機内を病院の手術室と同じレベルの清潔な空気にする航空業界で話題の「HEPAフィルター」をANAが公開
全国の緊急事態宣言が解除され、徐々にではあるが県をまたいだ移動自粛が緩和されてくるなかで、出張や旅行などで飛行機を利用することも再び増えてくるだろう。機内は密閉空間だと思われがちであるが、実は常に空気を循環しており、約3分で機内の空気が全て入れ替わる仕組みになっている。
今、航空業界で話題となっている言葉が「HEPA(ヘパ)フィルター(High Efficiency Particulate Air)」。HEPAフィルターは高性能フィルターとして、清潔な空気を保つための大きな原動力になっている。
HEPAフィルターは病院の手術室でも使われている高性能タイプ
ANA(全日本空輸)がホームページ上で発表して情報によると、HEPAフィルターは0.3ミクロン以上の粒子を99.97%を捕集することが可能となっており、過去のSARSなどの感染症対策としても有効視され、病院の手術室の空調設備にも使用されている高性能なフィルターとなっている。ANA以外も多くの航空会社でHEPAフィルターを採用している。
今回、ANAが「HEPAフィルター」を羽田空港で公開するとともに、機内での空気循環についての話を聞くことができた。
お話を伺ったのはANAの整備センター技術部技術企画チームの奥貫孝リーダー。「飛行機の空調設備の目的は2つあり、1つは機内の温度の管理、機内の気圧を管理するために空気を送り込むという目的がある」と空調設備の目的について話した。
3分で機内の空気が全て入れ替わる
奥貫さんによると、空気の流れとしてはエンジンから外の空気を取り込んだのち(ボーイング787を除く)、エアコン装置に送り込み、最終的に機内の天井から客室内に流れているそうだ。客室内では滞留せずに空気は上から下へ流れ、床下から一部の空気は機外に放出し、残りの空気はHEPAフィルターを通すことで、空気を改めて清潔な状態となって、エアコンに送り込み、機外からの空気と共に再び客室に循環することになる。結果、3分間に1回、機内の空気が入れ替わることになるそうだ。
今回、機体の床下にあるボーイング777-300型機の貨物室最後方にあるHEPAフィルターを撮影することができた。ANAの保有機には全機にHEPAフィルターが搭載されており、HEPAフィルターの交換のサイクルについては、整備プログラムの中に組み込まれており、平均して2年に1回のペースとのことで、日常のメンテナンスも不要となっている。取材したボーイング777−300型機では、天井裏と床下などに複数のHEPAフィルターが装着されている。
機内の空気が綺麗な理由について「外の綺麗な空気、換気量、上から下への空気の流れ、循環する時の高性能フィルター(HEPAフィルター)の4つ(を組み合わせること)で機内を新型コロナウイルス感染予防における十分な設備が整っていると考えている」と奥貫さんは話す。約3分で換気できる点については、機体の大きさに関係ないそうだ。
IATA(国際航空運送協会)も機内での感染リスクは低いと発表
IATA(国際航空運送協会)では、既に「航空機内では感染リスクが低い」と発表しており、IATAの非公式調査でも乗客から乗客への感染が疑われる事例はない調査結果を発表しているほか、飛沫による感染も乗客はマスクを装着して前を向いていることで顔を正面で向き合わせる可能性が低く、座席自体も防護壁になるなど機内感染が少ないとされる科学的見地が発表されている。
ANAは6月1日からマスク着用を利用者に呼びかけ
ANAでは6月1日以降、機内でのマスク着用をお客様にお願いするほか、機内の消毒も国内線では毎日夜間に、国際線では毎便ごとに実施する。安心して飛行機を利用して欲しいと話している。