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「セルフ」でブラタモリの方法は? もし清澄白河にタモリさんが来たら

とらべるじゃーな!穴場ずらし旅、愛好家

関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな!です。東京の下町・清澄白河が、アド街(テレビ東京系)、カクエキ!(テレビ朝日、広域関東圏のみ)の旅番組で相次いで取り上げられました。

いずれもグルメやアートなどを紹介し、興味深い内容でしたが、もしブラタモリが来ていたら?と思った方もいるかも知れません。そこで不定期企画「もしもブラタモリが来たら」のスタートです。道中、「セルフブラタモリ」のノウハウも紹介します。

NHKブラタモリ公式サイト

清澄庭園からスタート

タモリさん(仮) 今日は、清澄庭園に来ています。

案内人(仮) 都内で交通の便が良く、多い年には年24万人(資料)が訪ねる人気の庭園ですね。もとはどういった場所だったか、お分かりになりますか?

タモリさん(仮) これは大名屋敷の庭園跡かな?

ナレーション タモリさん(仮)お見事! 清澄庭園は、大名の下(しも)屋敷だった一帯です(資料)。ただし庭園として整備されたのは明治期で、三菱の慰安施設としてでした。
ブラタモリ(仮)清澄白河編のテーマは「清澄白河はウンがいい」です。

変わった地形を見る

案内人(仮) タモリさん(仮)、こちらは、清澄庭園の南を流れる川ですが、ちょっと不自然な直角型をしていませんか?

タモリさん(仮) これは、まあその運河ですよね?(簡単すぎ?)

引用 大江戸今昔めぐり製作委員会、有限会社菁映社、株式会社APPカンパニー、中川惠司、Google Maps
引用 大江戸今昔めぐり製作委員会、有限会社菁映社、株式会社APPカンパニー、中川惠司、Google Maps

案内人(仮) その通りです。もとは 十字に流れ、向こうに江戸城がある隅田川まで達していたのです。現在は、埋め立てられたり、東京都の施設の関係で見えなくなったりして、T字型になっています。

タモリさん(仮) あの~? この運河から引き込んでいる、四角い形をした水たまり……

案内人(仮) あっ……、それは後で触れてゆきましょう。

案内人(仮) 実は清澄白河では、自転車で行動する人が多いんです。ここはどのような土地なのか、お分かりになりますか?

タモリさん(仮) 自転車を運転しやすいのは平坦な土地。つまり埋め立て地ですよね? かつては海だったと。

案内人(仮) さすがです。江戸城から比較的近く、海を埋め立てることで、土地や運河を造成しやすかったんです。江戸城に近く浅い海だったことが、清澄白河の発展にとって、ウンがいいと言えたんですね。

ナレーション 清澄白河のある江東区は、島状となっていた亀戸周辺を除き、海が広がっていたのです。

運河沿いをひとり占めした人たちとは?

案内人(仮) ではタモリさん(仮)。江戸時代に作られたこの運河沿いには、どのような人たちが居を構えたか、お分かりになりますか?

タモリさん(仮)ここは「江東区」と言うぐらいで、江戸城から見て隅田川を渡って少し距離がある川東ですよね? 江戸と地方の物資の流通に一丁絡みたい、商家が立ち並んだのでは?

案内人(仮) 残念! 惜しいです。商家もありましたが、メインは大名屋敷、特に物資を扱うことが多かった下屋敷(蔵屋敷)が多かったんです。江戸城の郊外では、下屋敷は水路や街道沿いに好んで建てられました(資料)。良い場所はやはり大名が抑えたということです。川の右手のマンションの辺りは仙台藩の下屋敷でした。(写真左下に仙台堀川の文字)

引用 大江戸今昔めぐり製作委員会、有限会社菁映社、株式会社APPカンパニー、中川惠司、Google Maps
引用 大江戸今昔めぐり製作委員会、有限会社菁映社、株式会社APPカンパニー、中川惠司、Google Maps

ナレーション タモリさん(仮)が見ていた堀は、現在でも仙台堀川と呼ばれます。仙台藩はこの堀を利用して、コメを江戸へ流通させていました。タモリさん(仮)が気になった「四角い水たまり」は船入と呼び、運搬船が出入りできました。このように運河により流通が発展した清澄白河は、ウンがいいと言えたのです。

大名屋敷を囲むように立ち並んだものは?

