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蓮佛美沙子が30歳で初の直球な恋愛ドラマ『理想のオトコ』に主演 「普通なことが私の強みなのかな」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『理想のオトコ』に主演している蓮佛美沙子(テレビ東京提供)

蓮佛美沙子が主演するドラマ『理想のオトコ』が話題を呼んでいる。アラサー女性が2人の男性の間で揺れる大人の恋物語。意外にも蓮佛がストレートな恋愛ドラマに出演するのは初めてだという。大規模な女優オーディションのグランプリからデビューして16年。変わらぬ活躍を続け、今年2月に30歳に。演技観や恋愛観の変遷を聴いた。

今も役について悩むことが多いです

――2月で30歳になられましたが、女優人生は10代、20代と悔いなく送れました?

蓮佛 そうですね。元気に続けてこられて良かったなと思ってます。

――『理想のオトコ』が初めてのド直球な恋愛ドラマとのことですが、キラキラした青春ラブストーリーもやっておきたかった……みたいなこともないですか?

蓮佛 なるほど! 今言われて「確かに」と思いました(笑)。学園モノをそんなにやってなかったんですよね。『君に届け』、『Q10』、『夜のせんせい』……それくらい? でも、出会えた作品に感謝して、その都度、全力投球してきたので。制服をもう少し着ておきたかった、というくらいです(笑)。

――役柄によって得意とか苦手とかは、もはやないですか?

蓮佛 そもそも、やりやすい役という概念があまりありません。最近も『きれいのくに』は今までで一番難しいと思いましたし、悩むことのほうが多いです。たとえばコメディだと、何作やってもテンポや間合いが相手の役者さんや雰囲気によって変わるし、ここ数年で挑戦したミュージカルだと、歌で伝えることに特有の難しさがあったり。言い出したらキリがありません。

――『理想のオトコ』でも、悩みどころはありました?

蓮佛 この作品に関しては、すごく共感できる話だったこともあって、「どう表現したらいいのかわからない」みたいなことはなくて。そういう意味では、私には珍しい作品でした。伸び伸びと、どうなるかわからないけどやってみようと。自然体で、お芝居を受けて返す感じでした。基本的にものすごく作り込んだ役以外は、いつでもナチュラルにお芝居に向き合っていたいと思っています。

テレビ東京提供
テレビ東京提供

「自分の世界にいそう」と思われることを大事に

――蓮佛さんは15歳でデビューしてから、出演作が途切れることなく、活躍を続けてきました。自分の女優としての強みは、どんなことだと思いますか?

蓮佛 普通なことですかね。よく「普通だよね」と言われるんですけど、誉め言葉として受け取っています。「自分の生きてる世界にいそう」と思ってもらえるのは、ある種の強みかなと。自分の心持ちとしても、そういう自然な感じはずっと持ち続けていたいです。

――華やかな世界にいて普通さを保つのは、難しいことではないですか?

蓮佛 それは多少あると思います。私自身、この業界でしかお仕事したことがなくて、たとえば、普通は夜の12時を“てっぺん”とか言わないじゃないですか(笑)。ちょっと変なたとえですけど、そういうところに染まりすぎたくないと思っています。結婚して2児の母になった大学時代の友だちがいるんですけど、日々子育てに忙しい中で、誕生日に私の家に1人で泊まりに来てくれて、それが年に1回くらいの一大イベントだと言ってくれました。そういういろいろな価値観を、ちゃんとわかる人でいたいなと思っています。

――初主演作『転校生-さよなら あなた-』で、大林宜彦監督に言われた「芝居に正解も不正解もない」という言葉を、大事にされているそうですね。

蓮佛 自分の根拠のない自信に繋がっています。誰も否定しない言葉で、正解も不正解もないなら何を試したっていい。今でも自分のベース中のベースで、本当に支えになっています。

――性格的に正解を求めがちなだけに、とか?

