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早稲田大学。選手権決勝行きも「反省」するのはなぜ?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
会見する佐藤主将(左)と大田尾監督

 ラグビーの大学選手権の準決勝2試合が1月2日、東京・国立競技場であり、4年連続13回目の優勝を狙う帝京大が明大を34―26で、5季ぶり17度目の日本一を目指す早大が京産大を31―19でそれぞれ下した。

 早大は昨季の準々決勝で28―65と大敗した京産大に勝利も、26点リードで迎えた後半に追い上げられる展開。フッカーの佐藤健次主将は満足していなかった。

 秋の直接対決で48―17と下した帝京大とのファイナル(1月13日/東京・秩父宮ラグビー場)に際し、気を引き締めるべきだと述べた。試合後、大田尾竜彦監督とともに会見した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

佐藤

「勝ててよかったというのが一番です。去年4年生が負けて引退して、京産大にリベンジすることをひとつのターゲットにしていたので。ただ、僕自身、最後までグラウンドに立てなかったですし、最後に攻められて、少し守りの状態に入ってしまったというか…。攻めるマインドが少し薄れてしまったのが、受けた原因だと思っています。10番(司令塔のスタンドオフ)とコミュニケーションを取る、どんなプレーを選択するか(を判断する)…ということを、磨いていかないといけないと感じました」

——後半32分での交代を受け、「最後までグラウンドに立てなかった」という言葉がありました。大田尾監督の意図は。

大田尾

「きょうの試合も大事ですが、決勝のことも考えた。また、リザーブの選手のパフォーマンスも見たいという意味を含め、健次は約70分。(リードしていたため)もっと早く代えてもよかったんですが、彼は精神的な支柱でもありますし、『あそこまで引っ張った』というのが正しい表現です」

——そんな事情があったとしても、佐藤選手は最後までグラウンドに立ちたかったと考えているのですね。

佐藤

「最後まで立ちたかった、というのもありますが、(退く間際の)最後の60~70分くらいまで自分はほぼ何もできなかった。チームがしんどい時に流れを変えるようなプレーを、できるチャンスがあったのにできなかった。反省しなきゃいけない点が多いです。まだ決勝戦があるので、きょうのビデオを見て反省し、修正して頑張りたいです」

——決勝で80分間よいプレーをするために、どんな準備をしたいですか。

佐藤

「まずリカバリーが凄く大事。アクティブリカバリーのようなことをしっかりする。あとは、練習をもっとゲームライクに。今週もすごくいい準備ができていたんですけど、準決勝、決勝になると相手の集中力がいままでと全然違いますし、(当日までに)もっとゲームライクな練習をしていかなきゃいけないです。コンタクトの強度だけではなく、頭の整理、ランニングの強度も調整してやれればいいかなと思います」

 話を進めるうち、佐藤はすべての経験を養分にする気質を垣間見せた。

——昨季敗れた京産大を撃破。防御が改善されていました。

佐藤

「相手に強いランナーがいるというのは前々からわかっていて、その選手に弾かれても『いいからタックルに行こう』と話していました。弾かれたシーンでも全員が内側(接点の近く)からタックルに入れた。(タックラーを)ひとりにしなかったのがよかったと思います。

 今回のゲームテーマは『リゲインプライド』。プライドを取り戻す。

 今年はいい感じに進んでいても(加盟する関東大学対抗戦Aで優勝)、心のどこかで京産大に『やり返したい』という気持ちがあった。そのチャンスが準決勝で回ってきた。そこで、『プライドを取り返そう』と話してきました。それはセットプレー、ディフェンスで、です。

 きょう勝てたのは、去年の4年生がいたからだと思っています。去年の4年生がいなかったら自分たちはここまで成長できていないですし、僕自身もチームを引っ張れるようなプレーヤーにはなっていない。今年だけの勝利ではなく、去年の4年生のおかげできょうの勝利がある。きょう出ていた部員、1週間準備してくれて応援してくれた部員にもそうですが、まず去年の4年生に感謝したいです」

——今回のスクラムについて。京産大は、右プロップの肩を前方に張り出す珍しい組み方をしています。早大は優勢に運ぶシーンが多かったですが、どんな対策をしていましたか。

「京産大は3番(右プロップ)のバインドが特殊。それに合わせて、勝矢紘史、清水健伸、前田麟太朗という3選手(最前列の控え組)が——明日試合にもかかわらず(3日に部内マッチ実施予定)——その組み方で練習してくれていました。たぶん、それをしていなかったら(当日は)焦っていて、勝てていなかった。その3選手がゲームライクで、練習で(主力組が)押される回数も多かったです。それがいい経験となって、きょう、押せた。自分たちのおかげというより、あの3人のおかげなのかなと。

 あとは、近大の稲葉(巧)君と試合ができたのもいい感触になりました(昨年12月21日の準々決勝=秩父宮で近大に53—10で勝利)。稲葉君は本当に強くて、それによって関西の組み方や強さを体感できた」

 対する帝京大は、何度もピンチをしのいでファイナリストとなった。

 青木恵斗主将は、対戦カードが決まる前に「80分間ファイトし続けた結果、勝つことができた。ここまで来たら実力はどこも一緒。どこまで勝ちたいと貪欲になれるかどうか(が肝)。ひとりひとりが全力を出すことが日本一に繋がる」と話した。

 佐藤はこうだ。

——帝京大には夏の練習試合を皮切りに2連勝中ですが。

「今年の過去2戦の勝負は関係ないと思っている。向こうは4年連続での決勝。戦い方、雰囲気に関しては向こうが慣れている。自分たちはチャレンジ精神を持って、ディフェンスでもアタックし続けるマインドを持つ。自分たちがやってきたことをやれば絶対に勝てる。自信を持って、楽しんで頑張りたいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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