究極の高級ひとり飯?ANA機内食レストラン「翼のレストラン」実食レポート。動かない飛行機での食事は
3月31日(水)、羽田空港ではANA国際線のファーストクラス・ビジネスクラスの機内食をレストランとして動かない機体の機内で楽しめる機内食レストラン企画「翼のレストランHANEDA~地上でファースト・ビジネスクラス体験~」が実施された。
羽田空港で普段は長距離国際線で使われている飛行機(ボーイング777-300ER型機)を使い、国内線ゲートのスポットに入った状態で昼の部と夜の部の2回開催した。
ファーストクラスの機内食を予約
筆者は実際に夜の部のファーストクラスを予約して利用してきた。今回は、ファーストクラス、ビジネスクラスが対象で、ファーストクラスは一人5万9800円、ビジネスクラスは一人2万9800円で販売され、平日での開催にも関わらず数日で全て完売となった。筆者は発売日当日に予約した。
そして3月31日当日、まずはチェックインとなるが、羽田空港第2ターミナル2階の国内線チェックインカウンターに翼のレストラン専用の受付カウンターで搭乗手続きをした。ファーストクラスとビジネスクラスでカウンターは分かれており、名前の確認の後、搭乗券とANAラウンジの利用券が渡された。
国際線と同じ搭乗券で目的地はフランクフルトに(?)
まず驚いたのが搭乗券だった。国際線の機内食を提供するということで、普段海外へ出かける際に発行されるのと同じ国際線の名前入りの搭乗券が用意されていたのだ。便名は「NH7772便」、出発地は「TOKYO/HND(東京・羽田)」、目的地はFRANKFURT/FRA(ドイツ・フランクフルト)」となっており、出発時刻・座席番号・搭乗口・搭乗時刻などの情報が定期便同様に印字されていた。そして、ファーストクラスでは「F」、ビジネスクラスでは「C 」と大きく印字されており、搭乗券を見ているだけでもワクワクした気持ちになった。ちなみに便名の7772は、今回使用されたボーイング777型機を意味しており、昼の部は「NH7771便」、夜の部は「NH7772便」 となった。実際にフランクフルトへ飛ぶことはないが、気分はヨーロッパ旅行である。
ラウンジの利用も可能。ウェイティングバーのような位置づけ
そして搭乗券を持って保安検査場を通過し、その後は国内線の「ANAラウンジ」で搭乗開始時間までゆっくり過ごすことができた。普段、マイレージプログラムの上級会員やファーストクラス、ビジネスクラス以外では利用することができないラウンジの体験もできるのも、今回の機内食レストランならではである。国内線のラウンジということで、ドリンクが中心となるが(アルコール類も含む)、高級レストランのウェイティングバーのような位置づけなのかもしれないと感じた。
開始30分前に搭乗開始。シートベルトの着用は不要
夜の部のスタートは18時からとなっており、30分前の17時半過ぎから搭乗開始となった。搭乗券を通常の国際線の飛行機に乗るときと同様に係員に渡して機械で読み取り、機内へ向かった。今回はファーストクラスとビジネスクラスのみの設定ということで、利用者は1回あたり50人強となっている(昼の部はファーストクラス8人、ビジネスクラス48人の合計56人だった)。
機内に入ると、客室乗務員が自分の座席へ案内してくた。今回の機内食レストランでは、ANAの国際線で活躍している客室乗務員(CA)が乗務しており、機内でのサービスを担当する。今回筆者はファーストクラスでの利用となったが、完全セパレートされた大型シートであり、普段利用することのないファーストクラスということもあり、更に気持ちが高揚した。通常のフライトと異なる点としては、シートベルトの着用は不要であった。席に座るとまずはウエルカムドリンクとして、スパークリングワインもしくはオレンジジュースが提供された。これも国際線と同様のサービスであり、窓から外の景色を見ながら開始時間の18時を迎えた。
18時に機内食レストラン「翼のレストランHANEDA」がオープン。機内食シェフも同乗
夜の部は18時に機内アナウンスで機内食レストランのオープンがアナウンスされた。通常の国際線機内では機内食を製造する機内食工場のシェフが搭乗することはないが、今回の機内食レストランではシェフも機内でお客様に料理の説明を直接するという徹底ぶりで、今回はANAケータリングサービスの洋食調理部部長の山田真吾シェフ、和食調理部部長の久保正信調理人も同乗した。
