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叡王目指す藤井聡太二冠(18)「非常にカッコいい先生」行方尚史九段(47)との対戦は序盤から波乱含み

松本博文将棋ライター
叡王戦は不二家が主催(写真:西村尚己/アフロ)

 5月17日。東京・シャトーアメーバにおいて1回戦▲行方尚史九段(47)-△藤井聡太二冠(18)戦が始まりました。

 叡王戦は不二家が主催するタイトル戦です。

 対局者のかたわらにお菓子ボックスが置かれている風景はすっかりなじみ深いものとなりました。叡王戦を観戦するにあたっては「カントリーマアム」や「ホームパイ」、あるいは藤井二冠がCMに出演している「ONチョコレート」「OFFチョコレート」など、不二家のお菓子を用意するという観戦者も多いのではないかと思います。(筆者もその一人です)

 対局開始に先立つ振り駒の結果、「歩」が2枚、「と」が3枚出ました。

 定刻10時。記録係が声を発します。

記録「それでは時間になりましたので、行方先生の先手番でお願いします」

行方「お願いします」

藤井「お願いします」

 一礼のあと、行方九段は右手でグラスを手にして、冷たい水を飲みます。ハンカチで額を拭きながら、しばし瞑目。そして目を開いたあと、左手で7筋の歩を手にして、一つ前に進めました。普段は右利きの行方九段。将棋の駒を動かすときは左手です。

 藤井二冠はグラスに口をつけたあと、8筋の歩を伸ばしました。どのような対局であっても変わることのない、いつもの藤井スタイルです。

 行方九段は得意の矢倉模様。対して藤井二冠は急戦をにおわせます。

 行方九段は2筋で飛車先の歩を交換したあと、3筋に飛車をスライドさせ、横歩を取ります。序盤から激しい変化を含みとした展開になりました。

 行方九段は実利の歩得(ふどく)、藤井二冠は駒を多く動かせる手得(てどく)を主張する序盤戦。34手目、藤井二冠が銀を立って自陣を整備した局面で昼食休憩に入りました。

 両者の公式戦対戦は藤井二冠の2連勝です。

 また2017年、非公式戦「魂の七番勝負」でも対戦しています。

深浦九段「指名されたんですよね。藤井さんからね。理由が『カッコいい先輩だから』。そんなこと言われたいですよね、藤井さんにね(笑)」

 当時15歳の藤井四段は行方八段(段位はいずれも当時)について、次のように語っていました。

藤井四段「対局姿を生で拝見したことはないんですけれども、でもほんと、映像や写真で見ていても、非常にカッコいい先生だなというふうに思っていて」

 こちらも結果は若き藤井四段の勝ちでした。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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