蓮佛 結論は早く出したがります。ウダウダしている時間がイヤで、結果的にウダウダしてしまうことはあっても、「これは違うな」と思ったら、気持ちの切り替えはたぶん人より早いです。

テレビ東京提供
テレビ東京提供

大人になると好きなだけでは動けなくて

『理想のオトコ』で蓮佛が演じるのは、恋愛から久しく遠ざかっていた32歳の美容師・小松燈子。親友の編集者・安積茉莉沙(藤井美菜)から10歳年上のマンガ家・ミツヤス(安藤政信)の身なりを整えてほしいと頼まれる。そのまま授賞式を訪れると、高校時代の同級生・志摩圭吾(味方良介)と再会。突然、人生一番のモテ期がやってくる。

――『理想のオトコ』の燈子は、アラサー女子として共感どころが多かったわけですか?

蓮佛 自分とドンピシャで同じ世代ですし、恋愛について言えば、大人になっていろいろ知ってしまったからこそ、好きという気持ちだけでは動けないジレンマはよくわかります。でも、演じていて思ったのは、恋愛したら大人とか若いとか関係なく、みんなかわいいなと(笑)。大人でも、好きな人とつき合うか、つき合わないかというときはドギマギするし、どれだけ経験を重ねても、すれ違いはある。それでいいんだと思えました。

――蓮佛さんにも覚えがある心情だったと?

蓮佛 恋愛の入口で「あれ? 私、この人が好きなのかな?」と思い始めてから、どうしていいかわからなくなる感じは、すごくわかりました。燈子は傍から見たら「絶対好きでしょう」とわかるので、私はそこまで鈍感ではないつもりですけど(笑)、恋愛に関してグルグル考えすぎてしまうのは経験あります。

――以前テレビで「好きだと思った途端、何もできなくなる。メールを送るくらい」と話されていました。あまり自分から積極的には行かないんですか?

蓮佛 自分の中では、メールを送るだけで「頑張ってるぞ」みたいな気持ちになってしまいます(笑)。ごはんに誘ったりとか、気軽にできません。そういう意味では、あまりガツガツしていません。

――燈子には「結婚だって真剣に考えなきゃいけないってわかっているのに……」という独白もありました。

蓮佛 私個人としては、「30代だから結婚を真剣に考えなきゃいけない」という理屈はあまりピンとこなくて。「好きなように生きなよ」と思ってしまうというか(笑)。私自身も今、結婚に対して具体的な願望があるわけでもないですし。だから、燈子が漠然と理想の人は求めながら、結婚している茉莉沙に「32歳で何の色恋もないのはヤバイよ」みたいに言われても、焦りはあまり感じてないのはわかります。

――急に2人の男性から想いを寄せられた燈子のように、蓮佛さんにもモテ期はありました?

蓮佛 中3でこの世界に入るきっかけのオーディションに合格したとき、次の日のワイドショーで放送されたら、3人から「実は好きでした」と告白されました。でも、絶対本気で好きではないですよね(笑)。「テレビに出たから言ったんでしょう?」みたいな、疑似モテ期はありました。

受けのお芝居で身構えずに自然体で

――『理想のオトコ』の撮影では、恋愛ドラマならではのことはありましたか?

蓮佛 個人的に以前もお仕事したことのあるスタッフの方がいて、キスシーンは親に見られているような感覚が若干ありました(笑)。でも、普段のお芝居と何ら変わりなく、恋愛モノだからとヘンに緊張したり、身構えることもなかったです。燈子というキャラクターがすごくナチュラルな女性だったので、役としてドキドキする気持ちを大事にしたいと思ってました。キャストの皆さんも自然体な方が多かったので、私も背伸びすることなくできました。

――特に演技プランがあったわけではなくて?

蓮佛 主人公でほとんど出ずっぱりで、燈子の気持ちに寄り添ってドラマが展開していくので、誇張した表現をするより、ナチュラルに演じるようにしました。恋愛が久しぶりで、どうしたらいいかわからなくて思い悩んでいる役で、受けのお芝居でしたね。安藤さんや他の役者さんたちに投げられたボールを、きちんと受け取って返すようにしようと。そこがナチュラルにできないと、観ている方が感情移入できないと思ったので、とにかく自然体で演じる。何なら、意識したのはそこだけくらいでした。

――現場の空き時間とかで、共演者の方と話したりも?