シャンパーニュの最高峰「KRUG」とアミューズからスタート。アルコール類の種類も豊富
筆者は洋食メニューでメインディッシュはお肉料理で事前に注文していたが、 まずは前菜前のアミューズからスタート。アミューズは「抹茶アーモンドスティック」「シーフードのタルタル」「富山湾産白えびの昆布〆」「フォアグラロール」という組み合わせで、ANAファーストクラスを象徴するフランス・シャンパーニュ地方のシャンパーニュの最高峰「KRUG(クリュッグ)」と共に堪能したが、気分は完全に高級フレンチレストランにいる気分だ。
今回の機内食レストランでは、実際にANA国際線長距離路線で提供されているシャンパン、ワイン、日本酒、焼酎などはそのまま搭載されており、今回ファーストクラスではフランスのシャンパーニュ地方のシャンパーニュが2種類、白ワインは山梨県の「甲州ANAオリジナルブレンド2017」をはじめ、ドイツワイン、そしてフランス・ブルゴーニュのシャブリの3種類、赤ワインはアメリカ・カリフォルニアのナパ・ヴァレーの「紫鈴(りんどう)2016」をはじめ、スペイン、そしてフランス・ブルゴーニュの赤ワインが搭載されていた。また日本酒も福島県の大七酒造の「大七 純米大吟醸 箕輪門」など3種類、そして焼酎では鹿児島県の村尾商店の「村尾」など3種類が用意されていた。
ファーストクラスではキャビアも瓶で提供された。機内は揺れないので食事に集中できた
そして次にアペタイザー(前菜)として、「赤ピーマンムースと蟹のガトー仕立て キャビアとともに」のお皿が。そのなかでもファーストクラスの代名詞とも言われるキャビアが瓶で提供された。フレンチでも瓶ごと提供される機会はほとんどなく、ファーストクラスでの楽しみの1つである。シャンパーニュを飲みながらスプーンでキャビアを心ゆくまで堪能したが、通常の機内では軽い揺れやエンジン音を聴きながらの食事になるが、今回は駐機している状態であることから、揺れはなく、飛行機に乗っている以上に食事に集中できる環境にあったのだ。
更に独立席であり、特にファーストクラスでは一人での参加者がほとんどで、自分だけの静かな空間での食事は、味覚をゆっくり味わう、レストランとも異なる環境での食事の時間となった。そして何よりもお酒がなくなると、客室乗務員が次のお酒のオススメを教えていただけるのは機内ならではあり、白ワイン「甲州ANAオリジナルブレンド2017」を次に飲むことにした。アペタイザーのあとは、メインの前にメニューにはないが希望すると出していただけるコーンスープとサラダを堪能した。
メインディッシュは和牛フィレ肉。ワインとの相性も抜群だった
いよいよメインディッシュ。お肉料理「和牛フィレ肉のグリル 神戸ワインマスタード風味」をシェフ自らテーブルにサーブしていただいた。マスタード種子を特殊な製法によって神戸ワインの中で熟成させた神戸ワインマスタードを和牛フィレグリルの上に乗せて、付け合わせの九条ネギと共にマスタードの芳醇な風味とネギの香りが口の中に広がるメインディッシュであったが、フィレ肉の食感が素晴らしく、紛れもなく高級フレンチレストランで食事をしている気分になった。ワインも料理に最も合うアメリカ・カリフォルニアのナパ・ヴァレーの「紫鈴(りんどう)2016」を出していただいたが、お肉との相性も抜群だった。
シェフ自ら機内アナウンスで通常のレストランとの違いや機内食製造する上での開発のポイントなどを解説
通常のレストランとの違いや機内食製造する上での開発のポイントなどについてシェフが機内アナウンスで紹介してくれた。大きな違いとしては、コックが調理から盛り付けまで行うレストランと製造後に搭載業務やCAによる再加熱をして盛り付けするという違いがあるそうだ。作り手の想いやアピールポイント、盛り付けのイメージが伝わりづらい環境にあるが、盛り付けの動画撮影をしてCA全体と共有することで調理人の想いとイメージを伝えることでコミュニケーション強化を図り、高い位置での安定を目指しているとのことだ。メニュー開発においては、地上と味の感じ方の違いを考慮してはっきりした味付けにしているそうで、塩味が強めではなく、甘み・酸味・にがみ・コクなどを強調した味付けという意味だそうだ。
今回、シェフが各座席を回り、お客様と会話する光景が多く見られたが、機内食の疑問やこだわりを質問するなど、普段の機内では見られない光景があった。筆者もシェフに色々お話を聞いたが、ファーストクラスやビジネスクラスの機内食は、街中の高級レストランに負けない味を提供しているという強い自負があり、実際に地上で食べてみても、その言葉通りの味であった。
