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どうして洗濯日和の日ばかり黄砂が飛ぶの?実は気のせいじゃなかったワケを気象予報士が解説

植松愛実気象予報士・防災士・野菜ソムリエ
26日9時の気象衛星画像(気象庁)。黄色の円で示した煙ったように見える部分が黄砂

数日おきに雨が降って、意外と洗濯日和が少ない春。

そんな中、ようやく晴れて気温が上がって洗濯物がよく乾きそうな日に限って、ニュースで黄砂飛来が報じられる…そんな気がしている人も多いのでは?

実はそれ、気のせいではありません。

春の洗濯日和は黄砂が飛びやすい

26日(左)15時と(右)21時の黄砂予想(気象庁HPより)。北陸・関東北部・東北・北海道に黄砂が飛来し、特に東北は濃度が高くなる見通し。
26日(左)15時と(右)21時の黄砂予想(気象庁HPより)。北陸・関東北部・東北・北海道に黄砂が飛来し、特に東北は濃度が高くなる見通し。

春にカラッと晴れて洗濯日和になるのは、大陸から移動性高気圧がやってくる日です。
ポイントは、「大陸から」という点。
晴れるだけなら南から太平洋高気圧に覆われてもいいのですが、それだと湿気が多くムシムシした晴れになるので、カラッと晴れるには大陸育ちの高気圧が必要です。

ところが、春に大陸からやってくる高気圧は、わりと高い確率で黄砂を引き連れてきます。

砂漠の砂が「落ちずに」やってくる

黄砂が来る前日、25日9時の気象衛星画像(気象庁HPを元に作成)。黄色の円で示した黄砂が西から進んでくるのがわかる。トップ画像(26日9時)と比べると、1日で約1000km移動している。
黄砂が来る前日、25日9時の気象衛星画像(気象庁HPを元に作成)。黄色の円で示した黄砂が西から進んでくるのがわかる。トップ画像(26日9時)と比べると、1日で約1000km移動している。

黄砂は、大陸にあるタクラマカン砂漠やゴビ砂漠といった砂漠で、春に強まる上昇気流によって空高く舞い上げられた砂が、偏西風という上空の強い西風に乗って運ばれてくる現象です。

少し専門的な話にはなりますが、日本くらいの中緯度地域では、春は偏西風とともに低気圧・高気圧が交互にやってきます。

そのため、厳密には低気圧も高気圧も砂漠の砂を伴って進むのですが、日本にたどり着くまで砂が「落ちない」のは高気圧だけです。
というのも、低気圧の場合は道すがら雨を降らせるので、砂漠から伴ってきた砂は途中で地面に落ちます。
一方、高気圧の場合は(よほど大きくて重い砂粒以外は)落ちることなく日本までやってきてしまいます。そのため、洗濯日和と黄砂飛来は必然的に重なるのです。

春の「洗濯日和」は実は洗濯日和じゃない

晴れた日には洗濯物を外に干したくなりますが、実は春の晴れはかなり「汚れて」います。

たとえ黄砂が飛ばなくても、大型連休ごろまでは花粉が飛びやすいですし、土ぼこりも舞い上がりやすく、さらにはPM2.5の濃度も高くなりがちです(黄砂・花粉・PM2.5の違いについては関連記事を参照「黄砂が飛ぶ日にやっていけないことは?花粉やPM2.5とは何が違う??」)。

春霞と言えば聞こえはいいですが、黄砂やPM2.5は大気汚染物質が付着している場合もあり、できれば洗濯物につけたくないところ。
春はたとえ晴れていても、「洗濯日和」とは言えなさそうです。

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気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

気象予報士・防災士として講演・執筆を行う傍ら、野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターとして出張料理人(一般家庭での作り置き代行)としても活動。NHK・民放各局で気象キャスターを歴任し、報道の現場や防災、気候変動・地球温暖化に関する最新情報にも詳しい。著書に『天気予報活用ハンドブック~四季から読み解く気象災害』(竹下愛実名義・共著)がある。

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