韓国人の66%が「核保有」に「賛成」 政府と専門家らは「反対」!
韓国国内では北朝鮮とロシアがプーチン大統領の24年ぶりの訪朝を機に「包括的戦略パートーナシップ条約」を結んだことで安全保障を懸念する声が高まっている。
特にこの条約によりロシアが朝鮮半島有事の際に軍事介入する恐れがあることや第6条に「国家主権を守護し、安全と安全を保障する発展権を擁護するための政策と措置を相互支持する」ことが盛り込まれたことで北朝鮮の核とミサイル開発を容認するのではと、危惧する向きも多い。
こうした国民の憂慮を意識したのか、与党「国民の党」内では党の代表選に出馬している羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)議員(元院内総務)は「今はもう私たちも核武装をしなければいけない」との声を上げ、また対抗馬の韓東勲(ハン・ドンフン)前非常対策委員長も「核武装の潜在的力量を備えよう」と主張するなどこぞって核武装を容認する発言を行っている。
韓悳洙(ハン・ドクス)首相は「核武装論は考慮する段階ではないと考える」と政府の方針を明らかにしていたが、問題は世論の動向だ。
韓国政府の外郭団体である「統一研究院」が実施した国民の統一意識に関する世論調査が昨日(27日)公開されたが、国民の66%が核武装に賛成していた。
「核武装賛成」の理由としては何よりも北朝鮮が外交手段として核を保有しているだけで実際に使うことはないと受けとめている国民が31.3%しかないことだ。また、今後、北朝鮮の核放棄の可能性についても「経済制裁を強化するだけでは不可能」と、64.3%が悲観的に捉えていることにある。
調査ではまた、「国防のためには米軍の駐屯と核兵器の保有のどちらが望ましいか」との設問もあったが、「核兵器保有」が44.6%と、「米軍の駐屯」の40.6%を上回った。
今回の調査はプーチン大統領の訪朝2カ月前の4月18日から5月16日までの間に行われていたが、仮に今、実施すれば、核武装賛成はもっと増えていたかもしれない。
ちなみに昨年6月に実施された統一研究院の世論調査では、60.2%が核保有に賛成していた。今回はそれよりも6ポイント上回っていたことになる。
しかし、政府当局は核武装には与しておらず、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領も保守強硬派と言われているが、核武装については今は積極的ではない。
大統領候補時代の遊説(2021年9月)では「独自の核武装はNPT(核兵不拡散条約)に全面的に違反するので国際社会から孤立する可能性が高いので反対だ」と述べ、大統領就任100日目の記者会見(2022年8月17日)でも「NPT体制は恒久的な世界平和にとって非常に重要で必須前提である。いかなる状況になっても拡張抑制をさらに実効化させ、強化することが優先的な課題である」と、核開発には意欲をを示していなかった。
尹大統領の発言もあって2022年10月下旬に実施された世論調査会社の「メディアトマト」の調査では「核武装反対」(46.7%)が「賛成」(41.5%)を上回っていた。
しかし、それでも国民の間で核武装を求める声が沈静化しなかったため尹大統領は2023年1月11日に青瓦台迎賓館で開いた外交・国防報告会で「韓国が戦術核を配置するとか、自ら核を保有することもできる。そうなれば、我々の科学技術で早い時期に我々も核兵器を持つことができる」と、核開発の余地を残す発言をせざるを得なかった。但し、この時も「現実には可能な手段を選択することが大事である」と、早急な核保有には釘を刺していた。
昨年上半期に行われた3度の世論調査では「韓国も独自に核兵器を開発すべき」との声が64~76%も占め、また、国民の半数以上が米国に韓国への戦術核の配備を求めていたが、今年1月から3月まで米国際戦略問題研究所(CSIS)が韓国の元政府高官、研究者や学者ら戦略問題専門家ら1000人を対象に行った調査では「核保有支持」は34%にとどまっていた。