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ロッテ入団!NPB復帰の夢叶った小窪哲也はなぜ、逆転Vの切り札に選ばれたのか

田尻耕太郎スポーツライター
火の国サラマンダーズでの小窪内野手。ロッテ逆転Vの切り札へ(筆者撮影)

 プロ野球の今季新戦力獲得の期限最終日となった8月31日、九州アジアリーグ「火の国サラマンダーズ」でNPB復帰を目指してプレーしていた小窪哲也内野手(36)の千葉ロッテマリーンズ入りが電撃発表された。

 ロッテは現在パ・リーグ2位で、首位オリックスに2.5差の好位置につけている。

 小窪は内野のどこでも守れるユーティリティプレーヤーだ。ロッテ内野陣は一塁手・レアードと二塁手・中村奨吾は固定されているが、三塁手と遊撃手は安定しておらず、藤岡裕大と「プラス1人」というのが現況だ。また、主力のバックアップ要員も潤沢ではなく、内野の層を厚くしたいチーム事情と合致した。

広島優勝時の選手会長

 その中でも安田尚憲や山口航輝といった楽しみな若手有望株はいるが、終盤戦における経験不足は否めないところ。となれば、昨年まで広島カープで13年間プレーし、さらに2016年と2017年の広島のセ・リーグ連覇時には選手会長を務めてまとめ役として奮闘した経験を持つ小窪のリーダーシップも、ロッテとしては優勝争いに向けて大きなプラスに働くはずだ。

 小窪は昨オフ、広島球団から指導者のオファーがあったものの現役続行の思いを捨てきれず、話し合いの末に小窪の意思を尊重する形で自由契約となり退団。ただ、移籍先がなかなか決まらず、年が明けても新天地でのプレーを信じてひたすら練習を継続していた。

 そんな今年5月、九州アジアリーグ・火の国サラマンダーズの神田康範球団社長が小窪の熱意を報道で知りオファー。トントン拍子に話がまとまった。6月から約3カ月間、火の国の一員としてプレーした。

「野球ができる喜び」火の国での成績は?

堅実な打撃は十分健在(筆者撮影)
堅実な打撃は十分健在(筆者撮影)

 孤独と不安とずっと闘っていた男は強かった。野球ができる喜びを目一杯グラウンドで表現し、ブランクを感じさせない格の違いを見せつけていた。

 火の国では出場18試合で57打数24安打、打率.421と圧倒し、1本塁打、12打点、出塁率.500も残した。

 また、若い選手ばかりのチームで、同僚たちとも積極的に交流を図った。火の国のレギュラー二塁手の高山凌は「技術的なアドバイスはもちろんですが、長い試合などで集中力を切らさないための工夫をジョーク交じりで教えてくれたこともありました。ある日の試合ではマウンドに集まったタイミングで『敬語禁止な』とか言って笑わせてくれたり。そういう遊び心もプロで長いシーズンを戦い、いろいろな経験をしてきたからこそ。そういう方から学ぶことは本当に多い」と話していた。

 ところで、ロッテといえば、火の国サラマンダーズを率いる細川亨監督が昨年まで選手として所属していた。そしてロッテ・井口資仁監督は、小窪にとって青山学院大学の先輩になる。

 そんな縁にも導かれて再びNPBの舞台に立つ小窪。ロッテ逆転優勝の使者となる。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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