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近畿にまたも大物投手現る!  ハイレベル近畿大会開幕

森本栄浩毎日放送アナウンサー
市和歌山の小園が近畿デビュー。11Kの見事な投球でセンバツへ前進した(筆者撮影)

 噂の大物投手、市和歌山の最速152キロ右腕・小園健太(2年)が、ついに近畿の舞台に登場。先に1点を失う苦しい試合だったが、要所で三振を奪い、評判通りの投球を披露した。次戦に勝てばセンバツは当確。最注目投手になることは間違いない。

先制許すも本塁打などで逆転

 相手の東播磨(兵庫)は、近畿大会初出場だが、同じ公立の加古川北を春夏の甲子園に導いた福村順一監督(48)の好指導で、抜け目のない野球をする。初めての好機となった5回は、1死2、3塁から、8番・島津知貴(2年)が前進守備の遊撃へのゴロ。好スタートを切った走者が本塁を陥れる鮮やかな攻撃で、小園から先制した。序盤の好機を逃し続けていた市和歌山は直後の6回に反撃。5番・田中省吾(2年)の左越えアーチで追いつくと、9番・杉本明弘(2年)にも適時二塁打が飛び出し、一気に逆転した。

小園は全員奪三振

 この援護に、小園が燃えないわけがない。「すぐに取り返してくれて気持ちが楽になった」と言うように、その裏の1番からの攻撃をわずか10球で抑えると、さらにエンジンが加速した。7回以降の終盤だけで5三振の計11奪三振。全員奪三振のおまけ付きだ。試合は2-1の僅差だったが、失点した回以外は先頭の出塁を許さず、8、9回の得点圏走者も2死からで、いずれも三振で切り抜けた。今大会は無観客でスカウトも入場できないため、球速はわからないが、中盤以降は150キロ近く出ていたのではないだろうか。

ツーシームとカットボールも一級品

 「最速(152キロ)の更新よりも、アベレージで140キロ後半を出せるようにしたい」と、今後の抱負を語った小園は、県大会後、まっすぐを投げる際の意識を変えたという。「ボールが離れる瞬間の指先まで集中する」ことを意識した結果、まっすぐがコースに決まり、得意の変化球も生きた。特に手元で鋭く曲がるツーシームとカットボールは一級品で、まっすぐと同じ軌道で打者に迫ってくる。本格派にしては、立ち上がりも無難で、初回の投球などは、変化球の調子を見極めているようなふしがあった。特にツーシームは、フォークのような落ち方をするものとシュート回転で小さく沈む二種類があり、状況に応じて投げ分ける。まっすぐの伸びと変化球の精度は、昨年のこの時期の高橋宏斗(中京大中京=愛知)に勝るとも劣らない。185センチ85キロの堂々たる体格でマスクもよし。センバツで絶対に見たい投手だ。

智弁学園は大逆転サヨナラ

 雨による順延で一日遅れの開幕となった近畿大会は、オープニングから大熱戦になった。優勝候補の智弁学園(奈良)が、滋賀学園に粘られ、4点差を追いつかれて延長に突入。エース・西村王雅(2年)が、10回に2点適時二塁打を浴びて窮地に立たされたが、その裏に底力を発揮した。1死1、2塁からの3連打で追いつくと、最後は途中出場の竹村日向(ひなた=2年)がサヨナラ打を放って、大逆転サヨナラ。智弁が9-8で延長の死闘を制した。

滋賀学園の阿字は16安打されながらもよく耐えた。10回の2点で勝利は目前だったが、力尽きた(筆者撮影)
滋賀学園の阿字は16安打されながらもよく耐えた。10回の2点で勝利は目前だったが、力尽きた(筆者撮影)

 滋賀学園は少ない好機を確実に得点に結びつけて勝機をつかんだかに見えたが、頼みのエース・阿字悠真(2年)が最後に息切れし、195球目を痛打された。

山田は平安に健闘も守備力の差

 大阪大会で履正社を破って近畿大会初出場の山田は、試合巧者の龍谷大平安(京都)に挑んだ。初回の1死2、3塁で、中前に落ちそうな当たりを平安の中堅・實谷大周(2年)がダイビングキャッチ。これで2塁走者が戻れず併殺となり、山田は先制機を逃した。

平安に敗れうなだれる山田の選手たち。内容的にはまったく見劣りせず、履正社を倒したのも納得できる好チームだ(筆者撮影)
平安に敗れうなだれる山田の選手たち。内容的にはまったく見劣りせず、履正社を倒したのも納得できる好チームだ(筆者撮影)

 最終的には要所での守備力が勝敗を分け、4併殺を奪った平安に対し、3失策がいずれも失点に絡んだ山田は、1-4で涙をのんだ。平安をわずか4安打に抑えながら敗れた山田の金子恭平監督(41)は、「守りからリズムを作りたかった」と無念の表情を浮かべてはいたが、強豪と互角に渡り合い「選手にとっては自信になったと思う」と手応えをつかんだ様子だった。

近畿は1回戦から熱く

 初日に登場した6校は、それぞれが持ち味を発揮した。特に初出場の東播磨と山田の健闘が光る。現状、センバツは厳しい状況ではあるが、この貴重な経験を次の大事な試合で生かしてほしい。レベルの高い近畿大会は、1回戦から熱い戦いが続いている。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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