蓮佛 藤井さんは同世代で話しやすい方で、「お酒飲みますか?」とか他愛ない話をしてました。みんなでいたときに、瀬戸(利樹)くんに「エレベーターで女性は男性に上に立たれるのがいいか、下がいいか?」みたいな質問をされたり、恋愛話もしましたね。

――“理想のオトコ”について話したりも?

蓮佛 理想までは話しませんでしたけど、「この作品の男性で誰推し?」みたいな話は、スタッフさんともしました。私はマンガでは(ミツヤスのアシスタントの)最賀くん推しなんです。ドラマではちょっと描かれ方が違いますけど、一途でひたむきな感じがかわいくて、読んでいてキュンキュンしました(笑)。

(C)「理想のオトコ」製作委員会
(C)「理想のオトコ」製作委員会

理想は自分を大事にしてくれることだけです

――蓮佛さんの“理想のオトコ”像は、年齢を重ねて変化しました?

蓮佛 そもそも昔も今も、明白な理想が自分の中になくて。ドラマの現場でも「理想って何だろう?」とずっと考えてましたけど、究極は私のことを好きでいてくれる人かなと。そういう想いがあるかどうかは、言葉や態度で全部わかるものなので、私を大事にしてくれる人が理想で、それさえあればいい。そこはずっと変わりません。

――劇中では「男の人に守ってもらいたいと思ってた」という言葉も出てきますが、結婚も踏まえて、相手との関係性についての理想はありますか?

蓮佛 お互いに「こうされたい。こうしてほしい」となるより、臨機応変に支え合うというか、どちらかが弱っていたら相手が引っ張ってあげる。型にハマらないで思い合う関係が、一番理想の形ですかね。一緒にいる意味は、そういうことかなと思います。

――今は結婚願望はないとのことでしたが、世の女性にわりとあるかもしれない「30歳までに」みたいな焦りもなかったですか?

蓮佛 一切なかったです。24歳とか25歳の頃、周りで結婚や出産が続いたときも、「へーっ。そうなんだ」と良くも悪くも他人ごとのように聞いてました。結婚というもの自体に重きを置いてなくて。「将来もずっと一緒にいたい」と思う人と出会えたときに結婚するという認識で、そんな人ができたら流れで考えるのかな、くらいの感じです。

――そこは30歳になっても変わらず?

蓮佛 30代のうちには結婚して子どもを持ちたいと、漠然とした夢はあります。でも、結婚自体が目的ではないので。結婚したいと思える人と出会えなかったら、それはそれ。自然な流れに任せます。

(C)「理想のオトコ」製作委員会
(C)「理想のオトコ」製作委員会

30歳で体の中からきれいにすることは意識してます

――30歳になることを、節目として意識はしてました?

蓮佛 全然してなかったです。完全に大人だなとは思いましたけど、それ以外はむしろ何も変わっていません。

――生活の仕方とかものの考え方とか、若い頃と変わってきた面はありませんか?

蓮佛 あまりないですね。基本的に家にいるのが大好きで、遊ぶ友だちもずっと変わりません。健康に気をつけるようになったくらいですね。急に(体の衰えが)来ると言うじゃないですか。私はまだピンときませんけど、怖いなと思って。健やかに生きていきたいので。

――健康のためのルーティンもありますか?

蓮佛 20代中盤から、朝起きたら最初にお白湯を飲んで、腸を起こしています。青汁も毎日飲んでいた時期が3~4年ありました。今はスケジュールがキツいときだけ飲んでますけど、体の中からきれいにしようというのは、5年以上意識してます。

――仕事をするうえでも、体が資本ということで?

蓮佛 そうですね。体の中が整ってないと、すぐ肌荒れに繋がるタイプなので。あと、単純に体をケアすることが楽しいんです。健康グッズを試したり、自分に合う化粧品を探したり、食事のことを考えるのが性に合っていて、続けているんだと思います。

(C)「理想のオトコ」製作委員会
(C)「理想のオトコ」製作委員会

役の思い出を勝手に作るようになりました

――女優としては、演技の準備の仕方や面白いと感じるポイントが、変わってきたりはしてませんか?

