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4時間26分の試合、決勝打は江越!その前に北條の逆転3ランも《9/12 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
10回裏2死一、二塁でマウンドに上がった松田投手。時刻は既に17時前です。

12日もナゴヤ球場での中日戦に臨んだ阪神ファーム。前日は狩野選手の骨折が判明して、田上選手が急きょ1軍に昇格したのですが、きのうは上本選手(1日の試合中に左太もも裏を痛めたもの)の登録抹消に伴い、中谷選手が試合前のシートノックに参加せず甲子園へ移動しました。ケガは困りますが、ファームの選手にとては大きなチャンス。それを生かすには自分自身です。

そしてきのうの1軍・広島戦は延長12回で引き分けという展開で、田上選手も中谷選手も試合に出ましたね。中谷選手が代走、田上選手が代打という奇妙な感じですけど。その1軍戦が4時間36分、ナゴヤ球場でのファームは延長10回で4時間26分。阪神タイガースは12日、合わせて9時間2分も試合をしていたわけですか。すごいなあ。

ではウエスタン・阪神‐中日戦の詳細をご紹介しましょう。岩貞投手がいきなり4点を失う立ち上がり。でも以降はしっかり抑える好投でした。打線は5回に3点を返し、追加点を奪われたあと9回に北條選手の3ランなどで逆転!と思ったらその裏に追いつかれて…北條選手はヒーローになり損ねた感じですね。延長10回に、四球の荒木選手を江越選手が二塁打で還し、これが決勝点となって連勝しています。

《ウエスタン公式戦》9月12日

中日-阪神 28回戦 (ナゴヤ)

阪神 000 030 005 1= 9

中日 400 000 022 0= 8 

※延長10回

◆バッテリー

【阪神】岩貞-石崎-鶴-筒井-○玉置(2勝2敗6S)-榎田-S松田(1S) / 小宮山

【中日】小熊(4回2/3)-小川(1/3回)-西川(1回)-高橋聡(1回)-阿知羅(2/3回)-山本雅(1/3回)-福谷(1回)-●岸本(1回) / 松井雅-赤田(9回途中~)

◆本塁打 北條9号3ラン(福谷)

◆二塁打 【阪神】江越2、荒木2、緒方、ペレス2 【中日】高橋周、野本

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]右:緒方  (6-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .235

2]二:荒木  (4-2-2 / 2-2 / 0 / 0) .194

3]中:江越  (6-2-1 / 2-0 / 0 / 0) .323

4]指:ペレス (5-3-3 / 1-0 / 0 / 0) .320

〃走指:森越 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .280

5]三:陽川  (2-0-0 / 1-3 / 0 / 0) .206

6]左:柴田  (5-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .343

7]遊:北條  (4-2-3 / 0-1 / 0 / 0) .249

8]一:西田  (4-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .220

9]捕:小宮山 (5-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .262

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

岩貞  7回107球(7-3-3 / 4-2 / 2.94) 146

石崎  1回 29球 (1-0-2 / 2-2 / 4.14) 140

鶴  0.1回 12球 (1-1-1 / 2-2 / 3.44) 146

筒井 0.1回 7球 (1-1-0 / 0-0 / 2.45) 142

玉置 0.1回 6球 (1-0-0 / 0-0 / 3.55) 143

榎田 0.2回 19球 (1-1-1 / 0-0 / 2.45) 143

松田 0.1回 11球 (0-1-0 / 0-0 / 3.48) 148

試合経過

岩貞投手は7回を投げて7安打4失点(自責2)も、2回以降はナイスピッチング!
岩貞投手は7回を投げて7安打4失点(自責2)も、2回以降はナイスピッチング!
3回、左手のマメを気にする岩貞投手。問題なかったようで、そのまま投げました。
3回、左手のマメを気にする岩貞投手。問題なかったようで、そのまま投げました。

まず1回、岩貞は先頭の友永にセーフティバントを決められ(三塁側、自身で捕るも送球がワンバウンドになりセーフ)、三ツ俣は四球で無死一、二塁。古本に左前タイムリーを浴びました。続く高橋周には右中間へのタイムリー二塁打。1死後に小宮山の捕逸で古本が生還。1死三塁となって工藤に右前タイムリー。この回4点を失っています(自責2)。

2回は1四球のみ、3回は三者凡退、4回は四球と松井雅の右前打で2死一、二塁としたものの無失点。5回も古本と高橋周の連打で1死一、二塁になりましたが5番・福田を遊ゴロ併殺打に仕留めています。そして6回と7回は三者凡退!

5回にタイムリー二塁打を放った荒木選手。この日早くも2本目の二塁打です。
5回にタイムリー二塁打を放った荒木選手。この日早くも2本目の二塁打です。
そのあと2死後にタイムリー二塁打のペレス選手。走って疲れた?どこか痛かった?
そのあと2死後にタイムリー二塁打のペレス選手。走って疲れた?どこか痛かった?

