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【NHL&NBA】キーアリーナ改修へ! シアトルにNHLチーム誕生? NBAチーム復活か?<前編>

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
ゲイリー・ペイトン(右)らがファンを沸かせていたシアトルスーパーソニックス(写真:ロイター/アフロ)

先月29日(現地時間)からNHLのスタンレーカップ ファイナルがスタートしたのに続いて、今月1日からは NBAのファイナルも始まり、北米のスポーツアリーナは歓声に包まれています。

その一方で、試合が行われていないのに、多くの注目を集めているアリーナがあるのを、ご存知ですか? 

それは、シアトル(アメリカ・ワシントン州)にあるキーアリーナです。

▼9季前までNBAチームのホームコート

ご存知の方も多いでしょうが、キーアリーナは、9季前まで NBAシアトルスーパーソニックスが試合を戦うホームコートでした。

ところが、2008年秋から始まるシーズンを前に、チームはシアトルからオクラホマシティ(オクラホマ州)へ移転。オクラホマシティサンダーの名に改まり、現在に至っています。

▼現在は渡嘉敷来夢のホームコート

NBAチームが移転してからも、キーアリーナでは、WNBA(女子バスケットボール)のシアトル ストームがホームゲームを戦い、一昨季から在籍している日本代表の渡嘉敷来夢(とかしき らむ)がプレー。

しかし、地元の市民や企業などからは、MLBの シアトル マリナーズがオフシーズンの間も、観戦できるメジャースポーツチームを望む声が、聞かれ続けている模様です。

▼NHLチームがエドモントンからシアトルへ

そんな状況に目を付けたのが、NHLのエドモントン オイラーズでした。

そこで、NHLの動きを中心に、シアトル移転への動きを振り返りましょう。

エドモントンと言えば、現役時代につけていた背番号「99」が、全てのチームの永久欠番になっている ウェイン・グレツキーを筆頭に名選手が揃い、1980年代に二度の連覇を飾るなどした名門チーム。

その後、低迷した時期もありましたが、ホームゲームは常に満員となっていました。

とはいえ、1974年にオープンしたホームアリーナのレクソールプレイスが、築40年に差し掛かるとあって、オーナーのダリル・ケイツ(苗字の表記は多くのカナダメディアの紹介に基づく)らが、総額280億カナダドル(およそ360億円=当時のレート)を投じて新アリーナの建設を発表。

最新設備を揃え、収容人員も増やして、市内中心部に新たなアリーナができるとあって、当初はエドモントン市側も歓迎の意向でした。

ところが、ケイツ オーナーが、公的資金の追加投入を市に要求するなどしたことから、両者の足並みが乱れ始めました。

その後も歩み寄りが見られない期間が続くと、ケイツ オーナーはシアトルに足を運び、移転の可能性を、ほのめかしたのです。

▼シアトルは大歓迎

時同じくしてシアトルでは、投資家のクリス・ハンセンが、築50年を数えるキーアリーナに代わる新しいアリーナをダウンタウンエリアに建設し、NBAとNHLチームの招致を目指すプランを提案。

市民の間からも、これを歓迎する声が広まり、エドモントンからのNHLチーム移転への気運が高まりました。

▼エドモントンが方針転換

このような流れを受けて、エドモントンは方針転換。

かつてNHLのトップスターのグレツキーが、ロサンゼルス キングスへトレードされた時も、「このトレードを許してしまって良いのか!?」と市議会で激しい議論が交わされたほどのホッケータウンとあって、NHLのチームを失うことは絶対に許されません。

それだけに、エドモントン市議会は新アリーナ建設を支援する決定を下し、今季から市内中心部に誕生したロジャーズアリーナで、ホームゲームを戦っています。

▼コミッショナーはシアトルに魅力

エドモントンの移転の可能性がなくなってからも、NHLのゲーリー・ベットマン コミッショナーは、シアトルを新たなホームタウンにするプランに対して積極的でした。

というのも、エドモントンからの移転話が明るみになった直後に、シアトル市長が自らマンハッタンまで足を運び、NHL本部に要望書や市民から集めた署名を提出するなど、熱心な招致活動が見られたからです。

その一方で、2009年にはチームの運営会社が破産を申請し、財政問題を抱えていたアリゾナ(当時はフェニックス)コヨーテスを、NHLはシアトルに移転させる可能性も考慮していた様子。

ところが受け入れ側となるはずのシアトルも、ダウンタウンエリアにチームを招きたいプランや、郊外に新たなアリーナを設けて開発につなげるプランなど、複数の意見が平行線のまま一本化できず断念・・・。

幸いにして、アリゾナのホームアリーナのリース契約をはじめとする新たな運営プランを提示したグループが、アリーナの所有権を持つグレンデール市(アリゾナ州)の議会に認められ、シアトルへの移転は実現に至らず、今季もグレンデールをホームタウンとして戦いました。

▼アンバランスなカンファレンスに

アリゾナの騒動は丸く収まったものの、ベットマンコミッショナーの中には、その後も「シアトル」を新たなホームタウンにする考えを抱いているのは、明らかでした。

NHLでは、2011年5月末に、アトランタ スラッシャーズ(ジョージア州)の運営権を、カナダ・マニトバ州を本拠とする企業が購入したことから、チームが移転。ウィニペグ ジェッツに生まれ変わりました。

しかし、アトランタがイースタン カンファレンスに所属していたことから、ウィニペグに移転したシーズンは、そのままイースタンに所属

翌年からは地理的な条件を考慮して、ウィニペグの所属カンファレンスをウエスタンへ変更しましたが、NBAではイースタンに所属するシカゴをはじめ、ナッシュビル、セントルイスといったウエスタンの中で、東に近いホームタウンのチームの所属カンファレンスを移すことなく、

イースタン → 「16チーム」ウエスタン → 「14チーム」

というアンバランスなカンファレンス構成に、あえて改めたのです。

「キーアリーナ改修へ! シアトルにNHLチーム誕生? NBAチーム復活か?<後編>」に続きます。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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