6月に入って羽田空港に人が戻ってきた。国内線の機内サービスも紙パックのお茶など新しい形に
全国すべての緊急事態宣言が解除されたのが5月25日(月)。徐々に国内線各社に人が戻り始めているが、当初は5月末まで緊急事態宣言が続くことを想定していたこともあり、企業も5月末までの出張禁止のケースも多かったが、6月1日(月)以降、羽田空港の国内線チェックインカウンターにはワイシャツ姿のビジネスパーソンが多く見られるようになった。
GW中も含めて緊急事態宣言中の羽田空港は閑散としていた
筆者は、3月から定期的に羽田空港の第1ターミナル(JAL、スカイマーク、スターフライヤーなど)、第2ターミナル(ANA、AIRDO、ソラシドエアなど)のチェックインカウンターを取材していたが、4月7日の緊急事態宣言の発令が決まってからは、空港職員や航空会社関係者以外の人がほとんど見られない状況が続いた。本来であれば多くの人で溢れるゴールデンウィーク初日の4月29日も閑散としていた。
5月は、4月以上に羽田空港を発着するANA、JAL、スカイマーク、AIRDO、ソラシドエア、スターフライヤーなどでは運休便を増やした結果、国内線全体でANAは約15%、JALは約30%の運航率に留まった。加えて機材も小型化したことにより、提供座席数は更に減ることになったが、それでも空席が目立ち、関係者によると1便あたり10人前後の便もあったが、30人~50人程度の便が多かったようだ。
空港に明らかに人が戻ってきた。平日は出張者の姿が目立つ
筆者が羽田空港で取材をしていた限りでは、4月中旬から5月中旬にかけての1ヶ月が顕著に少なかった。4月17日より羽田空港では国内線の保安検査場を通過する前にサーモグラフィーによる体温チェックが開始され、その日にも取材をしていたが、取材をしていても利用者があまりにも少なく、サーモグラフィーの前を通過する乗客がわずかであったが、6月4日(木)に同様の取材をした際には、混雑することはないが、常に保安検査場に人が入っていく姿が見られた。
ANAは6月1日以降、約30%の運航率までに回復しているが(5月は約15%)、各便ごとの搭乗者数も増えている事は明らかであり、誰もいない閑散とした空港から、利用者の歩く姿が多く見られるようになるなど、ようやく空港としての機能を取り戻したという印象だ。
6月からマスク使用を要請。空港もソーシャルディスタンス
筆者は6月4日(木)に機内で撮影できる許可をいただき、ANA便で福岡へ向かった。筆者自身、2ヶ月以上ぶりの飛行機利用となった。近年、国内線では事前に座席指定を済ませておくことで、チケットに印字された2次元バーコードもしくはICカード機能が組み込まれているマイレージカード、もしくはモバイル搭乗券でチェックインカウンターに立ち寄らずに直接保安検査場へ向かうことができるようになっており(スカイマークでは自動チェックイン機で搭乗券を受け取る必要がある)、荷物を預ける場合も自動の荷物預け機が羽田空港などでは設置されていることから、空港スタッフとの接触も最小限で済むようになっている。
また保安検査場手前では消毒液が用意されていた。サーモグラフィーの前を通過した際に37.5度以上の体温だった場合には、搭乗を控えることを要請する内容の国土交通省と厚生労働省からの案内チラシを受け取るようになっている。
ANAでは6月1日以降、空港内と機内でのマスクの着用を利用者にお願いしている。実際にはほとんどの乗客がマスクをしており、マスクをしてない乗客もグランドスタッフが声がけすることでその場でマスクを着用してもらえているそうだ。もしマスクを持っていなければ、グランドスタッフにお願いすることでマスクを用意してもらえるとのことだが、利用者同士の不安という側面からも空港や機内も含めて、航空会社からの要請がなくても外出時のマスクは当面は必須だろう。
搭乗ゲートでは事前に並ばないように呼びかけ
筆者は9時40分発の福岡行きに搭乗するべく保安検査場を通過して搭乗ゲートへ。ゲート前ではソーシャルディスタンスを確保するための目印があり、お客様同士が接近しないように配慮されていた。特に印象的だったのが、搭乗開始直前には早く飛行機に乗りたい人を中心に列ができることが珍しくないが、事前のアナウンスで「搭乗開始前に並ぶのはお控えください」という旨が案内されたことで、ゲート前の椅子で搭乗開始を待っている人がほとんどだった。グランドスタッフはマスクとフェイスシールドを着用して業務を行っていた。
