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アメリカ西部の湖に異変 水は白濁、クマは水浴び

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
世界屈指の透明度を誇る「タホ湖」の様子(写真:アフロ)

アメリカ海洋大気庁は、先週、下記の発表を行いました。

2015年の地球は、観測史上、最も暑い年になった。地球全体の温度は、産業革命前と比べて1℃以上、海水面は1990年代前半と比べ、7センチも上昇した。この気候変動により、世界各地で異常気象が起きている。

異常気象の起こした一つの例として、アメリカ西部の、ある湖で起きている変化について紹介したいと思います。

「タホ湖」で起きていること

カリフォルニア州とネバダ州をまたいだ、標高1,900メートルの高地に、「タホ湖 (Lake Tahoe)」と呼ばれる、世界屈指の透明度を持つ湖があります。南北40キロ、東西20キロの広大な湖は、どこまでも透き通ったコバルトブルーの水をたたえ、周囲を取り囲む美しい山々とで、絶景のパノラマを作り出しています。

このタホ湖で、異例の出来事が発生しているのです。

湖水が温まっている

気温上昇と雪の減少により、湖水の温度が前例のないペースで上昇しています。ここ4年の間、毎年平均で約0.2度ずつ水温が上昇しており、これは過去の気温上昇の、15倍ものスピードにあたります。去年の水面の温度は、史上最高の12度まで上がりました。

余談ですが、本来、タホ湖は水温が低いため、有機物の分解が進みづらい、という特徴があります。17年間湖水の中で行方不明になっていたダイバーが、数十年前に亡くなったとは思えない姿で発見されたこともあるほどです。

水が白濁している

水温の上昇などの原因によって、世界有数の透明度を誇っていたタホ湖の水が、白濁しています。2015年の透明度は22メートルとなり、その前年と比べ1.5メートルも下がりました。かつて「トムソーヤーの冒険」の作者、マーク・トウェインがこよなく愛した、美しきタホ湖も、今やその姿を変えようとしています。

湖水面が下がっている

カリフォルニア周辺では近年、史上類を見ない異常少雨に悩まされています。このため、タホ湖の水位が劇的に下がっており、湖とつながる川から、湖水が流れ出て行かない状態が続いています。

クマも水浴び

変化はそれだけではありません。先週、湖水浴を楽しむ人々に混じって、クマの親子が、水浴びを楽しむ光景が見られました。周囲の人々が意外に冷静なのにも驚きますが、クマの方も暑くて、人目を気にする余裕などないのでしょう。

水温の変化は、タホ湖だけではなく、その他の湖でも起きています。例えば、シベリアのバイカル湖やアメリカの五大湖などがその例で、水温の上昇が、そこに生息するアザラシや藻などといった生態系にも、影響を及ぼしているのです。

*参考資料*

タホ環境調査センター「湖に関する報告書2016」(PDF)

※訂正※

文中、2015年のタホ湖の温度を、12℃まで上がったとすべきを、下がったと書いておりました。お詫びして訂正致します。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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