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超大型弾頭を装着する戦術弾道ミサイルを発射? また食い違った南北の発表!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
7月1日に閉幕した労働党中央委員会総会で演説する金正恩総書記(朝鮮中央通信から)

 韓国合同参謀本部は昨日(7月1日)、黄海南道長淵一帯から発射された北朝鮮のミサイル2発についていずれも北朝鮮版「イスカンデル」と呼ばれている戦術弾道ミサイル「火星砲―11」で、午前5時5分頃に発射された1発目は600km飛行し、日本海に面した清津沖に落下し、10分後の午前5時15分に発射された2発目は飛距離が約120kmと短かったことから「発射に失敗し、平壌近郊に落ちた可能性が大きい」と発表していた。

 韓国のメディアも合同参謀本部の発表を受け、失敗したとされる2発目を取り上げ、「平壌近郊に落下したようだ」と大々的に伝えていた。

 正確に言うと、合同参謀本部は2発目については落下地点を確認できなかった。レーダーから消えたためである。ただ、1発目と同じ北東方向に向かうものと推定していたところ、不正常に飛行し、東側に飛んで行ったことから「途中で爆発し、落下した」と分析したようだ。

 ところが、北朝鮮は今朝、戦術弾道ミサイル「火星砲―11」の改良型「火星砲―11タ―4.5」の試射を「成功裏に行った」と発表していた。

 北朝鮮の発表によると、この新型ミサイルは4.5トン級の超大型弾頭を装着する戦術弾道ミサイルで、試射には重量模擬弾頭を装着したミサイルが使われ、「最大射程500kmと最小射程90kmに対して飛行安定性と命中正確性を実証することに目的を置いて」行われたようだ。

 さらに、北朝鮮は今度は、この新型戦術弾道ミサイルの250km中等射程飛行特性と命中正確性、超大型弾頭爆発威力を実証するための試射を「7月中に行う」ことも明らかにしていた。

 韓国はミサイルの種類と飛距離についてはほぼ正確に探知したものの北朝鮮の発表が事実ならば試射の目的までは把握できなかったことになる。

 韓国と北朝鮮は6月26日に発射された弾道ミサイルについても北朝鮮が「多弾頭ミサイルの発射実験を行い、成功した」と発表したのに対して韓国は「固体燃料極超音速ミサイル『火星16ナ』の性能改良のための試射極超音速ミサイルの試射を行い、約250km飛行し、元山東側海上で空中爆発し、失敗した」と、真っ向食い違う発表を行っていた。

 北朝鮮はこの時は関連写真を3枚公開していたが、今回は写真を一枚も公開していない。

 中・大型核弾頭の生産も多弾頭ミサイル同様に北朝鮮が2021年1月の党第8回大会で打ち出した「国防発展5か年計画」の5大戦略兵器の一つである。

 なお、昨日閉幕した労働党中央委員会第8期第10回総会拡大会議で金正恩(キム・ジョンウン)総書記は報告(結語)を行い、軍事部門についても「人民軍と全ての共和国武装力の軍事・政治活動方向について明らかにした」(朝鮮中央通信)ようだが、その中身については報道されなかった。

(参考資料:北朝鮮が発射したミサイルは失敗したのか、成功したのか? 南北発表のズレは今に始まったことではない!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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