中国の大学生の間で大流行の四つんばい 政府への無言の抵抗か、単なるストレス発散か?
11月上旬以降、突如として、中国の大学生の間で「四つんばい」が大流行するという奇妙な現象が巻き起こっている。11月8日、北京市にある中国伝媒大学の学生が「皆で運動場に集まって、四つんばいになって歩こう」と呼びかけたところ、数十人の学生が参加したことがきっかけだ。
動画がSNSで拡散されると、同様の動きは同じく北京の清華大学、中国人民大学、対外経済貿易大学、中央財経大学といった名門大学の学生にも瞬く間に伝播。一大ブームの様相を呈してきた。
四つんばい動画は検閲されていない
中国や香港メディアの報道によると、このようなブームが起きてからわずか1週間だが、同様に「四つんばい」になって歩く大学生は増え続けており、地方の大学生にまで広がっている。
一部は大学側の規制がかかり、行動がさえぎられているという情報もあるが、中国のサイトで「爬行」「四肢着地」など「はって歩く」意味のワードで検索してみると、現在も中国伝媒大学の学生たちの動画や記事が多数出回っており、とくに検閲されているわけではないようだ。
むしろ、複数の中国メディアも学生たちの奇妙な行動に注目しており、インタビュー動画も出回っている。
北京のある大学生は「友だちから情報が回ってきた。おもしろそうなので参加してみた。コロナの影響で皆、大学の敷地から外に出られないので、おもしろがってやっている」と答え、別のある大学生は「中国の伝統的な気功の動きである五禽戯(ウーチンシー)に似ていて興味深い。コロナであまり出かけられず、運動不足の学生が多いので、健康にいいと思う。皆で集まって、外で何かをすることは楽しい」と答えていた。
五禽戯とは中国の伝統的な養生のための動きで、虎、鹿、熊、猿、鶏などの動きを真似するような気功。いま若者の間で流行っている「四つん這い」も熊や猫、ワニのような動きだと言われており、これに似ているというのだ。
四つんばいは以前からあった運動の一種
さらに、中国メディアではここ数年、「四つんばい」は公園などでの大人の運動でも取り入れられているものであり、とくに新しい現象ではないと指摘。
その動画を見てみると、大学生が行っている四つんばい歩行とは異なり、本格的なスポーツウエアに身を包み、手と足を大きく前に伸ばして地面を大きく這う「高這い」をしていることがわかる。ロッククライミングを地面で行っているような格好だ。
かなりの運動量が必要に見えるが、中国メディアではこうした動画に医師のコメントをつけ、「高這いは股関節の運動になり、体幹も鍛えられる。血糖値の上昇を防ぎ、全身運動になる」と指摘している。
大学生たちが「四つんばい」という奇妙に見える行動を突然思いついたのも、もしかしたら、最近中国で増えている「高這い」運動の影響もあるかもしれない。
すぐに飽きるかもしれないブームとの見方も?
大学生がSNSに書き込んでいる告知には「大型四つんばい検討会」というタイトルで「今夜8時半、運動場に集合。20人程度。持参するものは手袋、ひざあてなど。皆で一緒に10~15分程度、四つんばいをしましょう。基礎的な四つんばいができる人は、もっと高度な動きをしてもいいです」などと書かれている。
中国に住む知り合いの大学生に聞いてみたところ、「いま中国では飛盤(フェイパン=フリスビー)が大流行していて、皆がやっているから自分もやる、という人がとても多いのですが、今回の四つんばいブームも同じような現象かもしれません。
皆がやっていて、おもしろそうなので、自分もやってみたいということかも。大昔の人間は四足歩行だったというけど、そのせいか、初めてだけど新鮮な動きだと思います。ただ、中国人ですから、すぐに飽きる可能性もありますが……」と話していた。
日本メディアでは「政府への無言の抵抗ではないか」との報道があり、そうした「隠れた本当の理由」が背景にあるのかもしれない。だが、それを検証し、確かめることは難しい。学生たちがキャンパス内に閉じ込められ、精神的に不安定になっているというのは事実だろうが、それが今回の行動とどの程度結びついているかもわからない。
少なくとも、ゼロコロナ政策の下、不自由な生活を強いられている若い大学生たちが、誰にも迷惑をかけない「四つんばい」で少しでもストレス解消ができればいいのだが……と思ってしまう。