飛び過ぎる統一球で安打が443本増える
またしても統一球に関する問題
飛ばないことが問題となり、その後変更を公表しなかったことが問題となった統一球、今度は飛ぶことが問題となった。
両リーグのアグリーメントで定められたボールの反発係数の基準値は0.4034~0.4234。しかし、第三者機関の検査で明らかにされた数値は0.426。統一球の製造元、ミズノの説明によれば素材は去年と変えていないが、芯に巻くウールの乾燥により反発係数が上がった可能性があるという。3月29日に試合が行われた6球場の内5球場で反発係数の基準値を超えていた。反発係数が0.001変わると飛距離は20cm変わると言われている。検査が行われた6球場の中で最も数値が高かったのが東京ドームで0.428。基準値の下限との差は0.0246、飛距離に直せば約5mの違いになる。開幕から10試合消化時点の総本塁打数は昨季の78本から95本へと増加。5mの違いであってもプロのレベルになると20発近くの差が出る。
今季はここまで1試合当たりの平均本塁打数が0.78本。過去5年間は
2013年 0.76本
2012年 0.51本
2011年 0.55本
2010年 0.93本
2009年 0.89本
反発係数の下限値を下回る”飛ばないボール”が使用されていた2年間がいかに本塁打が出にくかったかがよく分かる。乱打戦が多い印象の今季だが、昨季の数字と比べると印象ほどの差は無い。
本塁打数以上に安打数に影響が
飛距離が変わるという点からどうしても本塁打数に注目が集まりがち。確かに、フェンス際の打球が本塁打になるか外野フライになるかは大きな違いだが、反発力が高くなるということは打球スピードも速くなり、野手が追いつけたはずの打球が外野に抜けたり、強襲安打になることも十分に考えられる。
平均安打数
2014年 8.91本
2013年 8.65本
2012年 8.10本
2011年 8.04本
2010年 9.11本
2009年 8.79本
2011年に飛ばないボールが導入されると、安打数は1試合当たり1本以上減少。12球団全体では1855本も減っている。そして、NPBが公表しないまま飛ぶボールに変更した2013年には前年から956本増加。今季は更に443本増えるペースだ。
今回、反発係数が基準値を超えているという事実を知ったプロ野球選手会の嶋会長(楽天)は「係数が上がることで僕らの生活が変わることをもう一度しっかり認識してほしい」とコメント。まさしくその通りであろう。
コミッショナーの手腕が問われる
5カード終了時点での本塁打数トップはペーニャ(オリックス)。14試合で7本だから、シーズン換算で72発ペースだ。日本記録保持者・バレンティン(ヤクルト)も66発ペース、マートン(阪神)も57発ペースで本塁打を量産中。NPBの今季のスローガンは
「NEW PLAY BALL!あたらしい球史をつくる。」
皮肉にも飛ぶボールによって、昨季約半世紀ぶりに更新されたシーズン本塁打記録がわずか1年で塗り替えられる勢いだ。
事が起きてしまった以上、ここからどういう措置を取るのかが最も重要。ルールとファンあってのプロスポーツ、熊崎コミッショナーの今後の舵取りに注目が集まる。