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JR北海道、特急列車の「快速格下げ」検討大丈夫? 快速化2年半で廃止された「こまくさ号」の過去事例

鉄道乗蔵鉄道ライター
快速こまくさ同型車(写真:MaedaAkihiko CC BY-SA 4.0)

 2024年3月のダイヤ改正で利用低迷が続く札幌―室蘭間の特急すずらん号。利用低迷の原因については2024年6月12日付記事(JR北海道社長、定例記者会見で「快速格下げ」に含み 札幌―室蘭間結ぶ特急すずらん号、利用低迷で)で解説しているが、JR北海道の綿貫社長は6月11日に行われた定例記者会見の場で「安くご利用というニーズが強いのであれば、特急でなくてもいいと思う」と発言し、すずらん号の特急列車から快速列車などへの格下げについても含みを持たせた。すずらん号の快速列車への格下げで懸念されることは、車両のグレード低下による客離れだ。

 すずらん号の快速化に当たっては、そのままの車両が使用されるのであれば特に問題はないが、現在使用されている785系電車の登場が1990年と車両の老朽化が進んでいることから、快速化となった場合には、札幌圏の主力電車である通勤型でロングシート仕様の733系や737系電車となるのではないかという見方もある。

快速格下げ2年半で消えた快速こまくさ号

 かつて、特急列車から快速列車への格下げを行い、車両グレードの低下からさらなる客離れを招いたようで、わずか2年半で姿を消した快速こまくさ号という列車があった。快速こまくさ号はもともとは、JR東日本・奥羽本線の山形駅(山形県山形市)と新庄駅(山形県新庄市)、秋田駅(秋田県秋田市)を結ぶ特急列車であったが、1999年3月のダイヤ改正で山形新幹線の新庄駅乗り入れ準備に伴い新庄―秋田間を結ぶ快速こまくさ号に格下げ。

 車両は通勤仕様のオールロングシートの701系が導入されたがその乗車時間は2時間以上に及び、こうした居住性の悪さが利用者から敬遠されたのか快速こまくさ号は快速列車への格下げからわずか2年半で廃止されてしまった。車両についてはせめて長距離乗車にも耐えられるリクライニングシートであれば利用状況は違ったのかもしれないが、安易な快速化が客離れを招いたと考えられる例である。

快速こまくさ号ではこの車内設備で、新庄ー秋田間で2時間以上の乗車を迫られた(写真:東京特許許可局 CC BY-SA 3.0)
快速こまくさ号ではこの車内設備で、新庄ー秋田間で2時間以上の乗車を迫られた(写真:東京特許許可局 CC BY-SA 3.0)

 JR北海道は、来年2025年3月のダイヤ改正においても、旭川―網走間を結ぶ特急大雪号の快速列車への格下げをする方向で検討していることが明らかとなった。現在キハ283系気動車3両編成によって運行されている特急大雪号をワンマン運転の2両編成の快速列車とすることで運行にかかる要員を減らし、車両の維持や更新にかかるコスト削減も狙うという。使用される車両についてはH100形となるのではないかという見方が大勢であるが、現行のH100形の車内設備は、4人掛けと2人掛けのボックス席が3組で残りはロングシートとなり1両あたりの座席数はわずか36席だ。この車両で旭川―網走間の約3時間50分を移動するとなると居住性の低下を嫌って、利用を敬遠する利用者も出てくるのではないだろうか。なお、現在、特急大雪号に使用されているキハ283系は1両あたりの座席数はリクライニングシートが50席前後となっている。

 JR北海道の特急列車の快速化の検討は、特急すずらん号に使用されている785系電車は1990年の登場、特急大雪号に使用されているキハ283系気動車は1997年の登場で、いずれも車両の老朽化が進んでいる車両だ。こうしたことから、なるべく車両の更新にかかる投資を行いたくないのではないかという意図も垣間見えるが、仮に本業である鉄道事業のサービスレベルを低下させ客離れを招くようなことがあるとするならば本末転倒なのではないだろうか。

特急時代の「こまくさ」号(Public Domain)
特急時代の「こまくさ」号(Public Domain)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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