打線は、岩貞が尻上がりに調子を上げる間に反撃しました。5回まで江越、荒木の二塁打など4安打を放ちながら小熊に抑えられていたのですが、5回は1死から小宮山がショート三ツ俣の送球エラーで出て、緒方の三塁線を破る二塁打で二、三塁とし、まず荒木が右翼線へのタイムリー二塁打!2人が還って、2死後にペレスも右翼線へ二塁打を放ち3点目。暴投と四球で2死一、三塁となり投手交代。小川に対して柴田は一ゴロ(二塁封殺)で、1点及びませんでした。

そのあと6回、7回は両チームとも三者凡退。8回に阿知羅からペレスが右前打、陽川は四球、続く柴田が鋭い当たりを放ち、抜けたか!と思ったら…ショートが捕って併殺打。なるほど、阿知羅に当たって勢いが弱まったんですね。この話はのちほど。ついて北條が四球で投手交代。山本雅から西田も四球を選び満塁となるも得点はなし。

右肩違和感から復帰の石崎投手。連続四球のあと2死を取りながら二塁打を浴び2失点。
右肩違和感から復帰の石崎投手。連続四球のあと2死を取りながら二塁打を浴び2失点。
1点を追う9回、サードのエラーで出て、そのまま二塁へ向かう江越選手。
1点を追う9回、サードのエラーで出て、そのまま二塁へ向かう江越選手。
ベース直前でスライディングして…
ベース直前でスライディングして…
セーフ!1死二、三塁とチャンスを広げ、ペレス選手の二塁打へつなげます。
セーフ!1死二、三塁とチャンスを広げ、ペレス選手の二塁打へつなげます。
ペレス選手の2点二塁打で1点差となり、北條選手が逆転の3ラン!
ペレス選手の2点二塁打で1点差となり、北條選手が逆転の3ラン!

するとその裏、石崎がいきなり連続四球を与えてしまいます。あとは簡単に2死を取ったのですが、代打・野本に真っすぐを打たれ、中越えの2点タイムリー二塁打。これで6対3とリードを広げられました。

しかし9回、中日7人目の福谷から荒木が四球、江越はサード高橋周の捕球エラーで1死二、三塁とチャンス到来。続くペレスが三塁線をライナーで破るタイムリー二塁打!2人を還して1点差に追い上げます。陽川は四球(ここでキャッチャーが赤田に交代)、柴田の遊ゴロで走者が入れ替わり、2死一、三塁となって北條が148キロの真っすぐをレフトへ!第9号3ランで逆転です。

8対6で迎えた9回裏、まず鶴が先頭の赤田を四球で出し、友永に右前打、三ツ俣はスリーバント失敗で1死一、二塁。ここで代わった筒井が古本に右前タイムリーを浴び1点差。1死一、三塁で高橋周は空振り三振に切って取りましたが、このボールを小宮山が捕逸して二、三塁。投手は玉置に代わり、福田に左前タイムリー。追いつかれました。なおも2死一、三塁と続くピンチは工藤を投ゴロに打ち取って、サヨナラ負けは阻止しています。

延長10回、岸本に2死を取られたあと荒木が四球を選んで、ファウルで粘った江越が8球目にバットを一閃!素晴らしい角度で伸びていった打球はレフトフェンスを直撃し、荒木が生還しました。打った江越は三塁でタッチアウトとなったものの、貴重な勝ち越し二塁打です。

空振り三振で試合を終えたものの、苦笑いの松田投手(左)。
空振り三振で試合を終えたものの、苦笑いの松田投手(左)。

ただし、その裏もすんなりとはいきません。榎田が先頭の代打・溝脇に左前打され、犠打で二塁へ。代打・井領は空振り三振だったものの友永に四球を与え、ここで交代。2死一、二塁で登板した松田は三ツ俣に対してフルカウントとし、そこから4球続けてファウルで粘られます。ようやく11球目で空振り三振!しかし松田は浮かない表情での試合終了でした。

先発の岩貞、復帰した石崎、締めは松田

1回に4安打を浴び、バッテリーミスも重なって4点を失った岩貞投手。「最初はボールが上ずっていました。2回以降は重心を下げるようにして投げた」と言います。2回からは本来のピッチングでしたね。全体を振り返っては「よかったです」と笑顔。なお3回に先頭の古本選手を左飛に打ち取った際、左手の指先を気にする様子があり、トレーナーもマウンドへ向かいました。岩貞投手によれば「マメです。マメ」とのこと。そのまま投げ続けたので問題なかったようで、何よりです。

