「光る君へ」で描かれた刀伊の入寇と九州の武家
1日のNHK大河ドラマ「光る君へ」では、刀伊の入寇が描かれた。
元寇の250年以上も前に九州に大陸から外敵が侵攻してきたこの事件は、高校の日本史の教科書にも掲載されているのだが、その知名度はかなり低い。刀伊とは女真族の一派で、対馬・壱岐を襲ったのちに筑前国にも襲来した。
ドラマ最後の紀行コーナーでも「刀伊の入寇は、やがて訪れる武士の時代を予感させるものとなったのです」とあったように、この事件を契機に武士の力が強くなる。
そして、関東の武士が九州に土着することで名字が移動し、また九州各地の地名を名字とすることによって新しい名字が生まれた。
平為賢と伊佐氏
その祖となったのが、ドラマにも登場していた2人の人物である。
1人は、神尾佑演じる藤原隆家の家臣平為賢である。ドラマでは双寿丸の主人として以前から登場していた。
双寿丸と違って平為賢は実在の人物だが、その経歴などははっきりしない。伊佐為賢とも名乗り、「伊佐」という名字の地が常陸国伊佐郡(現在の茨城県)であることでもわかるように、本来は関東の平氏の一族である。
為賢はこのときの活躍で肥前国に所領を賜り、子孫は肥前に土着して肥前伊佐氏になったという。
大蔵種材とその子孫
そしてもう1人が、大宰府の役人として1日に登場した、朝倉伸二演じる大蔵種材(たねき)。こちらも実在の人物である。
大蔵氏は渡来人の末裔と伝える古代豪族で、平安時代には下級官僚にすぎなかった。しかし、天慶3年(940)に春実が藤原純友の乱の追捕凶賊使となり、大宰府の官人として九州に転じていた。
この春実の孫が種材で、大宰権帥藤原隆家のもとで刀伊の入寇の撃退に活躍。乱後はその功により壱岐守に任じられている。
そして、子孫は筑前国夜須郡秋月荘(現在の福岡県朝倉市)に住んで秋月氏を名乗った。戦国時代には秋月城に拠る有力戦国大名となり、江戸時代は日向高鍋藩主となっている。
また筑前国の戦国大名原田氏も同族である。
その祖については諸説あるが、名字の地は筑前国怡土郡原田(現在の福岡県前原市)で、源平合戦の際には平家方として登場している。そのため鎌倉時代には雌伏していたものの、南北朝時代頃から再び台頭し、こちらも戦国時代には筑前国の大名となった。
この他にも、波多江氏、江上氏、三原氏など、大蔵氏末裔と伝える筑前・筑後の武士は多い。