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【NHL】東京でオリンピックとパラリンピックが幕を閉じた2020年秋! シアトルに新チームが誕生!!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
新キーアリーナの完成予想図(Courtesy:@seattleinformer)

 今年も残り少なくなったこの時期は、一年を締めくくるにあたり会議やミーティングなどが行われる機会も多いようです。

 レギュラーシーズンが序盤から中盤に差し掛かるNHLでも、各チームのGMらが一堂に会して「代表者会議」が毎年行われています。

 代表者会議で議論や検討されるテーマは、リーグのフォーマットやルールの見直しに、サラリーキャップ(チーム年俸総額上限)の改定など、多岐にわたりますが、先週(現地時間)開催された代表者会議で最も注目されたのが、「新たなホームタウンの誕生」でした。

▼シアトルに新チーム誕生へ

 一部のメディアでは、今季のホームゲームの平均観客動員数が31チーム中「30位」と低迷しているカロライナハリケーンズが、ダラスをベースとする起業家に買収されたのを機に、かつてのホームタウンのハートフォード(コネチカット州)などアメリカの東海岸沿いの都市への移転の可能性が論じられていましたが、代表者会議では本格的な議論に至らず。

 対照的に大きな動きが見られたのが、シアトル(ワシントン州)をホームタウンとする新チームの設立です。

▼エドモントンやアリゾナが移転の噂も

 シアトルについては、近年だけに限っても、エドモントンオイラーズやアリゾナ(当時はフェニックス)コヨーテスの移転が報じられたものの、いずれも実現に至らず。

 

 それでもNHLのゲーリー・ベットマンコミッショナーは、当時のシアトル市民の熱意などを評価して、有力なホームタウン候補として青写真を描いていた様子でしたが、チーム誘致への動きが一本化できなかったことから、NHLチーム招致への熱意は、だんだんトーンダウンしてしまいました。

▼ホームアリーナのプラン

 そのまま立ち消えになってしまうかと思われたシアトルへのNHLチーム招致への動きは、違った形から高まり始めました。

 それは「新アリーナの建設計画」です。

 シアトル市議会は、今年の4月まで新アリーナの建築計画の公募を実施。

 すると、投資家のクリス・ハンセンらが率いるグループが、公的資金を用いずに、最新の設備を揃えた2万人程度の観客を収容できる多目的アリーナを建設するプランを掲げ、MLBのマリナーズがホームゲームを行うセーフコフィールドや、NFLのシーホークスの本拠地のセンチュリーリンクフィールドがあるソド地区に、アリーナを新設するプランを提案。

 対して、ロサンゼルスを拠点とするオークビューグループは、2008年春までNBAのスーパーソニックスが、ホームゲームを行っていたキーアリーナの改修プランを提出しました。

▼ベガスに続く32番目のチーム誕生へ

 エド・マレー市長(当時)は、6月にオークビューグループのキーアリーナ改修プランを採用すると発表。

 さらに、今月に入って市議会の承認も得て、シアトルのチーム誘致への動きが、ようやく一本化したのです。

ホッケージャージを掲げるジェニー・ダーカン市長(右側の女性/Courtesy:@GaryKIRO7)
ホッケージャージを掲げるジェニー・ダーカン市長(右側の女性/Courtesy:@GaryKIRO7)

 NHLでは今季からラスベガスをホームタウンとするベガスゴールデンナイツが加盟。

 実に17季ぶりとなる新規加盟チームが加わり、1917年のリーグ創設以来最も多い31チームが、スタンレーカップ(=NHLの優勝トロフィー)を争っていますが、シアトルに新チームが誕生すれば、「32チーム」による戦いが繰り広げられます。

▼ベガスよりも高いハードル

 NHLのゲーリー・ベットマンコミッショナーは、代表者会議を終えた後、メディアとの会見に臨みました。

 主な内容は、、、

<1>新規加盟審査や手続きに際する費用(エクスパンションフィー)として、6億5000万USドル(およそ738億円)をNHLに納めること。

<2>審査が完了し新規加盟が認められた際は、3季後(2020-21シーズン)からの参戦となる。

<3>現時点で新規加盟審査の対象はシアトルだけである。

 この中で、大きな驚きを与えたのが<1>に記したエクスパンションフィー。

 「6億5000万USドル」という金額は、今季から加盟したベガスが支払った「5億USドル」を大きく上回るからです。

▼カナダの反応は好対照

 このような経緯を経て、32番目の新チームがシアトルに誕生する見通しとなり、シーズンチケットやアリーナ内広告の販売などをスタートする予定。

 国境を挟むものの直線距離で200キロ程度にホームタウンを構えるバンクーバーカナックスは、近隣の都市にチームが誕生することを前向きに受け止め、アイスホッケー運営部門の代表職を担うトレバー・リンデン(元バンクーバーFW)は、「良きライバルになるだろう」と歓迎しています

▼ケベックシティはお手上げ!?

 ところが、同じカナダでも、かねてからNHLチームの復活を求め続けているケベックシティ(ケベック州)にとっては、頭の痛いところ。

 なぜなら、収入はカナダドルであるのに対し、NHL選手へのサラリーの支払いはUSドルとなっていることから、「1USドル=およそ1.3カナダドル」となっている現在のレートが、チーム招致へ向けた大きな壁となってしまうのです。

 アトランタスラッシャーズ(アメリカ・ジョージア州)が、ウィニペグ(カナダ・マニトバ州)へホームタウンを移し、新生・ウィニペグジェッツとして開幕戦を迎えた2011年10月は、「1USドル=およそ1.02カナダドル」前後というレートが強い味方になっていました。

 しかし近年は、アメリカ経済も活況を呈しているとあって、レートが好転する見通しは立ちません。

 NHLチームを承知するのに先駆けて、ケベックシティは18000人以上を収容するビデオトロンセンターを新設したものの、現時点ではお手上げの状態だと言えそうです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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