オートバイのあれこれ『63年前のおしゃれスクーター』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『63年前のおしゃれスクーター』をテーマにお話ししようと思います。
皆さんは『SC-1』というバイクを知っているでしょうか。
SC-1は、ヤマハが初めて生み出したスクーターです。
登場は1960年(昭和35年)。
戦後すぐに発売された中日本重工業(現・三菱重工)『シルバーピジョン』と富士重工業(現・スバル)『ラビット』が1950年代に“移動に便利なスクーター”として人気を博しており、1955年から二輪生産を始めたヤマハもそれらに対抗しうる製品を作ろうということで、SC-1を開発したのでした。
SC-1最大の見どころは、モノコックボディが織り成す流麗なデザイン。
シルバーピジョンやラビットは座席の下が四角い箱のような形でしたが、SC-1は車体全体が曲面構成の流れるようなシルエットとなっていました。
さすが「デザインのヤマハ」といったところでしょうか。
エンジンは排気量175ccの空冷2ストローク単気筒で、ピークパワーは約10ps。
熟成が進んでいた1960年頃のシルバーピジョンは4スト175ccで8.5ps、ラビットは2スト200ccで11psでしたから、ヤマハは“初挑戦”だったにもかかわらずSC-1で健闘していたと言えるでしょう。
また、前後のホイールが共に片持ち式になっていたり、駆動系がシャフトドライブ式だったりと、当時としては先進的な設計となっていたのもポイント。
その他セルスターターを備えるなど、SC-1は利便性も優れていたのですが、SC-1が発売された頃はちょうど軽自動車も世に出回り始めたタイミングで、SC-1は軽自動車に需要を奪われる形であまり売れませんでした。
見た目も機能性も優秀だったのに、時代の流れに飲まれてしまった不運なモデルだったと言えるでしょう。