デザートが提供され、あっという間の3時間
そしてデザートの時間となり、事前に注文していた「桜モンブラン」を堪能したが、スイーツ専門のシェフが作り上げたデザートらしく、味はもちろんであるが、色合いや盛り付け方も含めてパーフェクトであった。デザート以外にもチーズ、更にはコーヒーを飲んでいると、あっという間に約3時間が経過し、閉店時間(飛行機を降りる)の21時となった。あっという間の3時間となり、筆者もほろ酔い気分で飛行機を降りた。本当に至福の時間となった。
ファーストクラス5万9800円、ビジネスクラス2万9800円は決して高くはなかった
今回、ファーストクラスは5万9800円、ビジネスクラスで2万9800円の料金設定となったが、今回実際に「翼のレストランHANEDA」に搭乗して感じたこととしては、申込時には筆者自身も割高感を感じていたが、実際に利用してみると、最高級の料理、そして何よりも厳選されたシャンパン、ワイン、日本酒、焼酎が機内同様に自分が飲みたいタイミングで好きな量を飲めるということを考えると、価格的には納得できるものであった。特にお酒を少量を少しずつ楽しみたい人にとっては最高だと思う。レストランと違ってアラカルトメニューはないが、動かない飛行機での機内食高級ディナーというのはマーケット的にも成立するということを筆者は確信した。実際に利用した人の何人かに話を聞いたが、大満足だったという声がほとんどであり、また利用したいという人が多かった。
究極のひとり飯、そして旅行に出かけられない年配者へのプレゼントにも最適
その中で「究極のひとり飯」「年配者の方へのプレゼント」に最適だろうと思った。ファーストクラス、ビジネスクラスのシートは、完全独立型の一人席となっており、 高級レストランの「究極のひとり飯」と言える。1人で高級フレンチレストランや料亭などに入ることは非常に敷居が高いが、今回の機内食レストランでは、全てのシートが一人席になっていることで、周りを気にせずに自分のペースでゆっくり食べることが可能である。
2名での利用においては、ファーストクラス、ビジネスクラス共に真ん中の席になれば(事前の座席指定はできないが)、会話することも可能である。今回実際に機内食レストランを体感した中で、高齢の年配者で体力的に海外旅行へ出かけるのが難しい人が少しでも海外旅行気分を味わうべく、機内食レストランで国際線の機内食を堪能して長距離国際線フライトの気分を楽しむという活用法もあるだろうと思った。
例えば子供や孫がおじいちゃん・おばあちゃんを機内食レストランをプレゼントすれば、きっと喜んでもらえることは間違いない。 羽田空港に駐機中の飛行機の中でのレストランということで、何かあってもすぐに飛行機から降りられる点も含めて安心して利用することができるからだ。
欲をいえば、あと1時間あればフルフラット状態でのリラックスタイムでより楽しめただろう
最後に欲を言えば、今回は3時間での開催となったが、筆者も含めて、もう1時間機内で過ごしたいという声が多くあった。というのも、ウエルカムドリンクからデザートまで3時間弱の時間を要することで、ファーストクラス、ビジネスクラスの魅力であるフルフラットシートを体感する時間が限られており、食後の1時間を機内で過ごせれば、フルフラットにするなどしてリラックスする時間が取れたという声だ。3時間を過ぎた段階で降りたい人は降機して、まだ機内でゆっくり過ごしたい人は、更に1時間ゆっくりできるといった形が望ましいだろう。
好評だったことから4月14日~27日までの11日間で実施決定
初回の予約が好調だったことから、4月14日(水)、16日(金)、17日(土)、18日(日)、19日(月)、21日(水)、23日(金)、24日(土)、25日(日)、26日(月)、27日(火)の合計11日間、羽田空港で開催することが決定した。全て昼の部と夜の部の2回開催となる。ANAホームページ内の「ANA国内チャーターイベント特集」の専用サイトから申し込みが可能となっている。ファーストクラスは多くの日で満席になっているが、ビジネスクラスでの申し込みは可能な日が多い。
コロナ禍でなければ生まれなかった企画であるが、自由に海外旅行へ出かけられない状況のなか、国際線の機内食を機内で楽しむというアイデアは予想以上のヒットとなった。動かない飛行機での機内食、一度は体験してみるのも面白いだろう。