案内人(仮) タモリさん(仮)、こちらは仙台堀川から少し離れた場所にある雲光院(うんこういん)という場所です。徳川家康の妻(側室)ながら、外交の役割を担い、大坂の陣で交渉役を務めた……?

タモリさん(仮) えーと、確かアチャ、阿茶局(あちゃのつぼね)?

案内人(仮) 大正解です! このお寺、雲光院は阿茶局が自ら建立した菩提寺(ぼだいじ、代々のお墓を置く)なんです。運河沿いに大名の下屋敷が立ち並んだ清澄白河では、それを取り囲むようにこのようなお寺が多数あるのですが、これはなぜだか分かりますか?

タモリさん(仮) 大名の下屋敷ができ、そこで働く人が多く住み、同時にお寺が増えていった?

引用 大江戸今昔めぐり製作委員会、有限会社菁映社、株式会社APPカンパニー、中川惠司、Google Maps
引用 大江戸今昔めぐり製作委員会、有限会社菁映社、株式会社APPカンパニー、中川惠司、Google Maps

案内人(仮) はい。決して間違いではないのですが、これだけお寺が集中しているということは、集団での移転が疑われますよね?

タモリさん(仮) えー? ということは明暦の大火か何か?

案内人(仮) 正解です。明暦の大火や、その前の桶町の大火で、多くの寺院が移転してきました。阿茶局の雲光院はじめ、明暦の大火で移ってきた移ってきた寺院の総面積だけでも6万坪に達し(資料)、この地域の発展に大きく寄与したと言えます。(この後寺町を歩きます)

タモリさん(仮) あれ? このマンションみたいな建物も、お寺じゃないかな? このパターンは、築地で見たことがあるね。ビルの中にお墓も鐘もあった!

案内人(仮) よくお気づきで。こちらのお寺も、ビル内にお墓があるんです。しかもICカードを照らせば、各家の納骨堂が自動搬送されてきて、ゆっくりとお参りができるんです。

タモリさん(仮) 屋外の墓地で、お目当てのお墓にたどり着くのは、遠くて狭くて大変!

案内人(仮) こちらはもとはお向かいにある、清澄白河でも特に大きな敷地を持つ、浄心寺の寺内寺院(=塔頭・たっちゅう)の1つなんです。関東大震災や太平洋戦争の中期までは生き延びたのですが、末期の東京大空襲で焼失し、今に至ります。

悩みや苦労を洗い流す効能がある菩薩 スイッチを押すと水が流れる仕組み
悩みや苦労を洗い流す効能がある菩薩 スイッチを押すと水が流れる仕組み

タモリさん(仮) お!角にお地蔵さまが。ビルの角の使い方として、これ以上のものは見たことないね。

ナレーション 多くの犠牲者を出した2度の大火は不運でした。しかし、清澄白河に移ってきたお寺は、「独礼」と呼ばれ将軍と単独で面会できる、格式の高いお寺が勢ぞろいだったんです(雲光院、浄心寺とも独礼)。この点では清澄白河は、ウンがいいと言えるかもしれませんね。なお、過去のブラタモリは、明暦の大火でできた町の1つとして吉祥寺を訪ねています。
【ブラタモリ吉祥寺・ロケ地】タモリさんが知られざる地形を探る#94(とらべるじゃーな!)

仙台藩の大名屋敷はいま?

タモリさん(仮) ここは、仙台藩の下屋敷の跡ですよね? 仙台堀川沿いの。

案内人(仮) おっしゃる通りです。ちょうどタモリさん(仮)が気にしてらっしゃった、四角い水たまり(船入)があった辺りです。目の前のモニュメントをご覧になって、大名屋敷の跡地は何に転用されたか、想像がつきますか?

タモリさん(仮) 向こうに見えてますが(笑)、コンクリート工場ですよね?

