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ACL浦和戦でのKリーグ浦項“テーピング放り投げ行為”。韓国と当事者の真意は?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ACLグループリーグで敗退した浦項スティーラーズ(写真:ロイター/アフロ)

AFCアジアチャンピオンズリーグのグループリーグ第6節・浦和レッズ対浦項スティーラーズ戦の終了後に起きた、浦項選手による“テーピング投げ捨て行為”。両チームの選手たちが激高してあわや乱闘寸前になったこの一件は、日本でもさまざまなメディアで取り上げられたが、韓国でこのニュースを報じたところは意外と少ない。いろいろと調べてみたが、ネットニュース『OSEN』と一般紙『国民日報』ぐらいだった。

しかも、その論調は日本とはかなり異なる。「浦項対浦和、試合後に集団衝突事態」との見出しをつけた『OSEN』は浦和サポーターが浦項の選手を狙って異物を投棄したこともあったとしているし、『国民日報』は「人種差別のせい? 浦和球場にゴミ投棄事件」と報じている。『OSEN』が報じた場面は確認できず、『国民日報』の報道はフェイスブックに上がった韓国人の証言を元にしているだけに信憑性はなく、怪しい。扇動しようという意図が透けて見えるだけに、記事の見出しや内容を額面通りに鵜呑みにできないだろう。

では、韓国のサッカー記者たちは今回の一件をどのように見ているのか。いろいろと意見はあるようだが、まずはKリーグでは試合終了後にテーピングをピッチに放り投げてそのまま立ち去ってしまうことがあるらしい。「問題になったり指摘されるような事例はない」という記者もいれば、「日本と韓国の倫理意識の違い」という記者もいる。国によって価値観や習慣が異なるのは当然だが、意外なところで認識の違いがあったようだ。

(参考記事:韓国記者に直撃!! 「浦項のテーピング投げ捨て行為、私はこう見る」)

ただ、一度拾い上げられたテーピングをふたたび放り投げた浦項の主将キム・グァンソクの行為には賛否両論がある。「西川選手が言うように子供たちも見ているのですから、プロサッカー選手として見本を示すべきですし、あの場面ではグッと抑えるべきでした。改めて映像で見ると、もどかしい気持ちになります」という記者もいれば、「キム・グァンソク選手の行為は浦項が直面していた特殊な状況を影響していた」という意見もあるようだ。

その浦項とキム・グァンソクは今回の件について何ら見解を示さぬまま韓国に戻っているが、浦項関係者とキム・グァンソクは韓国記者の取材に応じて事の真相を話している。

過去の写真とともにテーピングをピッチに「置いて立ち去る」ことは日常的にあったことを説明した上で「無礼を働いた認識はなかった」らしく、それでも浦和サポーターからブーイングを浴びたことに選手たちは当惑と動揺と苛立ちを感じたらしい。そして、キム・グァンソクはそんなチームメイトの反応を目の当たりにして、「萎縮している」と感じたという。曰く、「浦和を挑発する意図はなく、むしろ自分のチームメイトに見せつけるための行動」だったというのだ。

(参考記事:浦項キム・グァンソクに直撃!! テーピング放り投げ行為の真相)

キム・グァンソクがそう言っているなら否定はしないが、一度拾い集められたテーピングをふたたび放り投げるシーンは挑発行為として受け止められても仕方ないだろう。もしも彼がキャプテンとしてチームに気合を注入したかったのなら、そのパフォーマンスはロッカールームなどでやるべきで、わざわざ大勢のサポーターや対戦相手がいる前ですべきではなかった。文化の違いもあるのだろうが、感情に任せた行動のせいでいらぬ誤解や不快感を招いてしまったことは事実だろう。今回の一件が日韓サッカーの新たな因縁の火種にならなければいいのだが・・・・・・。

浦和レッズが次のACLラウンド16で対決するのは、浦項と同じKリーグ勢のFCソウル。かつてJリーグでプレーしたチェ・ヨンス監督が率いるチームで、近年のKリーグではもっとも観客動員数が多いクラブだ。Kリーグ屈指の人気を誇るFCソウルと、Jリーグの熱狂の代名詞とも言える浦和レッズ。浦項対浦和戦での後味の悪さを吹き飛ばしてくれるような好勝負とフェアプレーを期待したい。

(関連記事:ACLラウンド16の日韓対決! FCソウルにとって嫌な浦和の3人とは?)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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