米中摩擦のさなか、米国の広範囲に“中国郵政”による謎のタネ――品物欄には「宝石」「おもちゃ」など
米国のオハイオ、バージニア、テキサス各州など幅広い地域で、一般市民宅に、注文していない郵便物が送り付けられる事例が相次いでいる。米メディアによると、その大半に「中国郵政」の取り扱いと記され、中には「植物の種」が入っている。米中対立が激化するなか、“中国発”をかたる謎の郵便物に米国内が戸惑っている。
◇「注文していない」
米紙ニューヨーク・タイムズ(26日付)によると、ワシントンやバージニア、ケンタッキーなど、少なくとも27の州で、「中国郵政」の白い包装に入った未承諾の植物の種が多数送られている。いずれも受け取り側は「注文していない」としている。
主な州をみると、種の入った包装に関連して▽バージニアで900通を超えるメールと数百件の電話が寄せられた▽フロリダでは約160人から郵送で種を受け取ったと報告があった▽ルイジアナでは「ウズベキスタン発」とみられる種も含めて150件の電話が寄せられた――などと伝えられている。各州当局者によると、包装には「宝石が入っている」「イヤホン」「おもちゃ」などと表示されているという。
種の種類は明らかではないが、ルイジアナ州当局者は「州内の居住者が受け取った中にはスイレンの種があるようだ」と証言している。
◇ブラッシング詐欺?
謎の郵便物について、中国側も反応している。
中国外務省の汪文斌副報道局長は28日の定例記者会見で「このニュースが最近、米国や国際社会の一部で関心を持たれていることを注視している」との見解を示した。
汪氏は「米当局が中国郵政と確認したところ、これらの郵便にある『中国郵政』の伝票は偽造されており、伝票のレイアウトや情報に多くの誤りがある」と指摘。「中国郵政は調査のため、これらの偽の郵便物を中国に返送するよう米当局と既に交渉している」と明らかにしている。
オハイオ州の警察当局は「包装は『ブラッシング詐欺』のように思える」と話している。
当局によると、ブラッシング詐欺は販売業者が悪用するもので、▽事情を知らない受取人に安価な製品を手当たり次第に送り付ける▽受取人に代わって肯定的なレビューを書く▽それによって製品の評価を高め、オンラインでの認知度を上げる――という手口だ。
ただ、今回は発送側の意図が不明であり、種に何らかの危険物が含まれている可能性を排除できないため、各州当局は受取人に対し▽種を植えない▽包装と種を密封の袋に入れて、すぐに手を洗う――などを呼びかけている。