を交えることとなったクレイトンはジャブを武器としていた。間断なくジャブを見舞い、ロシア人ファイターのお株を奪う。リピネッツはボディを攻め、自分のペースを掴もうとしたが、クレイトンの動きに戸惑っていたようだ。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
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 「俺が勝ったと思った…とはいえ、クレイトンはいい選手だ。予想以上に強かった。1年以上のブランクが響いたかな。トップ選手と戦う前に2戦くらいしてリズムを取り戻さないと。が、クレイトンとの再戦はいつでもやってやる」

 リピネッツはそう話し、唇を噛んだ。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
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 一方のクレイトンは終盤の3ラウンド、明確にポイントを稼ぎ、

 「僕が単なるカナダの一選手ではないことを世界に示せたと思う。自分の良さを出せた」

 と試合後に語った。

 「ジャッジに文句を言うつもりはないが、自分の勝利は間違いない。リピネッツは前に出てきたが、手が出なかったよね。早い段階でプレッシャーをかけるべきだった。でも、彼の強さも感じたんだ。だから、耐えながらチャンスを窺っていた。もっと速いコンビネーションを出せばよかったな。全体的には賢く戦えたと思うんだけどね。

 今日のパフォーマンスで、少し、尊敬を集めたかな。もし、リピネッツが暫定王座を懸けてリマッチを望むなら、我々はもう一度戦うべきだ」

 そう、クレイトンは結んだ。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
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 新型コロナウィルス感染拡大は、ボクシング界にも大きな被害をもたらしている。

 リピネッツの場合は調整に問題があったのか、直前の対戦相手変更に対応できなかったのか、あるいはクレイトンと噛み合わなかったのか。

 いずれにしても評価を落としたのはリピネッツで、株を上げたのはクレイトンと言えそうだ。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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