案内人(仮) はい。ここ仙台藩の屋敷の跡地は、明治5年に国営のその名も「摂綿篤(せめんと)製造所」が建ち、日本のセメント工業発祥の地とされています(資料)。清澄白河は、日本の近代化を支えてきた一面もあったのです。

江戸・東京に近いゆえに「ウンがいい」清澄白河

案内人(仮) こちらは東京都現代美術館です。さて、清澄白河は海だったと冒頭で申しましたが、実は隅田川沿いには、川が運んだ土砂による半島状の細長い土地があり、漁業が営まれていました。(※隅田川の範囲や呼称には変遷あり、資料

タモリさん(仮) なるほど……!

案内人(仮) その後、大火の拡大の要因となった「木場」(材木置き場)が移されますが、江戸に近いからやはり「蔵」を置けとなり、時を経て倉庫などに変化してゆきます。そして、作われなくなった倉庫に変化をもたらしたのが東京都現代美術館だったのですが、これはどういうことでしょうか?

倉庫兼アパートが、ギャラリーやカフェに
倉庫兼アパートが、ギャラリーやカフェに

タモリさん(仮) 倉庫と美術館……。どゆこと??

案内人(仮) はい。美術館の開設に刺激を受け、倉庫などを使ったギャラリーが広がっていったのです。その後、大がかりな道具でコーヒーを淹れるカフェも倉庫などを活用し、アートやコーヒー好きが集まる町になりました。

タモリさん(仮) アートもコーヒーも運河が運んできた、ウンがいい町。大名屋敷や格式の高いお寺も来たと!

案内人(仮) ご納得頂けましたか? 清澄白河は、もとは漁村あるいは、海を埋め立てた畑が広がっていたような場所。もう少し東には、江戸のごみ捨て場なんてのもありました。その後、木場、運河、蔵、大名屋敷(下屋敷)、寺院、商家、倉庫、工場、アート、コーヒー(順不同)と広がりを見せています。現在も、東京に近いうえに、運河沿いの土地・建物が活用しやすい「ウンがいい」町として、清澄白河は今日も発展を遂げているのです。

タモリさん(仮) 清澄白河は、ウンがいい!

あなたも「セルフ」でブラタモリ 方法は?
・スタート地点は有名観光地が基本。
・まずは変則的な土地(多くは傾斜、境目、不自然な直線)を探す。
・古地図アプリを活用(都内は「大江戸今昔めぐり」が便利。千葉、埼玉、神奈川は「古地図散歩」が便利。関西は「大阪こちずぶらり」「関西時層地図(有料)」等。名古屋は「ナゴヤちずぶら(有料)」等)。
・適当にブラブラしながら、気になる場所をチェック。Yahoo!検索も活用。とくにPDF化された論文には、マニアックな情報あり。
・資料館などがあればスタッフに話を聞く(今回は深川江戸資料館で、貴重なお話を伺いました)。
・メディアで有名な施設にはあまり行かず、グルメは後回し(その方がブラタモリらしく、また掘り出し物があるため)。
・家族や友人を連れてゆく場合、前半は親しみやすい場所、後半に行くほどマニアックに。
・家族や友人を連れてゆく場合、一方的に説明することを避け、とにもかくにも「疑問形」を重ねてゆく。
・また、つい言及したくなるプラスアルファの知識には口をつぐみ、メインテーマに絞る(今回は「清澄白河はウンがいい」に絞り、その他の情報は全てカットしています)

ぜひあなたも、ご近所や旅先で、セルフブラタモリを楽しんでみてください!

ブラタモリのやり方を思い出すために、全国ロケ地一覧もご活用ください。

【完全版】ブラタモリ 過去放送のロケ地一覧(とらべるじゃーな!)

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穴場ずらし旅、愛好家

関東周辺の穴場★ずらし旅スポットを紹介。日本テレビに旅の専門家として出演(2023年4月)。Yahoo!ニュースエキスパート公式旅行ライター(2023年7月企画賞)。JTB運営・地理旅行検定取得済み。東京都在住、旅行歴500泊以上。

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