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「ステイホームで夫婦円満に!?」のデータのさらに興味深い部分

おおたとしまさ育児・教育ジャーナリスト
夫婦生活を漢字一文字で表すと?(写真:アフロ)

11月22日の「いい夫婦の日」を前に、生命保険会社が夫婦関係に関するアンケート調査の結果を発表しました。

それを報じるニュース記事によると、「新型コロナウイルス感染拡大の影響で夫婦仲が『良くなった』と答えた人の割合は19.6%で、『悪くなった』の6.1%の3倍超に上った。同社は、コロナ禍を通じて夫婦の絆を感じた人が多かったとみている」とのこと。

まさに「災い転じて福となす」という話ではあるのですが、ただ、この手の簡易なインターネット調査というのは、そもそもテーマが「夫婦」とわかった時点で、夫婦に対してネガティブなイメージをもっているひとは拒否反応を示すというバイアスがかかるので、「ステイホームで夫婦仲が改善する」みたいな単純な結論には結びつけないほうがいいとは思います。

実際、この調査で、夫婦仲が「円満」と答えたひとは全体の約8割だったそうです。この数字を高いと見るか低いと見るか。夫婦仲が円満だと思っている夫婦は、ステイホーム期間中にさらに親密さが増すことが想像できますよね。一方で、「コロナ離婚」という言葉もできたように、夫婦の距離感が変われば、葛藤も必ず増えます。今回の調査結果に表れていない現実もあるであろうことは忘れてはいけないと思います。

それをふまえたうえで、ネットニュースで報道されている情報だけでなく、その生命保険会社が発表しているレポートを読み込んでみて、私が興味深いと思った部分を抜き出してみたいと思います。

まず夫婦の会話時間について。円満な夫婦の平均会話時間は、平日で146分、休日で273分。円満でない夫婦の場合これが平日53分、休日83分と、約3倍も違うんですね。まあそこまでは予想通りではあって。興味深いのはここからです。円満であろうがなかろうが、会話の内容は「子どものこと」が約6割でトップです。でも、円満な夫婦とそうでない夫婦の違いは、それ以外のことを話すかどうかでした。「テレビなどのニュース」「休日の予定」「夫婦のこと」などを話す割合が、円満夫婦とそうでない夫婦では30ポイント以上の開きがありました。

「子どものお父さん」と「子どものお母さん」という立場同士の会話は、本当の意味での「夫婦の会話」ではありませんからね。子どもを介さずに、ちゃんと夫婦で向き合っているか、お互いに関心をもち、気遣っているかは意識すべきだと思います。そこを意識しないとそのうち「近くにいてくれて当たり前」になってしまいますから、感謝の気持ちも湧きにくくなってしまいます。言わずもがな、配偶者から言われたい言葉は「ありがとう」がダントツの1位です。

次に紹介したいのは、「夫婦生活を漢字で表すと?」という質問の結果です。みなさんは、夫婦生活を漢字一文字で表すとしたら、どんな漢字を選びますか?

ここでは男女差が顕著でした。男性の1位は「愛」、2位は「忍」、3位は「楽」でした。女性の1位は「忍」、2位は「楽」、3位は「和」でした。どちらも「忍」が上位にあり、昔から結婚には忍耐が必要と言われていることが再確認できたわけですが、私が注目したのは「愛」の順位です。男性では1位ですが、女性は6位なんです。この差は何なのか、いろいろな解釈が可能だと思います。興味深いところです。

さらに年代別に見ると、20代から40代までで「楽」や「愛」が上位に来るのに対し、50代以降の夫婦では「忍」がトップを独占していました。レポートによると、「結婚当初は『愛』を育みながら、夫婦生活を『楽』しむものの、年を重ねるにつれ、耐え『忍』ぶことの重要さを実感していくのかもしれません」ときれいにまとめていましたが、私は違う解釈も可能かと感じました。

世代間ギャップもあるんじゃないかと私は思います。私自身がいま47歳ですが、まさにロスジェネと呼ばれた世代です。私たち以降が、バブルを知らない世代とも言われます。その世代による価値観の違いが、夫婦観にも違いをおよぼしているのではないかという気がしてなりません。

そこで過去の調査結果を検索してみると、5年前、2015年の調査結果がネット上に残っていました。するとやはり、このときの40代の1位は「忍」でした。2020年の40代の1位は「愛」なんです。バブル期までの世代とそれ以降の世代とでは夫婦観にも違いがあるのではないかと私は思います。いまどきの結婚式で「結婚には『堪忍袋』が必要です」なんてスピーチは時代錯誤かもしれませんよ。

※2020年11月19日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。

育児・教育ジャーナリスト

1973年東京生まれ。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。リクルートから独立後、数々の育児・教育誌のデスクや監修を歴任。男性の育児、夫婦関係、学校や塾の現状などに関し、各種メディアへの寄稿、コメント掲載、出演多数。中高教員免許をもつほか、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験あり。著書は『ルポ名門校』『ルポ塾歴社会』『ルポ教育虐待』『受験と進学の新常識』『中学受験「必笑法」』『なぜ中学受験するのか?』『ルポ父親たちの葛藤』『<喧嘩とセックス>夫婦のお作法』など70冊以上。

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