「飢えて汚物まみれ」子供たちを見る北朝鮮国民の絶望
現在放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」では、主人公で判事の寅子が、家庭裁判所の設立と戦争孤児の支援に奔走する姿が描かれた。1948年の厚生省(当時)の調査によると、戦争孤児の数は全国で12万3512人に達していた。
戦災で親と住む家を失ったケースもあれば、旧満州などの外地で親を亡くし、単身で引き揚げたケースなど、いずれも植民地支配や戦争に起因する。
一方、戦争状態ではない2024年の北朝鮮には「コチェビ」と呼ばれる子どもたちが存在する。
親が食べ物を求めて家を出ていったまま帰宅せず、事実上棄てられたケース、食いつなぐために家を売り払ったものの、それで得た現金ですら底をつきホームレスとなったケースなど、「コチェビ」となった要因はいずれも経済難と食糧不足だ。
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当局はコチェビを保護するどころか、積極的に排除しようとしている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、朝鮮労働党の清津(チョンジン)市浦港(ポハン)区域の南江一洞(ナムガンイルトン)の委員会は先月中旬、党清津市委員会から次のような指示を受けた。
「ゴミ捨て場に鍵をかけてコチェビどもが接近できないようにせよ」
北朝鮮では、5つから7つの人民班(20世帯から40世帯が所属)にひとの割合で、ゴミ捨て場が設置されており、管理は住民の中から選ばれた人が有給で行っている。そこに食べ物を求めてコチェビたちがやって来て、そのまま住み着いてしまうのだという。
清津市の党組織は、彼らに対する支援を行わず、追い出そうとするばかりだ。その理由も実に呆れたものだ。
「コチェビどもがゴミ捨て場に住み着く現象は、社会主義のイメージを乱す」
北朝鮮は外っ面を非常に気にする国だ。コチェビがゴミを漁り汚物にまみれて寝ている様子が海外に流出しようものなら、北朝鮮の対外イメージに悪影響を及ぼす。そこで排除してしまおうというものだ。
北朝鮮がコチェビに対して何もしていないわけではない。金正恩総書記の指示で、各地に「愛育院」などを孤児院を創設または改修し、コチェビを含めた孤児を収容するようにしたが、運営資金の調達は地元に丸投げされた。そのせいで環境は劣悪だ。
コチェビは元々、鉄道駅や市場周辺に多くいたが、農村動員期間にはあまり人がいないため、ゴミ捨て場に移動してきたという。近隣住民は彼らが汚物まみれになって横になっているのを見て、非常に気の毒がってはいるものの、生活が苦しく、助けの手を差し伸べられずにいる。
両江道(リャンガンド)の情報筋によると、現地でもゴミ捨て場に鍵がかけられるようになった。ゴミ捨て場の管理人は、毎日午前6時から8時、午後6時から8時まで鍵を開けてゴミが捨てられるようにする。それ以外の時間帯には鍵をかけて入れなくする。ちなみに管理人の月給は3万北朝鮮ウォン(約540円)だ。
そんなやり方に住民からは批判の声が上がっている。
「国はコチェビを救うどころか、飢えに直面した彼らをゴミ捨て場から追い出している」
ゴミ捨て場から追い出された彼らは、通りで物乞いをしている。中には道端に倒れているコチェビもいる。
「そんな彼らを見た住民はわが国(北朝鮮)の社会主義制度に絶望するだろう」(情報筋)
「社会主義のイメージ」を毀損しているのは、より弱い立場の人に助けの手を差し伸べず、追い立てることで見なかったことにしようとする、北朝鮮当局の方だろう。