搭乗が開始され、いつもは二次元バーコードやICカードを改札機にタッチした後に「ご搭乗案内」のピンクの紙をグランドスタッフから受け取るが、現在は接触を避けるために利用者自身で受け取るようになっていた。改札機通過後は再び消毒液が用意されていた。
機内は3分で全ての空気を換気。高性能フィルターも装備
そして機内へ入った。機内で最も気になるのが機内の換気であるが、機内の全ての空気を3分で換気できるようになっており、高性能フィルター「HEPAフィルター」が搭載されていることで病院の手術室と同様の綺麗さを実現している。
関連記事:機内を病院の手術室と同じレベルの清潔な空気にする航空業界で話題の「HEPAフィルター」をANAが公開(2020年5月29日掲載)
機内ドリンクは紙パックのお茶に変更
シートベルト着用サインが消えた後、機内では客室乗務員はマスクや手袋を着用して機内サービスが始まった。通常はコーヒーや冷たいお茶、リンゴジュース、スープなどがカップに入れて提供されていたが、現在は機内で紙パックのお茶が配られていた。お子様には子ども用のリンゴジュースのパックも用意されている。JALでも同様に国内線機内では紙パックのお茶を提供している。ANAによると搭乗人数によってはカートを使わずにトレイのままで配るケースもあるそうだ。もし機内で薬を飲むなど水が必要な場合は客室乗務員にお願いすればペットボトルに入った水を持ってきてくれる。
また機内誌も現在は各シートに搭載されておらず、読みたい場合には客室乗務員にお願いすると新品を座席まで持ってきてもらえる。現在は使い回しはせずに、お客様に渡す際には全て新しいものを提供するとのことだ。
ANAではアルコールシートも希望者に配布する予定
ANAでは今後、お客様からのリクエストに応じてアルコールシートも提供する予定で、6月中にも運用を開始する計画になっている。また、到着空港では次の便が出発するまでの間に除菌シートなどを使ってトイレなどを除菌するなどの取り組みも行われている。機内全体のアルコールを使った消毒については、国内線では毎日夜間に、国際線では毎便ごとに行っているとのことだ。
6月からANAでは「ANA Care promise」という取り組みをスタートさせ、特設サイトでANAグループの新型コロナウイルス感染防止における取り組みについて情報発信している。「空の旅の新しいスタンダード」としてコロナ時代に安心して飛行機に乗ってもらうべく、航空会社の取り組みを紹介している。
今回は羽田空港及び機内での取り組みを中心に取材をしたが、今後準備が整い次第、全国の空港で順次運用を開始するとのことだ。
筆者搭乗の福岡行きは76%の搭乗率
今回、筆者が搭乗したANA247便福岡行きはボーイング767型機で運航されたが、座席数が270席に対して207名が搭乗していた。76%の搭乗率だった。JALではソーシャルディスタンス対策で中央席を販売しない運用を6月末まで実施するのに対し、ANAでは全ての座席を通常通りに販売している。IATA(国際航空運送協会)では「航空機内では感染リスクが低い」と発表し、航空会社に対しても隣の席を空けることを特に求めていない。
スカイマークも5月までは中央席の販売を取りやめていたが、現在では通常の形に戻っている。JALでは6月末まで予定通りに中央席の販売中止を継続するが、予約が多い路線については機体の大型化もしくは臨時便で対応するとしている。
6月19日以降、県をまたいだ移動自粛の解除で旅行需要が増える
新型コロナウイルスの感染状況次第にはなるが、6月19日に首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)及び北海道との県外移動自粛が緩和されれば、これまでの出張や単身赴任、親族訪問などに限られていた移動が、旅行も含めた移動も徐々に可能となることから、国内線利用者も増えそうだ。
安全に利用してもらうべく、航空会社も様々な取り組みを行っており、各航空会社のホームページで特設サイトを設けているので、飛行機を利用する際には一読しておくといいだろう。