なおリードした小宮山選手も「岩貞、よかったですよ」と言っていました。「でも自分が足を引っ張ってしまったんで…」とパスボールの件を悔やんでいます。

10日の紅白戦で最速は何キロでしたか?「156キロかな」と石崎投手はニヤリ。
10日の紅白戦で最速は何キロでしたか?「156キロかな」と石崎投手はニヤリ。

右肩の違和感で戦列を離れていた石崎投手は、10日に行われた紅白戦(鳴尾浜)で投げていますが、試合での復帰登板でした。「何とも言えないですねえ。言い訳もしたくないし。自分の力不足です。マウンド上で気持ちの切り替えができていない」。とはいえ150キロが何球か出ていたし、威力もあったように見えました。「そうですね。そういう点では球速も出ていたし、問題はないと思います」

いきなり連続四球だったものの無難に2死を取り、そのあと失点したことについて「2死まで取って、ピンチヒッターの野本さんを抑えようという強気な気持ちで投げた結果、打たれた。技術的なことで言えば、変化球ですね。ストライクで勝負できるぞっていうとこを見せられれば、まだよかったのかも…」と反省しきりの石崎投手でした。

10回裏2死一、二塁でマウンドに上がった松田投手。空振り三振で試合を終えたのですが「きのうと同じミスをしました」と笑顔はありません。「抜けスラです。最後のスライダー、抜けてしまった」。真っすぐを4球ファウルされ、最後に投げたのが132キロのスライダー。それを振ってくれたということですね。ラッキー、かな?「ほんとに。あれはボールだった。抑えられてよかった…」と心底ホッとした様子でした。

逆転3ラン<決勝ニ塁打、というわけでは…

試合後、さすがにグッタリとした足取りで「疲れた。疲れたねえ」と引き揚げてきた古屋監督。「よく4点差をひっくり返したよ。ピッチャーに不満はあるけどね」というコメントです。

9回の逆転3ラン!笑顔で三塁を回る北條選手。これで勝ったと思ったんですけどねえ。
9回の逆転3ラン!笑顔で三塁を回る北條選手。これで勝ったと思ったんですけどねえ。

さて打のヒーローですが、先に江越選手の姿を見つけたので、もう1人の記者と駆け寄っていったら、うしろで「うわ~!この差」と北條選手の声。逆転3ランを打ったのに、誰も話を聞きに来てくれないの?ということでしょう。めちゃくちゃ笑っていましたけどね。いや、たまたまですよ。先に江越選手が来たからで、しかも一緒に来るとは。というわけで私は北條選手のところへいきました。でも「真っすぐです。真っすぐ1本でいきました」と言っただけで「それに追いつかれたし…」とタクシーに乗り込みます。

8月16日の中日戦(金沢)で“2ヶ月半ぶり”に8号を打った北條選手。今回はそれ以来で「また久しぶりですね」とのこと。それにしても9回、土壇場での逆転3ランですから、あれで決まったと思ったでしょう?「ちょっと思いました(笑)」。そりゃそうです。これで9本、2ケタいけそうな感じですけど?「無理です」。いやいや期待はさせていただきます。

延長10回表、江越選手が勝ち越しの適時二塁打!時刻は16時33分でした。
延長10回表、江越選手が勝ち越しの適時二塁打!時刻は16時33分でした。

10回2死一塁で勝ち越しのタイムリー二塁打を放った江越選手は「北條の3ランが大きかった」と、これは先ほどのやり取りがあって、目の前にいた北條選手へも向けた言葉だと思われます。仲良しの同級生ライバルである中谷選手の昇格が急きょ決まり、この日の練習後に甲子園へ移動しました。2人ともが1軍にいたのは先月はじめの数日だけ。このあと繰り広げられる優勝へのデッドヒートに、揃って1軍で活躍する姿を見たいですね。

中日の阿知羅投手と岸本投手

太ももの裏を打球が直撃したあとも、こんなダイナミックに投げる阿知羅問投手。
太ももの裏を打球が直撃したあとも、こんなダイナミックに投げる阿知羅問投手。

最後に、中日・阿知羅投手と岸本投手の話を少し。まず阿知羅投手は8回、やはり柴田選手の打球が直撃したそうです。「左太ももの裏に当たりました。大丈夫です!」。いや~相当な痛さだったと思いますよ。なのに何もなかったかのごとくマウンドに立ち、しかもベンチを出たトレーナーを手でビシッと静止した仕種がオトコマエでした!「そんなことないですよ。大丈夫だったので。明日はわからないですけど」。ほんとですよね。お大事に…。

岸本投手は試合後、阿知羅投手や山本雅投手とともに暗くなるまで屋内練習場で練習していました。聞きにくいことを聞きますが…10回の江越選手に対して投げた最後の球はスライダーですか?「スライダーです。甘くなりました」。いつもにこやかに話してくれる岸本投手も、さすがに笑顔はまったくありません。でも応えてくれて感謝です。ありがとうございました。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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