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俳優・石田純一さんによる安倍政権の改憲に反対する講演が二重の意味で良かった

篠田博之月刊『創』編集長
10月16日、「憲法と表現の自由」について語る石田純一さん(筆者撮影)

 2018年10月16日夜、都内で日本ペンクラブのシンポジウム「『憲法と表現の自由』の現在と未来」が開催され、最初の登壇者として俳優の石田純一さんが講演した。これがなかなか良くて、二重の意味で石田さんを改めて見直した。

 ひとつには、石田さんの改憲反対の思いがご自身の言葉で語られ、しかも正面から憲法について論じるという、貴重な講演だったことだ。安倍政権による改憲は、憲法を、権力を縛るものから国民を縛るものに変えようというものだ、という指摘や、憲法の保障する基本的人権についての御自身の考えなど、かなりしっかりした内容で、石田さんの憲法についての思いが伝わってきた。

講演する石田純一さん(筆者撮影)
講演する石田純一さん(筆者撮影)

 都知事選出馬騒動の時は、芸能人が安易な気持ちで関わるなといったブーイングも起きたが、安保法制反対の抗議行動以降の発言を今回の憲法講演まで連ねて考えると、石田さんが、かなりきちんと憲法や日本社会について自分の考えをつきつめていることがわかる。都知事選騒動は不幸ではあったが、石田さんはその中でも進化を遂げている。講演を聞いてそんな思いがした。

 二重の意味でという、もうひとつの意味は、いまでもテレビのレギュラー番組を持ち、俳優として活躍している石田さんが、この時期に憲法について発言することについての、ある種の覚悟のようなものが伝わってきたことだ。都知事選騒動以降、政治的発言を控えるという事務所の方針もあって、石田さんも突出するのを避けていた印象があるのだが、たぶんご自身の信念と、芸能人としての仕事とをどう両立させていくか。いろいろ悩み考えているのだろうと思う。

 その意味では、今年、日本ペンクラブに入会し、表現者として憲法について発言するという立ち位置が得られたのはよかったと思う。例えば吉永小百合さんも、戦争反対という主張を女優の仕事と完全に両立させている。日本では芸能人が政治的テーマにコミットすると仕事が来なくなると言われているのだが、一般論としてはそうであったとしても、個人の中でそれを両立させている人は少なくない。ペンクラブにも広義の芸能人で入会している人は他にもいる。

 石田さんの発言内容については、近々、日本ペンクラブのホームページで動画を公開すると思うので、ぜひアクセスしてほしい。

http://japanpen.or.jp/

 安倍政権による改憲が大きなテーマになりつつある時期での石田さんの発言は貴重だし、本人もこういう状況だからこそ発言しなければならないと思ったのだろう。

 

 石田さんは翌朝、大阪で仕事があるというので、シンポジウムは前半の途中で退席して関西へ向かったのだが、私もシンポを主催したペンクラブの言論表現委員会の副委員長として石田さんに挨拶をした。会場には、鈴木邦男さんら『創』でおなじみの人たちも来ていて、石田さんとサッと2ショット写真を撮るあたりはさすが。で、その時そばにいた和歌山カレー事件の支援をしている人が、石田さんは和歌山カレー事件についても発言されていて、というので「え、そうなの?」と思って、ブログを読むと、おー「デイリー新潮」のコラムで9月29日に書いていた。

思い込みへの警鐘。林真須美は本当にやったのか(石田純一)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180929-00549426-shincho-ent

 しかもこの記述だと、私の編集した『和歌山カレー事件 獄中からの手紙』(林眞須美他著、創出版)も読んでくれているみたいだ。

http://www.tsukuru.co.jp/books/2014/07/wakayama.html

 石田さんには今後も期待したいと思う。

 シンポジウムはそのほか、東京新聞の望月衣塑子記者や、国会議員の有田芳生さんらも登壇して発言したのだが、望月さんの体を動かしての講演は、ますますパフォーマンス性に磨きがかかっている。

身振りを交えた望月記者の講演(筆者撮影)
身振りを交えた望月記者の講演(筆者撮影)

 なかなか充実したシンポジウムで、打ち上げも望月さん始め大勢の参加を得て盛り上がった。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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