蓮佛 勝手に役の思い出を作るようになりました。台本に書いてない過去の話を都合良く考えます。もともと何かを思い出すシーンで、その過去の場面は撮ってないし実体験もないけど、自分の中でどんな思い出か考えてはいたんです。今はそういうシーンがなくても、自分の役の理解が深まるかなと思って、やるようになりました。自分には楽しいことなので、考える時間がどんどん増えている気がします。

――『理想のオトコ』の燈子でも、そういうことをしたんですか?

蓮佛 燈子に関しては、ミツヤス先生と出会ってから、「気になるけど、私好きなの?」となって、またスレ違って……みたいなことを、全部オンでお芝居としてやらせてもらえたので。想像するより、現場での気持ちを覚えておくことを大事にしました。「このときキュンときたな」とか。順撮りではなかったので、お互いの距離感がつかめないもどかしさとか、丁寧に覚えておくようにしました。

――話の本筋ではありませんが、燈子は美容院で残業しながら、差し入れのビールを何本も空けたりしていて。燈子の普段の飲みっぷりを想像したりはしました?

蓮佛 それは考えましたし、現場でもベロベロになるまで4~5杯飲む設定でやってました。マンガでもちょいちょいありましたけど、何かにつけて「飲みに行く?」みたいな人なんだろうなと思います。

――飲みに関しては、蓮佛さん自身もイケるほうですか?

蓮佛 イケるほうだと思います(笑)。飲みの場自体が好きなので、飲むときは飲みます。

――さっきの“普通”という話だと、庶民的な居酒屋にも行きます?

蓮佛 全然行きます。私、1人でどこでも行けるので。1人焼肉も1人カラオケも楽しめます。

(C)「理想のオトコ」製作委員会
(C)「理想のオトコ」製作委員会

未知の世界を怖いと捉えず飛び込んでいきたい

――映画やドラマはよく観るほうですか?

蓮佛 時期にもよりますけど、観るときは観ます。

――刺激を受けた作品もありますか?

蓮佛 めちゃくちゃ面白かったりすると、「いいな。これ出たかったな」と思います。最近だと、久しぶりにハマったのが『天国と地獄』です。好きなタイプのサスペンスで、先の展開を考えながら観るのが、そのときの自分に合ってました。

――入れ替わりモノとしては、『転校生』とも通じました。

蓮佛 そうでしたね。階段から転げ落ちるのも一緒でした。

――女優人生に関しては、30代にどんな展望がありますか?

蓮佛 ここ数年で舞台をやらせていただいたことで、今お芝居の面白さに改めて向き合えている感じがしています。すごく楽しいので、その楽しさをどんどん深堀りしていきたいと思っていて。映像でも舞台でも、出会ったことのない作品や感情、未知なものへの探求心はすごく強くなっています。新しい世界へ、怖がらずにどんどん飛び込んでいきたいです。

――キャリアを重ねつつ、今も新しい引き出しが増えているんですか?

蓮佛 引き出しが増えているかはわかりませんけど、「わーっ! 楽しい!」でも「何これ? わからない」でも、心が動くことに敏感になっていきたいんです。それがないと、意味がないと思っているので。未知の世界を怖いと捉えず、経験ないことに果敢に挑める人でありたいと思います。

――仕事以外のことに関しても?

蓮佛 仕事以外は、やってることも友だちも何年も変わらないので(笑)。これからも幸せで良い人間関係を続けられたら、それだけでいいです。

テレビ東京提供
テレビ東京提供

Profile

蓮佛美沙子(れんぶつ・みさこ)

1991年2月27日生まれ、鳥取県出身。

2006年に映画『犬神家の一族』でデビュー。2007年に映画『転校生 さよならあなた』で初主演。2008年に『七瀬ふたたび』で連続ドラマ初主演。その他の主な出演作は、ドラマ『お義父さんと呼ばせて』、『べっぴんさん』、『恋はつづくよどこまでも』、映画『君に届け』、『RIVER』、『記憶屋』、『天外者』、舞台『リトル・ナイト・ミュージック』、『脳内ポイズンベリー』ほか。ドラマ『理想のオトコ』(テレビ東京系)、『きれいのくに』(NHK)に出演中。

ドラマParavi『理想のオトコ』

テレビ東京系/水曜24:40~

動画配信サービス『Paravi』にて独占先行配信

公式HP

(C)「理想のオトコ」製作委員会
(C)「理想のオトコ」製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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